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タイで現場管理するために工夫したこと 感想文[タイ人と働く(めこん)ヘンリー ホームズ, スチャーダー タントンタウィー]


タイ工場への駐在当初の悪戦苦闘

2014年12月にタイ工場へ赴任した私が最初に担当したのは部品倉庫でした。部品倉庫はタイ人作業者570名、タイ人スタッフ20名、日本人駐在2名の大所帯です。私にとっては初めてづくしです。管理職として組織を持つこと初めて。作業現場を管理すること初めて。海外赴任初めて…。案の定、現場のマネジメントが不十分で問題続出でした。工場のTOPから私は責められていましたがタイ人スタッフは、仕事時間中にワイワイ騒いでいたり、仕事で深刻な失敗があってもニヤニヤして、のんびりしています。心に余裕のなくなった私はそれを見るとイライラしました。しかし、日本人駐在とタイ人従業員では多勢に無勢、主張して命令しても仕事は成果につながりません。彼らの内在的な論理を自分なりに把握して付き合い方、攻め方を考える必要がありました。

そんなときにこの本は役に立ちました。この本は2000年に発行されていて、かつ西洋人の筆者なので、直接的に日本企業で働く人の実態に即して書かれていません。しかし、タイ社会やタイ人の価値観、人間関係を重視する姿勢などが注意深く書かれており、外国人がタイ人と仕事をするうえでは予備知識として相当役立つと感じます。というのも、ほほえみ1つとっても、その裏に潜む意味が多岐に渡っていて、そういった意図があると知らなければ、そのメッセージに気を使うこともできず、関係をこじらせるリスクがあるからです。また、タイ人の社会に対する捉え方の違い、家族のように親しい人たちへの親切さと、世間一般に対する無責任・無関心さのギャップなどは外国人から見て理解しがたい部分が多いです。本書の結びで訳者の末廣昭氏が解説で語っている以下の点は、現在タイで働いてみてその通りだと思います。


タイの職場・企業観を理解する上で鍵となる概念は、私の考えでは「三つのS」である。つまり、サバーイ(心おだやか。心身ともに健やかで気疲れしない)、サヌック(心がうきうきする。楽しい)、サドゥワック(便利、肉体的な負担や苦労を軽減する)の三つである。

私が我流で行き着いたタイ人の職業観の理解とその攻略法

<タイ人の職業観と特徴>
1.最少のカロリー消費で最大の効用を得たい
とにかく楽をしたがる。出来るだけ汗をかかずにやろうとする。物はまとめて運ぶ、人に頼れるものは人に甘えてやってもらう。正しいやり方を知っていても面倒くさいのは避ける、サボれるギリギリまでサボろうとする。一方で、前例にとらわれず画期的なアイディアも出てくる。

2.起きていない問題は問題ではない
タイ人スタッフは発生した問題に対しての処置は決して遅くない。でも、日本人的な「転ばぬ先の杖」、先回りした予防の動きは悪い。起きていないことを気にするだけ無駄という考え方があるように感じる。日本人から見ると失敗してからのリカバリーは最初からちゃんとやるよりも時間も手間も無駄なのになぜ、、と思うのだがこのWEBニュースをみて合点がいった。

東南アジアでは経済的にも決して悪くないはずのタイがなぜ交通事故死がこんなに高いのか。シートベルトしない、ノーヘル、バイクに大勢でのる、飲酒運転など当たり前の理由で多く亡くなっている。ある意味、命がかかっていてもルールを守らない。問題(事故)が起きるまでは問題でないから、メンドクサイ各種のルールを守らない。命がかかってもルール守らないのに、仕事のルールなんて守るわけないよなと達観した。

<私が行き着いたタイ人スタッフの攻略法>
工場現場での失敗を減らすために実施しているのが失敗の前段階(異常)を見えるようにして、それを処置するように徹底して監視・指摘することです。
例えば、部品倉庫から製造ラインへ部品を供給する仕事のケースで説明します。部品倉庫からの出庫が遅れて、部品切れして製造ラインを止めるのが失敗だったとしましょう。既に製造ラインが止まったことを叱っても遅いです。そこでこの場合、倉庫に対して出た出庫指示に対する棚からのピッキング時間の遅れや、製造で使う前日に倉庫に棚入れが終わっていないことを問題視して指導します。タイ人スタッフから見て、その異常をうるさく言われることを問題にしてしまうのです。「また日本人マネージャーにうるさく言われちゃったよ、、嫌だな」と感じてもらい、その問題を処置させます。結果的に、製造ラインで部品切れしていた問題を処置していた状態から少し予防に近い形になります。それが出来たら、各異常の管理ポイントについてタイ人マネージャー、現場監督者に責任を割り当てていって、結果が出るまで指導を続けます。個々人の能力差・やる気の差でできない場合は責任範囲を分割していきます。当然、仕事量には偏りがでますが、それはよくやってくれる人には評価(昇給と給与)で返すなりして、仕事できる人・できない人がそれぞれちょっと背伸びして頑張るようにしていきます。次第に結果も出て褒められるので、無理なく楽しく快適に仕事ができるように役割分担を設計して運用していきます。

以上は、私が我流で行き着いた現時点の結論、仮説ですが、同じようにタイの現場で頑張っている日本人駐在の方のお話もお聞きできると嬉しいです。

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