見出し画像

【社会の分断に屈しない】デザイン思考なら災いの中でさえ見出せる希望!

間違いなくこの災いは世界規模で社会の分断を加速させた。政治的スタンス、イデオロギー、宗教や思想信条、人種や性別など。これまでもあった多くの対立構造を今まで以上に際立たせ、助長させてしまった。また社会の最小単位である家族の中でさえ、海外在住の人が日本へ帰省しようとして家族に受け入れを拒否されたという話さえ聞きます。良くも悪くも社会的な生物である人間の性がこうした災いの中で辛い状況を助長してしまうのは悲しいことです。ですが、だからこそ逆境を反転させるデザイン思考の出番!今回はそんな災いをデザイン思考でポジティブに転換できるか考えてみます。

ある意味近すぎた距離の是正と危機感覚の再獲得

ところで、生まれつきシャイ(マジで)な私が米国に住み始めてちょっと厄介だったのが実はハグ(Hug)文化で正直とても苦手でした(笑)。そこまで心を許した関係でも無い人から抱き締められたり、背中手にパンパン叩かれたりするのにはどうしても抵抗感があったのですが、禍い以降は無防備でHugされることは少なくなりました。とはいえ逆に、そんな私でさえ大切な友人とは今でもHugします。禍いにより「誰とでもHugする」から「大切な人とHugする」に変化したとすれば、考え様によってはマトモな事かもしれません。少なくとも私は歓迎します(笑)。

”他人との距離”の常識を一旦壊して再考してみれば、私には異様に近すぎた人と人との距離感が今、少し是正された様な感覚を持ちます。もっと言えば、禍以前の社会(特にこのシリコンバレー周辺)は少し浮かれ過ぎていた様にも思え、毎週(毎晩?)のようにパーティを開いて大騒ぎしていたような人々が、今は緊張感と落ち着きを取り戻した様にも見える。何かに脅かされた結果ではあるものの、そのショック療法により快楽で麻痺していた前頭葉が危機感や社会的なバランス感覚を取り戻す機会になったのなら、それも一つ良い事かもしれません。

無限に多様化する距離感とプレゼンス

そして何と言ってもリモートやオンライン環境の充実。何千キロと離れた物理的距離を全く感じることなく、誰とでも話せる今という時代。私達も実際、米国に住みながら、世界中とリモートで繋がりながらオンラインの恩恵をフルに享受したワーク&ライフスタイルを確立しましたが禍いでそれはますます拡充された。まして今はメールもSNSもチャットもある。コンタクトするパスはふんだんに用意されていて、お互い今どこで何しているかまで把握できる。

今までは其処に居る、居ないの2つしか無かった存在の仕方に物理的、精神的、心理的、それぞれの多様な距離感が生まれ、プレゼンスの在り様にも無限の多様性が生み出された。例えばこれからはリモートでしか一生会う事の無い関係さえ有り得る。その場合、相手の存在を確認する知覚がファジーなままになる。これは結婚観や家族観、人生観や死生観にさえ影響を与え得ることのように感じます。デザイン思考的に前向きに捉えて言うなら人の生き方や死に方に新たな数多くの選択肢が生まれるとも解釈でき、様々なポテンシャルを予感させます。

再価値化される物理的距離や現実世界

国によっては未だに海外からの入国者に隔離期間を設けている。それを避けて会いたくても家族と会えない人達も居る。そんな家族間でもリモートならいつでも会うことはできる訳ですが、こうなってみて初めて、それまで当たり前に享受していた親密な距離感、互いを思い遣る気持ちや暖かな温もりを愛おしく感じ、それまでの無意識的な相互依存を猛省したり、あらためて感謝し合ったりできる。これも人間にとって最も大切なことを再確認する契機になるでしょう。

リモートやオンラインが浸透すればするほど、現実にその場に居るということ、リアルに対面(In Person)で会えるということが今までに無いほど大きな意味や価値を持つようになる。今、テック企業がメタバースPFを新たな生活圏&経済圏として発展させていくような動きを見せている。個人的には今のところそれらの動きに懐疑的ですが、ただ、そんな動きが加速すればするほど、物理的な現実世界の持つ手触り感や温もりが何よりも大切に感じられるようになるのではないかと思います。

思い遣りや愛、協力への美意識の復権

遠くの人とコミュニケーションする手段が手紙しか無かった時代に、人と人が直接会って話しをすることはどれほど貴重な事と思われたことでしょうか。次に会えるのがいつになるか分からない中で再会を誓い合い、別れる際の気持ちは心が引き裂かれんばかりの辛さであったでしょう。ケータイやSNSの浸透でそんなことは取るに足らない事として大きくポジションを下げられてしまった。そこに今回の災いが齎され、人々の分断が一気に進んだ。忘れかけていた大切なことを思い出すには十分なインパクトを携えながら。

世界は今、多くの意味で戦時下にあると思います。でも、戦時下のような過酷な状況が無ければ思い至ることのできない忘れていた危機意識と、それと表裏一体のより豊かな幸福感もある。利便性や快適性を際限なく求め過ぎた人類に与えられた試練とチャンス。思い遣りや愛、協力への美意識の復権により、人間本来の暖かな肌触りを持つ血の通った現実社会を再構築するために創造性を発揮するべき時が今なんだろうと日々実感します。

〇〇ノーマルなどという不審なワードを鵜吞みにせず、またそれに加担せず、我々自らが思い描く美しい世界の在り様を創造的に追い求めて行こうではありませんか。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?