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(2/2)【叱り方編】モンテッソーリ教育・レッジョエミリア教育を知り尽くしたオックスフォード児童発達学博士が語る自分でできる子に育つほめ方叱り方(島村華子)

この間娘が図書館で「おかあさんはおこりんぼうせいじん」という絵本を借りてきました。(うちの妻はおこりんぼ星人ではありません笑)

大まかなストーリーはこうです。
・お母さんが朝から晩までぼくたち(兄弟)を怒る
・勝手に決めつけて怒るお母さんに腹を立てて、兄弟は立てこもろうと決める
・きっと本当のお母さんはおこりんぼ星人に連れていかれていて、おこりんぼ星人は地球を征服しようとしているんじゃないか?と話したら弟が泣く
・お母さんが入ってきた!緊急事態発生!
・そして・・・

このお母さんは確かに口うるさいのですが、「まずい叱り方をするお母さん」というよりは「生活習慣について細かく指示を出すタイプのお母さん」です。決して悪いお母さんではありませんし、共感できる母親像です。誤解のないようにお願いします。笑
娘は「え~!?」とおもしろがって私の読み聞かせを聞いていました。

ただ、この絵本を読んで私は
私たち親や教師は、無意識的に(よかれと思って)数々の子どもの行動をコントロールしようとしてしまっているのではないか
と考えたのです。

大人の価値観に沿った行動をよしとし、子どもの側の思いや文脈をすくい取る努力をせずに、大人の価値観に合わない行動を押さえつけているだけでは、本当の意味で子どもが安心して育つことはできないのではないでしょうか。


というわけで、前回の「ほめ方」に続き、「叱り方」についてまとめてみたいと思います。



罰を与える叱り方の4つの大きな問題点

罰とは、望ましくない行動をやめさせるために子どもに苦痛を与え、教訓を垂れるという伝統的な子育て方法です。
体罰のほかにも、口頭による罰(例:怒鳴る)、物理的な罰(例:ゲームを取り上げる)、行動による罰(例:無視)などもあります。

こうした罰を与える叱り方は、今後の子どもの人生や人格形成にも影響するような大きな問題点を抱えています。

  • より攻撃的、反発的な態度を生み出す

  • 力を使った問題解決方法が正当化される

  • 親子関係にヒビが入る

  • 罰を与えても反省を促さない

より攻撃的、反発的な態度を生み出す

自分に罰を与える相手(親や教師など)に対して子どもは強いフラストレーションを覚えます。
そのエネルギーの発散のために反抗的な行動をするのです。

罰を与えると攻撃的な行動を誘発しやすく、それを叱って罰を与えるとさらにまた攻撃的になる・・・
という、負の連鎖に陥ります。


力を使った問題解決方法が正当化される

上から(この場合、大人から)の圧力が問題を解決すると学んだ子どもが、立場の弱いもの(弟妹や下学年の子、同じクラスの自分より下の子・・・)、さらにはその子が親になった時の自分の子どもに対して自分が経験したのと同様に権力を振りかざした専制的な接し方をします。
また、その問題解決方法だけでなく、圧力に耐え抜いた自分を正当化するためにも、厳しく叱って後輩や子どもを指導するようになります。

叱り方を間違えると、負の連鎖が世代を超えて再生産されてしまうのです。


親子関係にヒビが入る

子どもにとっていちばん頼れる存在であるはずの親が厳しく叱りすぎると、子どもの心理的な安心感が脅かされます。
普段の「愛情を示してくれる親の姿」と、時々やってくる「厳しく叱る親の姿」で子どもは混乱してしまいます。

子育てをしているとこうした「アメとムチ」を使い分けるのがいいしつけの方法だと信じてしまいがちですが、効果的に使わないと親の顔色を伺うばかりか、親子関係に取り返しのつかない傷がついてしまう可能性があります。


罰を与えても反省や学びにはつながらない

罰を受けた子どもは、罰を回避することに意識が向くようになります。
そのせいで、「なぜ叱られたのか」「次はどうしたらいいのか」という肝心な点が置き去りになります。
叱ったことで子どもがそのことを糧にしているとは言えず、学んでいないことが多いのです。


