WEBサイト『台湾音楽ノート』を始めた理由

みなさん初めまして、WEBサイト『台湾音楽ノート』を執筆している『台湾音楽ノートの中の人』です。『台湾音楽ノート』を初めて1ヶ月半が立つのですが、少しずつPVも伸びて来て、世の中の皆さんに何かしらの貢献ができているのかな、と考え始めた今日この頃です。

『台湾音楽ノート』では、台湾の音楽を楽しむ上で必要な情報をお届けしています(網羅性は意識していません)。ここではなぜ僕がこのWEBサイトを始めたのかを書き留めておきたいと思います。宜しければどんなサイトなのか少しご覧ください。​

◾️サイト立ち上げの出発点は課題解決から

数年前に海外転勤をしたことがきっかけで、中国語(台湾では台湾華語、国語とも)や台湾語(台湾のみで話される言語、言語学上のルーツは閩南語)を勉強することになりました。言語を勉強する上で、音楽や映画をその学習素材にすることはよくある手法だと思いますが、僕は元々音楽をやっていたということもあり、音楽というツールが比較的メインの言語学習ツールになっていました。

中国語や台湾語は漢字を使った歌詞表記になるため、その漢字の発音は何か、ということを覚える必要があります。音楽ですから聞けばある程度の音は頭に入ってくるはずですが、英語と比べると歌詞を見ても発音がわからない(知らない限り)のは漢字を主とする言語の楽曲のムズカシイところですね。

【やりたいこと】 ライブ会場やカラオケで歌いたかった

発想の出発点はシンプルにこれで、お気に入りのアーティストの歌をカラオケで歌おうとしても、普段聴いている曲を歌い切ることができないことに気づいたことです。スピード◯ーニングのように聞き流すだけで〜というのは中国語/台湾語には効かず(いや、本質的にはどの言語も聞き流すだけでは正確には発音はできないと思うが、中国語/台湾語については圧倒的にそれができない言語だと感じている)、正確な発音は事前にある程度覚えておく必要があります。この覚える作業を行う上でぶつかった課題点は以下です。

【課題1】 カラオケの歌詞にルビがなかった

海外に住んでいた時は、よく現地の人とカラオケに遊びに行ったのですが、日本のカラオケとは違い、ルビ(外国語歌詞の上にふりがなが振られるあれ)が無いため、中国語/台湾語の曲の場合、漢字しか表示されません。これにはお手上げでした。。また日系カラオケ店でルビ有りで歌っても、カタカナのルビは実際の発音とはかなり異なることが多く、ネイティブからよく指摘されていました。

【課題2】 ライブ会場で歌えなかった

日本とは違い、ライブ会場で遠慮なく大声で歌うことが良しとされている台湾では、とにかく歌うことがライブに参加している証。台湾に何度も通って様々なライブに参加してきましたが、当時のやり方では歌詞を覚えることに限界があり、改善したいと考えていました。

【課題3】 発音記号付きの歌詞情報が少なかった

中国語/台湾語の歌詞情報はネット上に溢れているのですが、そこに発音記号が付いた情報というのは非常に限られており、よほど有名な曲でない限り情報にたどり着くことができません。これは当たり前の話で、中国語/台湾語ネイティブの人には発音記号なんて需要がないわけですからね。

ちなみに中国語では拼音(ピンイン、中国で使われる発音記号)や注音(ジューイン、台湾で使われる発音記号)が、台湾語では主に白話字が発音記号として使用されます。

【課題4】 発音を調べる方法が限られていた

中国語は今ではGoogle翻訳でも発音記号が表示されるようになったので、まだ調べやすいですし、辞書アプリも充実しています。

例えば台湾の超有名パンクバンド滅火器 Fire EX.の曲《十九》の歌詞、『我們習慣用謊言讓自己過的舒服一點』の発音を調べたい時は、ネットで簡単に調べることができます。

辞書

発音は拼音(ピンイン)で『wǒ men xí guàn yòng huǎng yán ràng zì jǐ guò de shū fú yī diǎn』だと分かるわけです。ちなみに意味は『僕たちは嘘で自分が心地よくなることに慣れてしまった』です。ただこれを毎回調べては忘れ、と繰り返していることが課題でした。

