コンテンツは負債となる?
はじめのつぶやき
最近、情報を発信するハードルが驚くほど低くなったなと改めて思います。本noteのようなブログ記事だけでなく、ウェビナー・動画などのコンテンツも個人や法人に関係なく簡単に大量に配信できるようになり、日々さまざまなコンテンツを目にする機会が増えました。facebookやX、Instagramを開くと日々いろんな会社のセミナーやホワイトペーパーのプロモーションが流れてきます。
また、この現象は事業成長を加速させるために、高い目標を掲げる企業が増えたことにも起因していると考えます。その目標達成のためには多くのリード・商談の獲得が必要となるので、コンテンツの量産がキーとなるケースも増えてきています。
実際、ありがたいことに私個人にいただくマーケティングのご相談も、コンテンツに関わることが非常に多いです。
しかし、一方でこの現状に対して危惧している部分もあります。それは「量産したコンテンツが逆に負債になってしまうのではないか?」という点です。
ご相談の中には、コンテンツをただ個人情報を獲得するための手段として考えている方や、なんとなく他社がウェビナーやホワイトペーパーを出しているから自社も取り組もうと考えている方もいらっしゃったり、これらに少し違和感を感じていたので本noteの執筆に至りました。
そのため、今回はちょっとネガティブなワードを使ってしまいましたが、コンテンツの負債化というテーマでつらつらと書いていきます。
コンテンツが多いということは、良いことだらけなのか?
まず、コンテンツ量が増えたということは、同じテーマ・カテゴリーでの競争が加速しているということでもあります。つまり、受け手はコンテンツを比較できるようになるということです。その結果、競合より質の低いコンテンツを配信してしまうと、「A社さんの情報はあんまりだし、今後は見る必要はないな」と受け手の信頼を失いかねません。
それに気づかず質の低いコンテンツを配信し続けると、本来は顧客と良好な関係を構築する言わば資産となるべきコンテンツが、関係を損なってしまう負債となってしまいます。
私自身も情報の受け手として日々いろんなコンテンツに目を通すので、上記のように1回は目を通したけれども、リピートしないという体験もございます。そして一度そのように評価が決まってしまうと、また目を通そうと思わなくなってしまうので本当に厄介です。
(他にも、受け手が情報の取捨選択が難しくなるという問題もありますが、本テーマと逸れるため今回は割愛します)
信頼関係は、一朝一夕には築けません。日常生活で私たちが他人に対して信頼を寄せるのは、その人とのやり取りの蓄積の結果です。同様に、企業と顧客との関係も、日々のコミュニケーションや提供する価値の蓄積によって形成されます。
しかし、質の低いコンテンツを量産していては、信頼がどんどん損なわれていきます。そして、一度失った信頼を取り戻すのは非常に困難です。顧客がわざわざ時間を割いて自社のコンテンツを閲覧しているという事実を忘れてはなりません。
負債化を防ぐには
そこで重要となってくるのは実に単純ですが、リードの獲得数やコンテンツ数だけで評価するのではなく、他の指標と合わせて評価することです。数だけを追ってしまうと、ついついコンテンツも増やすことだけを考えてしまいがちです。
ここまで色々と偉そうに述べてきましたが、実際に私も一時期コンテンツ数を増やすことだけを考えて、あまり質の高くないものを作ってしまうこともありました。そこで改めて数値を振り返ったところ、やっぱり質の低いコンテンツは他と比較して、リピートや商談につながりにくいという結果になっていて、実際の数値としてもその傾向は表れていました。
例えばウェビナーの場合は参加者のアンケート結果や視聴時間など、ブログの場合はページの滞在時間やシェアされた数などが指標となります。
そして商談や他コンテンツへのCVなど、別アクションを促進しているかどうかもポイントの1つです。
また、一人の見込み顧客ないし既存顧客が複数コンテンツを閲覧・アクセスしているかを測ることも良いでしょう。それを可視化することで、「この属性の方は、このコンテンツを好む傾向にあるな」というような、顧客ごとの特性も見えてくることがあるので、今後のコンテンツ立案にも活きてきます。
