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台北のすぐとなり わずか400円で清の時代にタイムスリップ

台北駅からMRTでわずか6駅の場所に、たった400円(台湾元80元)で清の時代にタイムスリップできる庭園があります。
 
正式名称は「林本源園邸」ですが、「板橋林家花園」と呼ばれています。英語名で「The Lin Family Mansion & Garden」となっているように、林さんという富豪一家の豪邸兼庭園でした。

最寄り駅は、台北MRT板南線の府中駅です


 
「一歩前に出るごとに景色が変わる」をコンセプトにつくられています。
歩きながら次から次へと変わる景色を楽しめる、コストパフォーマンス最高の場所です。
 
この庭園の持ち主の祖先は、今から約250年前の清乾隆43(1778)年、中国大陸の福建省から台湾にやってきました。
日本は江戸時代で、天明の大飢饉や浅間山の大噴火があったころのことです。
 
子孫たちは商売の才能があり、富を得て20年もの長い歳月をかけて豪邸と庭園を作りました。
今残っているのは一部分のみですが、それでも見どころがたくさんあります。
 
では、清の時代に迷い込んでみましょう。

清の時代の雰囲気の入口 入る前からワクワクします

観稼楼

観稼楼

入口をまっすぐ行くと左側に見える建物です。
当時は2階から周りの田畑で農作業をしている光景が見えたので、このように名付けられました。
林さん一家はここで、
「ここから見える土地はすべて私のもの、見えない土地も私のもの」
と自慢していたそうです。
 
建物手前の滑らかな曲線を描いている塀は、巻物をデザインしています。
林家が学問を重視していたことを意味しています。
 

榕蔭大池


左に曲がると、視界に大きな池が飛び込んできてビックリします。
対岸には築山があり、周りにはあずまやが点在していて、風光明媚という言葉がぴったりの光景です。

池の周りの歩道は高低差があります。
目線が自然と高くなったり低くなったりするので、同じ池を見ているはずなのに、微妙に風景が変化していきます。
 
当時は纏足して歩くのが大変な婦人も多かったので、あずまやをたくさん作ってすぐに休めるようにしたそうです。
 
築山の入り口に石が3つ並んでいます。
これは「立石」といい、歩道の入り口を表しています。

歩道の入口を表す「立石」

築山の歩道の下には洞窟もあり、ハイキングをしている気分になります。

洞窟

白い三重の塔は「惜字亭」といいます。
むかしは、文字が書かれた紙は尊いものとされ、むやみに捨てずにここで燃やしていました。
このことからも、庭園の持ち主である林さん一家が学問を大切していたことがわかります。

惜字塔 現在は使っていません

斜めに建っているあずまやもあります。
狭い空間でも立体感があるように見えます。
当時はここで釣りを楽しんでいました。

定静堂


門をいくつかくぐると、景色が大きく変わり広場に出ます。
ここは、林家が大切なお客様をもてなした場所です。
扉は三重になっています。

扉が三重になっています

身分が低い人が中に入ると、最初の扉しか開けてもらえません。
少し偉い人が中に入ると、2番目の扉が開きます。
身分が高い人が入ると、すべての扉が開き奥の屋敷に招かれるようになっていました。
今ではすべての扉が開いているので、誰でも奥まで入れます。
身分によって急に扉が閉まる、ということはないので安心してください(笑)
 
今度は庭園の奥の方に行ってみましょう。
園内に1か所しかないトイレの脇に、開かずの扉があります。当時はここが入り口でした。この門の奥に広がっていた豪邸から庭園に入るようになっていました。

もともと、この扉が入口でした

今は園内に入ると、すぐにクライマックスの池が見える導線になっています。
忙しい現代人には、このような演出の方があっているのかもしれませんね。
 

汲古書屋


当時は庭園に足を踏み入れると最初に目にする建物で、図書館として使用されていました。
建物の入口にはあずまやがあります。あずまやの屋根は、中国の棺桶のような形をしています。

汲古書屋

日本では棺桶はあまり良いイメージはありませんね。
しかし、台湾ではとても縁起の良いものなのです。
中国語で「棺材(クワンザイ)」といい、「棺」は官僚の官、「材」は財と同じ発音であることから、仕事運と金運アップの大切なアイテムになっています。

方鑑齋


図書館の脇にある薄暗い通路に入ってみましょう。

このうす暗い通路を入っていきます

しばらく歩くと目の前がパッと明るくなり、舞台を挟んで池が見えます。
ここは水上の劇場で、マイクがない時代に築山と壁、池の水を使って音が響くように工夫されていました。

通路の壁には詩が彫られています。当時書道の達人に、ここに自由に詩を書いてもらっていました。筆で書いただけでは消えてしまうので、彫るようになりました。今は一部のみ残っています。

今回は清の時代の庭園、板橋林家花園を紹介しました。
庭園の魅力を、少しでも感じていただけたでしょうか?
ぜひ、五感をフルに使って清の時代の空気に触れてみてください。
 
今は工事中で残念ながら半分しか見学できません。(2024年5月時点)
それでも見どころが多すぎるので、かなり疲れます。
私は2時間ほどかけてゆっくり見学したら、ヘトヘトになってしまいました。
 
園内では食事はできません。
ドリンク類も売っていないので、ミネラルウオーターなど水分補給の準備を忘れないでください。
蚊も多いので、虫よけスプレーも必要ですよ。
 
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参考にした資料など
林本源園邸 公式ホームページ(中国語、日本語)
・林本源園邸 ボランティアガイドさんの説明(中国語)
・木也文化有限公司出版発行「板橋花園」(中国語)
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