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ロマン主義を考える(11) 人生を古典からではなく人生から学ぶ。【『ゲーム制作のための文学』】

これまで、私たちはキリスト教について、カトリック教会系とプロテスタント系の二つの議論があることを見てみました。

カトリック教会は保守で、彼等は伝統を重視します。また、プロテスタントは聖書という古典を重視します。

双方とも、信仰のあり方は自由ではありません。そこには、伝統と聖書という二つの柱があるのです。

そして、伝統と聖書こそがキリスト教です。


しかし、私たちは伝統と聖書だけではなく、自然、すなわち神の技そのものである私たちの人生という三つ目の要素を手に入れました。

あらゆるものに神は宿ります。

なぜなら、あらゆる者は神が創造したからです。この世界に神が創造しなかったものは一つもありません。


ここで私たちは、次のような世界観を考えることができます。

神が世界を創造した。そして、神に逆らう者サタンにより、社会は財産や恋愛などの物欲にまみれた世界になった。しかし、私たちはみずからの内面にある神を世界に広げることにいよって、まさに世界を神に近づけることができるのではないか?

世界精神であるナポレオンが、憲法を制定することで、世界に神に近づけていったように、そもそも歴史とは、まさに地上に神の意志が広がることではないかという歴史観です。


イエス・キリストが世界に広がっていく。それが歴史である。

だからこそ、英語では歴史はヒストリー(His Story 彼の物語)と呼ばれているのです。

すなわち、歴史とは、イエス・キリストの教えが世界に広がっていく過程であると解釈されます。

私たちの心を通して、まさに神の子であり、神そのものであるイエス・キリストが世界に実現する。

それが歴史であり、アメリカ独立であり、フランス革命です。


自己表現とは何か? それは私たちの心から、イエス・キリストを引き出して世界に実現して目に見えるようにすることです。

自由とは何か? それは心からイエス・キリストを世界に向けて解き放つことです。

革命とは新しいことを始めることではありません。私たちの心、イエス・キリストを実現することなのです。

私たちは自分が正しいと思う生き方をすることで、まさに正しい世界を現実にもたらすことができます。


プロテスタントは「伝統から聖書」を主張することで、従来の社会を大きく変えようとしました。

しかし、プロテスタントは過去への回帰でした。


一方、ロマン主義は、まさに自然を愛し、自己実現、自己表現、革命という基本的な価値観において未来を見ています。

アメリカ独立、フランス革命、二つの大事件が起きてから、ドイツではヘーゲル左派が生まれます。

逆に、イギリスではエドマンド・バークが、革命という暴力的な行為に反発して保守主義を提唱します。

ロシア帝国は保守の守り手として、ナポレオンと戦いました。


ここで私たちは、革新と保守、左翼と右翼という二つの軸により世界を見るという世界観を手に入れます。

天使に属する革新と、悪魔に属する保守。

イエス・キリストが世界に実現する今、まさにイエス・キリストの側にいて革命に参加する人々と、イエス・キリストに敵対した保守的な律法主義者たちのように抵抗する勢力に分かれます。

ホメロスの時代から、戦争は二つの正義の戦いとして描かれていました。日本の平家物語でも、源氏と平家の二つの勢力が、それぞれ自分達の一族のために戦います。

しかし、ロマン主義の世界観はこれらとは異なります。

フランス革命は左翼と右翼、善と悪の戦いでした。そして、左翼は常に勝利して右翼は常に敗北しました。

アメリカ独立は、共和国を目指す、民主主義を目指すアメリカと帝国主義のイギリスの戦いでした。善と悪の戦いでした。

そして、アメリカはイギリスに勝利しました。

人権のために戦う革命家(左翼)と、人権を奪う保守(右翼)との戦いがフランス革命とアメリカ独立でした。


ロマン主義は文学において評判が良いわけではありません。いえ、誤解を恐れずに表現すれば危険でやばい思想だと思われています。

絶対的正義である私たちは、他人を教育する義務があるという信念を危険だと感じたエドマンド・バークは保守を提唱しました。

同じように、絶対的真理は存在しない、真理は相対的だと考えた人々はマルクス主義者となりました。

そもそも、ソビエト連邦のスターリンがロマン主義を提唱して大粛正を断行したことにより、ロマン主義の悪評は決定的になり、ロマン主義は攻撃される思想となりました。

そもそも、文化産業に否定的な普通の教会では、保守が天使、革新が悪魔という逆の世界観を持っています。


ロマン主義が文学において重要なのは、あらゆる文学がロマン主義であるからではなくて、現代の文学が、ポスト・ロマン主義だからです。

二〇〇年も経つのにリベラルと保守は戦っており、今でもウクライナとロシアの戦いはフランス革命やアメリカ独立と、それほど大差ない視点で分析されています。

そして、それに対してそれぞれの人がそれぞれ自分の意見を述べます。

私たちはアメリカ独立とフランス革命の理念に対して、さまざまなことを考えて意見します。

そして、ロマン主義というのは思想や文学というよりは、アメリカ独立やフランス革命の背景なのです。


今日は以上です。最後まで読んでいただきありがとうございました。よろしければスキ、フォローをお願いします。

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