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【Interview】CMディレクター・上條亜希子「自分の仕事の中から小さな信号を送っていきたい」

太陽企画で働く仲間のインタビューをもとに、映像制作のヒントやクリエイターの“スキ“をお届けする #たいようのヒト 。
今回は、美術プランから衣装、ヘアメイクなど、トータルで世界観をつくることが得意なCMディレクター・上條亜希子のインタビューです。
CM演出や美術のこだわりなど、仕事のことだけでなく上條Dir自身についても色々と伺いました。

美術制作の仕事から、CMディレクターへ転身

── CMディレクターを目指したきっかけを教えてください。
テーマパークや美術セットをつくる人に憧れて、美術大学卒業後は東京ディスニーリゾートや撮影所で美術をつくる仕事をしていました。
色々と経験を積んでいく内に、自分で1から10まで世界観をつくりたいと思うようになって、撮影所でたまたま手にしたCMコンテと撮影現場を見た時に「CMディレクターという仕事なら、自分で全部出来そうだ!」と思ったのがきっかけです。

── 異業種から転身されたんですね。実際にディレクターになってみて、いかがですか?
自分が撮影所で見ていた時は、どちらかというと「ディレクター」=「職人気質」なイメージだったんですけど、実際はコミュニケーションを必要とする事が多く、正直ディレクターがこんなに人と喋るポジションだと思っていませんでした。(笑)
昔からモノを作る上でも“社会に対して意義があることをしたい”という想いがあったのですが、「CMディレクター」という仕事を通してそれを実感出来ている気がします。

── 得意な演出のスタイルやこだわりはありますか?
元々の志望動機もありますが、セットを考える事が好きなので、トータルで世界観を作ることにはこだわっています。
あと、“屈託のない明るさ”を表現することが得意な気がします。演出する女の子が「カワイイ」と言って頂くことが多いのですが、私自身そういう人に憧れがあるのと、演出することにも全く照れはありません。

── 今田美桜さん出演の「AOKI フレッシャーズ応援フェア 2022」のCMも、まさに可愛らしさが全開でした!(※上條Dir 演出出向作品)
ただ、「カワイイ」一つにしても、世代の違いで「カワイイ」の感覚は違うので、その隙間を埋める作業というか、チューニングは大事だなと思っています。商品の対象者を、簡単に投げないように気を付けています。

── ご自身が演出した中で、特に美術(セット)がお気に入りな作品はありますか?
堀田茜さんが出演された、花王 ケープONE テレビCM「前髪命」篇 でのセットがお気に入りです。
ヨーロッパテイストな街並みを描いた作品だったのですが、その時に3軒ほど実際に家のセットを作って頂いたのは嬉しかったですね。一軒一軒に詳細な設定を作って頂いたのも嬉しかったです。

── お仕事の中で好きなジャンルや作業はありますか?
ジャンルで言うと、テレビCMの仕事が好きです。制約が多い中で解を見つけていくのが好きなのと、見る人を選べない・選ばない仕事という点にも惹かれます。
作業では、現場に入る時と仮編集が好きですね。中学から大学までずっと油絵をやってきて、孤独でまんじりとした時間を過ごしていたので、匠が集合して短期間で家を立てるようなこの仕事の「スピーディーさ」と「頼もしさ」に、いつも新鮮に感動を覚えます。

── CEZANNE 描くふたえアイライナー「星野先輩」篇・ウォータリーティントリップ「リップとわたし」篇など、ビューティー系のテレビCMも多く手掛けられていますよね。
ビューティー系のCMは特に世相を反映すると思っているので、担当出来るのが大変嬉しいです。見た人の気分が単純に上がったり慰められたり、CMからエンパワーメント出来たらいいなと思いながら作業をしています。CEZANNEさんは三年前から担当させて頂いていて商品に込めるメッセージに私自身の共感とリスペクトが半端ないので(笑)それを伝えたい一心です。

── 上條さんご自身も、いつも美しさを保っていて女性から見てもとても憧れます。その「美」の秘訣を教えてください!
私は韓国がすごく好きで、新型コロナの影響を受ける前は年に最低3回は韓国に行っていました。美容大国の韓国からフレッシュな情報を入手しているところはあると思います。
あと、打ち合わせや撮影の時でもファッションとメイクは手を抜かないようにしています。その方がピシッとして、気分も上がるので!

── 旅行がお好きなんですね。お仕事での思い出のロケ地はありますか?
L.A.です。
ロケハンと撮影で一週間ほどの日程で訪れました。前半に現地コーディネーターさんもビックリするほどの嵐が来てしまって...。普段の風景が全く分からない状況だったんですが、勘を頼りに決めた撮影場所が晴れてみるとバッチリだったので、その時は自分を褒めたくなりました。(笑)

いま興味のあること、これから挑戦したいこと

── 普段、アイデアを⽣むために⼼掛けていることはありますか?
生活に関連した仕事が多いのですが、自分の生活圏で想像できる人物像には限界があるので、SNSで知らない人をランダムにフォローして投稿や日々の機敏を見ています。また、なるべく沢山の異なるコミュニティーの人に会いたいと思ってます。
新人の頃には、企画の千本ノックではないですが、大小問わず企画コンテを山ほど書いてきたので、そこでも鍛えられたかもしれません。お陰で演出の仕事でも、何か急な変更があった時の“立て直す力”があると褒めて頂いたことがあり、嬉しかったです。

