見出し画像

そして、子ども達が進む道には追い風が吹いてくれますように。

2023年は「六甲おろし」が一大旋風を巻き起こした年でしたね。僕は特に贔屓の野球チームもないのですが、関西が活気づくことはうれしいです。

さて、その「六甲おろし」の「おろし」は風の名前で「山から吹き下りる風」を表します。「六甲山から吹き下りる風」で「六甲おろし」です。他の地方の山にも「おろし」は吹くので、「富士おろし」や「アルプスおろし」など全国各地にいろんな「おろし」があるそうです。

特定の地域に限って吹く風のことを地方風というそうで、なんと風の名前は2000以上もあるとのこと。すごいですね。

今回は、中学入試問題頻出作家さんの作品から見つけた「風に関することば」で小学生が「何それ?」って思うものを紹介しますね。


まずは甲陽学院中にも出題歴のある「アンマーとぼくら(有川ひろ)」より

札幌の祖母や親戚は父の決断に薄情なと激怒したが、父はもう母の親類の言うことなど、どこ吹く風だった。

出典「アンマーとぼくら」有川ひろ(講談社文庫)

「どこ吹く風」です。意味は「人の言動・忠告などを、まったく無視する様子」で、「どこを風が吹いているのか、自分の知るところではない」ということから生じたことばだそうです。

「知らんぷり」や「我関せず」が似たようなことばとして思い浮かびます。

彼女は先生とクラスの対立など、どこ吹く風といったところがある。

出典「潮風に流れる歌」関口尚(徳間文庫)

きっと三年生も二回経験するのだろうというあからさまな噂などどこ吹く風で、鴇田君はいつもその茫洋とした長い顔を、階段教室の一番後ろの列に並べていた。

出典「霞町物語」浅田次郎(講談社文庫)

上記は例ですが、いろんな作品で見かけることばなので小学生さんにもぜひ知っておいてほしいです。



続きまして、「リンゴの唄、僕らの出発(佐江衆一)」より

幸治が井戸端に出てゆくと、和江と静子は洗面もそこそこに、和江がこの家の娘風をふかせて指図したりしながら掃除をはじめている。

出典「リンゴの唄、僕らの出発」佐江衆一(講談社文庫)

「~風を吹かせる」です。「先輩風を吹かせる」のように風の前に名詞をつけて用います。意味は「それらしい様子をする・その立場を誇示する」で、「~ぶる」(例:先輩ぶる)も同じ意味です。

「先輩風を吹かせる」や「役人風を吹かせる」などちょっと威張っている様子のイメージがありますね。



それではその他【小学生が「何それ?」って思うことば】第52回「風に関することば」を紹介させてください。

風来坊(ふうらいぼう)

さすらい者のこと。家にじっとしていられなくて、いつでも遊び歩いているような人のこと。「風来」は流れ者を表し、「坊」は小さい子どもを表す。そのため、子どもっぽくて、しっかりしていない人。住まいや職がなく、ふらふらしているような人にも用いる。

類語としては、「旅がらす・フーテン」などがありますが、こちらも小学生には「何それ?」でしょうね。アウトローやアウトサイダーということばもあります。ちょっとダークヒーローの感じになります。


引っ張り凧

たくさんの人気を獲得し、多くの人から誘い、働きかけを受けること。引く手あまたであること。

「凧」なので「風に関することば」で紹介しようと思いましたが、実は「凧」ではなく「蛸」だとのこと!蛸の干物を作るときに足を広げて干すことを「引っ張りだこ」と呼んでいて、その形から「はりつけの刑」やその罪人を表すことばとして使われていたそうです。なんか人気者のイメージとかけはなれていますね。


風通しのいい

意見や考えを遮るものがない状態を示すたとえ。立場に関係なく自分の意見を主張しやすく、コミュニケーションがスムーズに進むような環境のこと。

この言葉を聞くと「あなたの職場は風通しが良いと思いますか?」みたいな社内アンケートが頭に浮かびます……。


肩で風を切る

肩をそびやかして大威張りで歩く様子。また、威勢がよく得意げに振舞っている様子。

「風を切る」が乗り物や矢などが速く、勢いよく進む様子を表すことから生じたことばだそうです。

関西では「いきってる」とも言います(笑)


気っ風がいい

颯爽として格好がよい男性に用いることば。心意気がある、男らしいという意味でも用いる。

このことばには悪い意味が一切ないらしく、言われてみたいです。ちなみに「気前がいい」は「太っ腹」と言い換えられますが、「気っ風がいい」とは違います。


風の吹き回し

その時々の模様しだいで一定しないことをいう。主に「どうした風の吹き回しか」という慣用句として用いる。「どうしてこうなったのかはわからないが、とにかくこうなっている」ということ。基本的に「どういう風の吹き回し」の後に続く内容は悪いことではない。

「どういう風の吹き回しか、あのケチ部長がみんなにおごってくれたんすよ!」こんな風に使いますが、こういうことを言ってるときって、かなり得意げになってるんですよね。思い出すとちょっと恥ずかしいです。




今回、風について調べた際に、「地方風」ということばを知りました。そこで、僕の住んでいる地域にも何かないかなと検索してみました。

ありました!

佐保風(さおかぜ)といって「奈良の佐保辺りを吹く風」とのこと。

万葉集にも「我が背子が着る衣薄し佐保風はいたくな吹きそ家に至るまで」と登場。人を思いやる優しい歌です。

僕はまさに佐保辺りに住んでいるので、今度「ああ佐保風がふいてるなぁ」と知ったかぶりしてみようと思います。

皆さんもお子さんと一緒に、自分の住んでいる地域の風を調べてみてくださいね。

さあ間もなく2023年が終わります。

関西は中学受験まであと2週間。

受験生達。今までの努力が発揮できますように。

君たちの背中に追い風が吹きますように。






最後まで読んでいただきありがとうございました。

子どもたちの読書量が豊かになり、家族の会話が増えますように。

次回は「冬・新春に関することば」を書こうと思います。「どんど焼き」「松があける」などなど…。

よろしければ前回の記事です。仕事に関することばをどうぞ!


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?