上手な叱り方の4箇条

  • 「ダメ!」「違う!」をできるだけ使わない

  • 結果ではなく努力やプロセスに目を向ける

  • 好ましくない行動の理由を説明する

  • 親の気持ちを正直に伝える

「ダメ!」「違う!」をできるだけ使わない

瞬間的に「ダメ!」「違う!」という強い否定の言葉から入ると、脳が戦闘モードになってフラストレーションが溜まりやすくなるそうです。

先に子どもに何がしたかったのか、何を言いたかったのかを聞き、子どもの思いを受け入れてから行動を修正したり、別な言い方の方がいいと具体例を示しましょう。

具体例(公園の蛇口から水をたくさん出して遊んでいる場面)
「ダメ!」
  ↓
「水で遊びたかったの?(うん)そっか、水で遊びたいならバケツに水をためて使おうよ。

大切なのは「そっか」「なるほど」「わかる」という言葉を使うことです。
その言葉を使うことを習慣にすることで、一旦は子どもからボールが返ってくるように言葉を投げかけることになります。
決めつけや押しつけを防ぎ、親子のボタンの掛け違えを予防できます。


結果ではなく努力やプロセスに目を向ける

「ほめ方」でも触れたように、子どもの性格や能力、外見を指摘する「人中心」の評価は表面的なものになってしまうことが多いです。
子どもは能力ややり方を否定されると、「自分にはどうせできない」と無力感を覚え、意欲をなくしてしまいます。学習性無力感ともいいます。

一方で努力の足りなさややり方の未熟さについて共に考えるスタンスだと、子どもがプロセスについて振り返ることにつながり、次につながっていきます。

具体例(漢字テストで40点だったとき)
「40点しか取れないのか。頭が悪いんだからもっと勉強しなさい」

「40点だったんだね。覚えられた漢字はどうやって練習したの?」
「どうしたら次はうまくいくようになるかな?」


好ましくない行動の理由を説明する

好ましくない行動によってどんな結果がもたらされるか、というものごとの因果関係を学ぶことは、行動の見通しや他者への思いやりを学ぶことにつながります。
理由を説明すると具体性が高まり、子どもが次の行動への教訓を得られるのです。

そもそも子どもは見通しをもつことが苦手です。
目先の感情で行動したり、目の前のおもしろそうなことに興味をもって行動したりしているだけで、悪さをしようとしているわけではないことが多々あります。

あまり深刻にならずに、「水を出しっぱなしにすると水道の周りが水浸しになって、泥んこになっちゃうことが分かったね。次はどうしたらいいかな?」と、初めての出会いを受け入れ、次の行動について一緒に考えてあげるだけで、子どもは不安やパニック、攻撃的にならずに次への対応を学ぶことができます。


気持ちを正直に伝える

○○してくれたら、うれしい
○○されたら、悲しい

という自分の気持ちを提示して話す方法です。

「あなたの行動のせいで私は嫌な気持ち」
と、気持ちを正直に伝えたことで子どもを責めることにならないように気をつけて使いましょう。


まとめ:叱るときに使わない言葉、使う言葉を整理しよう

「叱る」という行動は、大人の価値観を押し付け、子どもをコントロールする側面があります。それは、「ほめる」にも共通することです。

【ほめ方編】に続いて、こちらにも小さな具体アクションを私なりに考えました。

私の小さな具体アクション1:これらの言葉は使わない
「ダメ!」「違う!」(具体性に欠ける否定)
「いいからやりなさい」「口答えしないの」(対話を促さない)
「あなたのために言っている」「将来困るよ」(押しつけがましく、それでいて子どもが反論しにくい)

私の小さな具体アクション2:これらの言葉を積極的に使う
「そっか」「なるほど」「わかる」(子どもの考えを受容する)
「どこが」「どんな」「どれくらい」(子どものプロセスを振り返らせる)
「次は」「もし同じようなことが起きたら」(次への教訓を考えることを促す)


「ほめる」も「叱る」も、教育や子育てにおいては切っても切れない関係にある行為です。
親子関係、教師と子どもの関係を豊かで心安らぐものにし、子どものペースを尊重しながら成長を促すために、私たち大人の言動の根っこに流れるものや、その先に待っているものについて学び直すことは有意義だなと感じました。


最後までお読みいただきありがとうございます。

次回は「子育てハッピーアドバイス」(明橋大二)の中で論じられている「自立」について考えたことを書いてみたいと思います。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。


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