── キャスティングの際に気にしていること、決めるポイントは何でしょう?
オーディションなどをしていて、最初に感じる「違和感」は⼤事にしています。15秒・30秒の短い尺でお芝居を演じてもらうので、パッと見どう思ったが結局大事だなって。

── ちなみに、いま気になるタレントさんを教えてください。
kemioさん
単純にファンで会いたいです!(笑)作業中に動画を流して元気をもらっています。彼に限らず⾃⼰プロデュース能⼒に卓越した方にお会いして、打ちのめされたいです。
卓越した言語化能力と、自己を俯瞰で見るクレバーさに憧れがあります。

── いま、どんなことに興味を持っていますか?
⾃分の仕事の中に、さり気なく新しい価値観を⼊れていく事です。
その人やモノが持つ印象や、与えられた価値とは違った目線で見ることで、新たな可能性が広がると考えています。

── 今後やってみたい作品を教えてください!
全部アナログ大道具しかけ満載!な作品は、一度作ってみたいです。
作品(商品)が世に出る最終アウトプットを担える、幸福な仕事をしているので、これからも自分仕事の中から小さな信号を送っていきたいです。

私をつくるモノ・コト

── 小さい頃はどんな風に過ごしていましたか?
友達や兄弟と細かな設定を作ってごっこ遊びをしたり、秘密基地を作ったり。綺麗なデザインの飴の包み紙をコレクションしていました。
── ご兄弟がいらっしゃるんですね。
家族の仲が良く、弟は近くに住んでいるので、しょっちゅう家に遊びに来ます。私が担当したCMが流れると自分以上に喜んでくれたり、あとはCMメイキングとかがあるとちゃんと見てくれたりします。

── 社内でのエピソードもあれば、聞かせてください。
リモートワークが多くなって人恋しかったのか、先輩ディレクターの原武美和子さん(太陽演出)に久しぶりに会えた時に、大興奮で話し続けていたようで「独房から出てきたの?」と言われました。(笑)
直接会って意見交換するのって大事ですね!

── 仕事で欠かせないモノ

iPadには、コンテを描く時のために、Elecomの「ペーパーライクフィルム」を貼っています。このフィルムのお陰で、紙と変わらぬ描き味で仕上がります。さらに、ペンやコマの四⾓もアナログ感が出るように設定しているので、デジタルで描いてると⾔うとよく驚かれます。
あと、K-POPミュージックも欠かせません。追い込まれた時は、ひたすらK-POPを聴いて無になります。(笑)

── お気に入りの場所
⼋王⼦にあるカフェ「パペルブルグ」
多摩美術⼤学の近くにあって、在学中ずっと気になっていたのですが中々機会がなく、⼤⼈になってから⼊店しましたが期待を裏切らない良さでした…!⼋王⼦という遠さも良いです。わざわざバスに乗ったり、三⼿間ぐらいかけて⾏くのが良い感じです。
あとは、クラシックホテルやそのラウンジが好きです。日本が成長期の頃の建築はパワーがあり元気が出ます。

── 行ってよかったイベント
「石岡瑛子 血が、汗が、涙がデザインできるか」
展⽰の内容もさることながら、⾃分を含めそれを求める⼈々の熱量に考えさせられる機会でした。何か、⼒強いものに触れたくなる「ケ」の毎⽇と、間違いがないものを体験したいというヒトの余裕の無さというか、現代の消費者意識を思いました。

── おススメの差し入れ
HIGASHIYAの「棗バター」
こんなに美味しいお菓⼦あるんだ…と感動しました。本⾳は差し⼊れと⾔わず、毎⽇⾷べたい。

── 憧れの映画(世界・ジャンル)
1940〜50年代のハリウッド映画の世界に憧れがあります。
『若草の頃』『オズの魔法使』『メリー・ポピンズ』とかが好きですね。全てが豊かで、イマジネーションに溢れて多幸感があります。

My Best Tune 〜 私の一曲

── #たいようのヒト のおまけコーナーとして、皆さんのお気に入り曲を伺っています。上條さんの一曲を教えてください!

♫SHINee「View」
この曲から受ける透明感・儚い美しさや寂しさと煌めきが自分をフラットな状態に戻してくれて、冷静でいながら他者に対する愛情を持てる心境になれるので2015年の曲ではありますが作業の詰め段階ではこの曲を聴いている事が多い気がします。

ぜひ、上條Dirのお気に入り曲を聴きながら、記事の気になる部分を読み返していただければと思います!
上條Dirのお仕事は、以下の「太陽演出サイト」でも随時更新しておりますので、そちらも合わせてチェックしてください👀
最後までご覧いただき、ありがとうございました。

【PROFILE 】
上條 亜希子|AKIKO KAMIJO
東京出身 多摩美術大学卒
AOKI、セザンヌ、花王PYUAN、明治ザバス、VeetなどのCM・WEB ムービー企画・演出。
🎬太陽演出サイト:https://taiyo-dir.jp/akikokamijo/
📧 taiyo-management@taiyokikaku.com(Mg:高山)

2022.8.10

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