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北風と太陽

僕は40代半ばのサラリーマンである。結婚15年以上、子どももいる。一般的には、「中年」ど真ん中世代であろう。そんな中年男でも信じていることがある。

コミュニケーションの理想は「太陽」である

何のことかと言うと、童話『北風と太陽』の話だ。誰でも一度は耳にしたことはあるであろうストーリーはここでは割愛する。旅人のコートをどちらが先に脱がせることができるか。言わずもがな、最後は太陽が勝つ。

この物語は、コミュニケーションの基本を教えてくれている。とは言え、短期的には「北風」も効果的だろうと思われがちだ。実のところ、僕もそう思っているところもあった。しかし、敢えて言い切ろう。

太陽こそが正しいコミュニケーションなのだ。

先日(と言っても半年以上前)、ご縁があり、ベストセラー『嫌われる勇気』『幸せになる勇気』の著者・岸見一郎先生の講演を聞く機会があった。何を隠そう、僕は『嫌われる~』発刊まもなくこの本に出会い、何度も読み返しては、当時、自分のバイブルのように持ち歩くほどの心酔っぷりであった。

そんな千載一遇のチャンス、「ツメ跡を残す」ことを信条としてる僕としては放っておけるはずがない。それこそ”嫌われてもいい”覚悟で、勇気を振り絞って僕の持論を軸に質問してみた。

先生の答えは明確だった。それが先ほど太字で書いた一文である。緊張のあまり詳細までは記憶にないが、確か、北風の考え方は言い訳でしかない、といった趣旨で熱く語ってくれたように思う。いかなる場面でも北風を使うべきではない、とも。

人間、つい、正論をかざして頭ごなしに相手に強い口調で言ってしまうことがある。誰しも経験があるだろう。「勉強しなさい」「好き嫌いなく食べなさい」「もっと頑張れ」「成果を出せ」など…。

確かに言っている本人は、「自分は正しいことを言っている」と思い込んでいるが、実際は、逃げの口実でしかない。安易な方向に逃げて思考を停止させているだけなのだ。

一方、太陽には根気がいる。「信じ、待ち、許す」ことが求められる。それでも最後はお互い、心を開き、そこからは信頼関係が生まれる。

恐怖訴求からは苦しみ、恨み、憎しみしか生まれない。

それは、僕の40余年の人生経験から言い切れる。昭和の体育会で育ってきた自分だが、恐怖を与えてくる存在(北風)からは、得るものは少なかった。それよりも、愛情を注いでくれる方(太陽)に対しては、”恩返し”という言葉が真っ先に浮かび、「この人のために何とかしてあげよう」と自発的に思ったものだ。それは今でも変わりない。

何を青臭いことを…と思う人もいるだろう。そう思われても構わない。気にしない。

他人と過去は変えられない。自分と未来は変えられる。

そう信じて、今日も僕は太陽を追い求めていく。

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