賀正 氷点下12℃ 増毛
留萌で乗客がどっと降り列車のなかは4~5人となった。
白波がたつ日本海沿いの停車場ごとにひとり、ふたりと客が消える。
夕暮れどき、雪がはげしく舞いあがる無人の終着駅・増毛にたどりつく。
降りたのは、おばあちゃんと僕のふたりであった。
今から10年まえであった。
氷点下12度。
2月の町は雪に埋もれていた。
いつもの倍も積もったという。
昭和8年築の観光案内所は閉まっていたが、
雑貨、寿司屋の明かりがぽつりぽつり。
雪道に足をとられ歩きつづけると、
凍えた手先と足の指の血のめぐりが良くなる。
ちょっと先に大きな黒の暖簾が見えた。
日本最北の酒蔵、明治15年創業という国稀酒造。
ニシン千石場所といわれた増毛で
佐渡出身の本間泰造は漁場経営に手を染め、
さらに豊かな地下水に目をつけ酒の醸造を始めた。
外の寒さもあって「国に稀なる良いお酒」
国稀の杯をかさね北国の一日は終わった。
温泉につかりひなびた端っこの旅を思う。
地酒は、千石場所であった栄枯の味わいがあった。
ちなみに、フレンチのシェフ・三国清三さんの出身地でもある。
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