ただ単に数を追い求めるのではなく、コンテンツの質を向上させ、受け手にとって価値のある情報を提供することが、長期的な信頼関係の構築につながります。
質の高いコンテンツを作成するための方法
簡単にコンテンツ制作のポイントも軽く触れておきます。質の高いコンテンツを作成するためには、いくつかのポイントを押さえることが重要です。(質の高いという単語はビッグワードなので、定義を明確にする必要がありますが長くなるのでここでは割愛します)
まず、顧客の興味関心や課題を明確にすることです。ただ単に属性でセグメントを区切るだけでなく、その人たちが本当に知りたい情報や解決したい課題に焦点を当てることで、コンテンツの価値が高まります。
また、他社がウェビナーをやっているから自社でもやってみようではなく、顧客の情報収集手段として本当にそのチャネルが適切なのか確認することも大事です。これだけチャネルが多様化していると人によって情報収集の仕方が異なります。
業界業種によっても違う(ある業界では業務時間内にウェビナーを視聴することが仕事をしていないと見なされる場合もあるとのこと)ので、適切なチャネルも異なります。
いつ・どんなチャネルで情報を収集するのかを考慮した上で、受け手にとって負担のない形で提供することが大事です。
それらを実践するには、顧客ないしはコンテンツのリサーチを徹底することが大切です。信頼性の高い情報源を活用し、事実に基づいた内容を提供することで、受け手の信頼を得ることができます。また、その人ならびに会社独自の視点や専門的な知識を加えることで、他コンテンツとの差別化を図れます。
すでに既存顧客が一定数いらっしゃる会社ならば、既存顧客向けのアンケートを実施することで、より独自のものとできます。
また、既存顧客がいなくとも、SNSや社員のネットワークを活用することで調査される方も増えてきていますね。その手法も効果的と考えます。
注意点①:コンテンツの質が高い=MQLではない
よくある間違いとして、質の良いコンテンツへのアクセスをMQL条件として定義してしまい、セールスへ通知してしまうことです。
もちろん、質が高いの定義に商談化率が高いことが入っていればこの限りではないのですが、単純にアクセス数が多いなどの理由では物足りないと私は考えます。
なぜなら、そのコンテンツが商談化の促進を目的としているかどうかは、質の高さに関係のないことが多いからです。
MQLは検討度合いを明らかにするコンテンツに絞って設定すべきと考えます。(これも記載し始めると長くなるので、この辺りでやめておきます)
注意点②:質にこだわりすぎず検証を回すことも忘れない
ここまで散々質を高めろと言ってきて矛盾しているようですが、質を追い求めすぎて量が担保できないのも本末転倒です。
また、実際に世に出してみないとそもそも質が高いかどうかも判定しようがないというケースも多分にあります。自分では良いコンテンツと思っても、顧客から見たらそれほどでもないという笑えないことも全然あり得ます。そして逆に、自分ではそれほどでもないと思っても、顧客から見たら良いコンテンツであったという可能性もあります。
まずはセグメントを絞って配信する、メルマガで良い結果が出れば広告で広くリーチしていくなど、小さく仮説検証を回していくのが良いです。
私も最近はこのパターンを採用することが多く、たくさん制作して細かく検証を回し、良いものだけ残していく手法を採っています。
実際に、最初は既存顧客だけに作ったものが、反応が良いので新規向けに作り直し、それがきっかけでTierの高い企業との接点構築に寄与したケースもございます。
質が高いかどうかは顧客が判断するものなので、時間をかけすぎずに仮説検証をしっかり回すことも忘れずにいただきたいです。
とは言え、自分もまだまだ試行錯誤している身ですので、こんなやり方あるよ、こうしたらもっと上手くいったよというノウハウをご存知の方がいらっしゃいましたら、ぜひご教示いただけますと幸いです。