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ロボット劇作家の作品

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尾崎太祐が書いた脚本・小説をまとめたマガジンです。すぐ読める掌編が多めです。
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#ショートショート

ChatGPTにショートショートを出題・評価してもらった

最近話題の生成・対話型AI「ChatGPT」。 文章を書くクリエイターにとっては、もしかすると将来のライバルになるかもしれないし、あるいはアシスタントにもなるかもしれない、ChatGPT。 そんな不思議なChatGPT(GPT-4)を使って、今回、ショートショートを書いてみました。 書いてもらうんじゃありませんよ。書くのは僕です。 ChatGPTに頼るのは、出題と評価です。 どういうことかって? これを見ればすぐにわかります。 出題パート(AI)執筆パート(人間)出さ

ショートショート「酔っ払いと立方体」

パンデミックに一区切りが付き、夜の街に活気が戻りつつあった。 知人との飲み会を終わらせて、F氏は帰路についていた。 駅まであと100メートルほどのところで、若い女性がなにやら行き倒れていた。どうやら酔っ払っているらしい。 「大丈夫ですか」 声をかけてみるが、反応はない。寝てしまっている。 F氏は困ってしまった。声をかけた手前放っておくのも気が引けるし、揺すり起こせば痴漢扱いされかねない。 彼女の家族や友人に連絡してやれるといいのだが。 F氏は女性の持ち物に目をやった。

ショートショート「おにいのーと」

年の離れた妹。 お絵かきに夢中だったのが、つい昨日のことのようだ。 保育園でクレヨンに出会ってからというもの、画用紙いっぱいの絵を毎日何枚も持ち帰ってきた。 「おにい、きらきらの絵、かいたよ!」 「おにい、ままとぱぱ、かいたよ!」 「おにい、ももたろう、かいたよ!」 目を輝かせながら、僕に見せてくる。 我が家は貧乏で、クレヨンや画用紙なんて買ってやれないから、楽しくて仕方なかったのだろう。 僕は妹にノートをプレゼントした。 授業で使う予定の大学ノートだったが、らくがき

ショートショート「朝のフシギ」

ある朝、O氏が目覚めると、枕元に小人が立っていた。 小人はひっそりと囁いてくる。 「今日、あなたが持っているY社の株が暴落します」 「なんだって」 「あなたは機を見て、Y社の株を買い増してください。あとで値上がりした際に、売り抜ければいいのです」 「やけに現実的な、現金なアドバイスをくれるじゃないか」 しかし、小人の予言は真実のようだった。 Y社が発表した新製品が不評を買い、株価は暴落した。 O氏は小人の言う通り、株を買い増した。 翌朝、またしても小人がいた。今度はこう

ショートショート「私はポケット」

ウチはポケット。 え?ヒトなのか?動物かって? ちゃうがな。"ポケット"やがな。 ほら、キミの服やカバンにもついとるやろ?その"ポケット"や。 なんで人名やねん! ったく、さっそく突っ込ますなよー! だいたいキミらはなァ、ウチらポケットに対する扱いがザツや。 何でもとりあえず「ここに入れときゃいい」思ってるやろ。 アメちゃんとか、ティッシュとか、ゴミとか。 特に最近多いのが、外したマスクな。あんなもん入れんなやー。 飯屋でとりあえず外すのは仕方ない。 でもなあ?ぐちゃ

#ショートショートnote 『君に贈る読書』

「ぼく、物知りになりたい!」星に願った5歳の少年の前に、神様が現れていいました。 「今日は神様から、きみにプレゼントだ。」 「わーい。なにをくれるの?」 「読書だ。」 「読書?本じゃなくて?」 「そうだよ、物知りになりたいんだろう?」 「うん!」 「じゃあ、きみに"読書"を授けよう」 神様はそういうと、少年に向かって呪文を唱えます。 すると…… 「さあ、これを読んでごらん」 神様は、少年に本を差し出します。 「太宰治の『人間失格』?読んだことあるからいらないや」 「じゃ

ショートショート「神様の思う壺」

「ホールケーキおひとつ、いかがですかー?」 ああ、寒い寒い。街には雪がちらついている。 こんな時間まで、寒空の下でサンタの格好してケーキ販売。 このコンビニのオーナーはどうかしてるな。 そもそも俺は一人暮らしだし、ホールケーキなんて食いきれないっつーの。 革靴にスーツ、カバン持ってるからって、家族のために遅くまで働く会社員だとでも思ったか。 就活中だよ。老け顔なんだよ。家族どころか、嫁も、彼女もいませんよ。 今年もいわゆる"クリぼっち"だ。慣れたけど。バーカバーカ。 住

ショートショート『ロボット面接』

「ドウゾー」 ノックの後に聞こえた無機質な声で、僕の緊張は最高潮に達した。 都内にある大企業での最終面接。一世一代の大舞台。 緊張しすぎて、耳がおかしくなってしまったのだろうか。 「失礼いたします!」 ドアを開けて会議室に入ると、誰もいなかった。どういうことだ? 「コンニチハ」 また無機質な声。椅子が数脚、長机は一台。 よく見ると長机の上には、小さな人形が乗っていた。 「ドウゾ、オカケクダサイ」 声の主は、この人形らしい。いや、ロボットか? なんだか怪しい部屋に

ショートショート『売らない女』

はあ……疲れた。 終電を待つホームで、背後から声をかけられた。 「お兄さん、ストレス、溜めてるね?」 ヤベ、独り言漏れてたか? 振り返ると、女性が俺を見ていた。 「顔の色に出ています。休んだほうがいいよ」 自分では意識していなかったが、顔色が悪いらしい。 「お悩みがありますね?」 ぐいぐいと質問してくる女は、カタコトだった。 もしかして、そういう店のキャッチ? 疲れてるところに付け込まれるパターン? 休むってそういう隠語か? 「すみません。そういうの、大丈夫なん

ショートショート『聴こえるガラス』

聴こえるガラス作:尾崎 太祐 私には、なによりも大切にしているものがある。 おわん型のきれいなガラス細工。 見ているだけでもうっとりするが、ある時、「音」が聴こえることに気がついた。耳に当てると、いろんな音が聴こえてくる。 きらきら……カランコロン…… その時々によって音が違う。 さらに驚くことには、私の心を見透かしたかのように「聴きたい音」が聴こえてくることもあった。 その音は、日に日に鮮明になっていく。まるで声のようだ。耳元で語りかけてきては、私の心を満たしてくれた