一方で台湾語になると状況はだいぶ悪くなります。台湾語は本来は文字を持たない言語とされており、共通の文字で意思疎通をすることを前提としてない言語、つまり話し言葉なのです。現在では使用者が減少している台湾語の普及のため、国をあげて台湾語に漢字を設定(当て字)していますが(文字がないと本も書けないし、文字で意思疎通できないのはインターネット社会では致命的ですね)、ごく最近の話ですから、多くの台湾人には台湾語を文字で書く習慣はありませんし、書いたとしても当て字は人それぞれ異なることがあります。また発音も地域によってバラバラです。こうしたある意味カオスな言語の発音を把握することはかなり大変な作業になります。

例えば、滅火器 Fire EX.の台湾語で書かれた曲《海上的人》の歌詞に『毋免驚 咱寬寬仔行』という箇所があります。これは台湾語の漢字表記のため、実は中国語とは全く別物になります。漢字だけで見ると、”毋免驚”は台湾語表現で、中国語では”不用怕”ですし、“咱寬寬仔行“は中国語にすると”我們慢慢地走“となります。発音はさらに異なります。もし上記のように中国語と同じ調べ方をすると、『wú miǎn jīng zán kuān kuān zǐ xíng』と拼音表記になりますが、これは間違い。台湾語は拼音では表現できず、白話字(はくわじ)という別の方法で表現します。実際には『m̄-bián kiann lán khuann-khuann-á kiânn』となるんです。また、一見日本人が使うローマ字で書かれているので、ローマ字発音で読んでしまいがちですが、たとえば”kiann”は白話字では”ギヤアン”です。"k"をカキクケコで表現するのは日本でのルールであって、言語が変われば当然アルファベットに対する音も変わってくるわけです。こういったルールも覚えつつ、この発音調査をしていくことは大変な時間がかかるものでした。ちなみに意味は『恐れずに ゆっくり進んで行こう』です。

【課題5】 日本語和訳がある歌詞情報が少なかった

課題3にも関連しますが、当然日本語の文献は英語のような世界共通語と比べるとまだまだ乏しく、特に台湾語は台湾でしか話されない言語ですから、それこそ中国語で書かれた台湾語の文献自体が少ないわけで、当然日本語での文献はほとんど見ることはありません。つまり、中国語/台湾語の歌詞の発音を理解できても意味を調べるための時間が必要になるということでした。また、それを都度調べて忘れ、を繰り返していることにも課題感を持っていました(1回や2回調べただけでは覚えられないですからね)ちなみに台湾語から直接日本語に変換する辞書というのは私が知る限りは存在していなく、一度中国語に変換してからさらに日本語へ変換となります。台湾語を翻訳するには中国語の力も必要になります。

【解決策】WEBサイトでの歌詞+発音+和訳

これら課題1〜5を解決するために、自分自身でiPhoneのメモ帳に単語メモや歌詞の発音、和訳情報を書き込むようにしていたのですが、元々のニーズである『ライブ会場やカラオケで歌いたい』をサポートしやすくするメモの仕方ができないかと考え、WEBサイトとして、歌詞+発音+和訳を見やすく掲載する方法をとることにしました。

また、元々は自身のニーズを満たすための、歌詞+発音+和訳情報を作っていく上で、様々な文献を読み解いていく必要があり(辞書だけでなく、中国語/台湾語特有の成語を理解するための背景知識、歴史的事項、アーティストのSNS情報など)、これらの翻訳情報や周辺情報も必要に応じて追加することで、歌詞に止まらない様々な台湾音楽情報を配信する場所にしていこうと考えました。

実際には以下のようなコンテンツ作りをしていますが、根本にあるのは自分自身の課題解決。ただ、言語の特殊性もあって、自身のために調べて作り上げたものは、台湾音楽を楽しんでいる人々にはいくらか貢献できているようです。

歌詞

気になる曲があれば、是非下記からサイトを訪問いただき、youtubeの音源とともに、歌詞をお楽しみください〜^^


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