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ロボット劇作家の作品

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尾崎太祐が書いた脚本・小説をまとめたマガジンです。すぐ読める掌編が多めです。
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記事一覧

掌編『真っ白な世界の音』

世界は、音にまみれている。 大通りを走る救急車。 地下鉄の中の会話。 アナログ時計の秒針。 鳴り止まない雨の音。 スマートフォン、SNS。 動画の中で知らない人が笑っている。 しばらく会っていない友達は幸せらしい。 誰もがどこかで耳にしたような言葉をしゃべっている。 何も聞きたくなかった。 何も見たくなかった。 何も考えたくなかった。 耳を塞いだって、目隠しをしたって。 世界の雑音は消えない。 身体のあちこちから、穴の空いた心の隙間から、 否応なしに入ってくる。

ChatGPTにショートショートを出題・評価してもらった

最近話題の生成・対話型AI「ChatGPT」。 文章を書くクリエイターにとっては、もしかすると将来のライバルになるかもしれないし、あるいはアシスタントにもなるかもしれない、ChatGPT。 そんな不思議なChatGPT(GPT-4)を使って、今回、ショートショートを書いてみました。 書いてもらうんじゃありませんよ。書くのは僕です。 ChatGPTに頼るのは、出題と評価です。 どういうことかって? これを見ればすぐにわかります。 出題パート(AI)執筆パート(人間)出さ

ショートショート「酔っ払いと立方体」

パンデミックに一区切りが付き、夜の街に活気が戻りつつあった。 知人との飲み会を終わらせて、F氏は帰路についていた。 駅まであと100メートルほどのところで、若い女性がなにやら行き倒れていた。どうやら酔っ払っているらしい。 「大丈夫ですか」 声をかけてみるが、反応はない。寝てしまっている。 F氏は困ってしまった。声をかけた手前放っておくのも気が引けるし、揺すり起こせば痴漢扱いされかねない。 彼女の家族や友人に連絡してやれるといいのだが。 F氏は女性の持ち物に目をやった。

ショートショート「おにいのーと」

年の離れた妹。 お絵かきに夢中だったのが、つい昨日のことのようだ。 保育園でクレヨンに出会ってからというもの、画用紙いっぱいの絵を毎日何枚も持ち帰ってきた。 「おにい、きらきらの絵、かいたよ!」 「おにい、ままとぱぱ、かいたよ!」 「おにい、ももたろう、かいたよ!」 目を輝かせながら、僕に見せてくる。 我が家は貧乏で、クレヨンや画用紙なんて買ってやれないから、楽しくて仕方なかったのだろう。 僕は妹にノートをプレゼントした。 授業で使う予定の大学ノートだったが、らくがき

ショートショート「朝のフシギ」

ある朝、O氏が目覚めると、枕元に小人が立っていた。 小人はひっそりと囁いてくる。 「今日、あなたが持っているY社の株が暴落します」 「なんだって」 「あなたは機を見て、Y社の株を買い増してください。あとで値上がりした際に、売り抜ければいいのです」 「やけに現実的な、現金なアドバイスをくれるじゃないか」 しかし、小人の予言は真実のようだった。 Y社が発表した新製品が不評を買い、株価は暴落した。 O氏は小人の言う通り、株を買い増した。 翌朝、またしても小人がいた。今度はこう

ショートショート「私はポケット」

ウチはポケット。 え?ヒトなのか?動物かって? ちゃうがな。"ポケット"やがな。 ほら、キミの服やカバンにもついとるやろ?その"ポケット"や。 なんで人名やねん! ったく、さっそく突っ込ますなよー! だいたいキミらはなァ、ウチらポケットに対する扱いがザツや。 何でもとりあえず「ここに入れときゃいい」思ってるやろ。 アメちゃんとか、ティッシュとか、ゴミとか。 特に最近多いのが、外したマスクな。あんなもん入れんなやー。 飯屋でとりあえず外すのは仕方ない。 でもなあ?ぐちゃ

ショートショートnoteでコント「出世魚」

noteで小説が書けるゲーム「ショートショートnote」のカードを活用し、短時間でコントの脚本執筆を目指します。 はじめにルール ・お題カードを4枚引く。出てきた言葉は、脚本中のセリフとしてかならず使うこと。 ・25分を1セットとし、中間5分の休憩をとること。(集中力を維持するため) 今回引いたカード(=使う言葉) ・寿司 ・に教えられたこと ・インドの ・ゾンビ ※文中では太字にしてあります。 コント「出世魚」作:尾崎 太祐 登場人物 ・会社員A ・会社員B

ロボット×エンターテインメントの力で、面白い未来をつくる。 ―― 作品紹介

作品・活動紹介ロボット演劇 彼女の便箋とロボット(2021年 / 脚本・演出・出演) 見守りロボット「BOCCO emo」を初めて使用した朗読作品です。 私の朗読にあわせ、ロボットがしゃべることで物語が進行します。 イベントページ:https://robot-sandbox-night01.peatix.com/view プログラム通りにはいかない!(2020年 / 脚本・演出・操演) パンデミックが始まった頃、作品の導入部分のみ無観客配信。 本編は未だ上演できていません

ロボットコント「無人の喫茶店」

東京。人気の少ない場所にある、古ぼけた喫茶店。 広くない店内には、円卓が置かれている。 円卓の上には、小さなロボットが乗っている。 男、喫茶店に入ってくる。 男 こんにちはあ。 返事は聞こえない。 男、さらに大声で呼びかける。 男  こんにちはあ! ロボ いらっしゃいませ。 男  ん? 男、ロボットに気づいて近寄る。 男  へえ、店番のロボットか。あの、ここの店長さんは? ロボ マスターです。 男  そうそう。マスターさんはどこに? ロボ 私がマスターです。 男 

煙草と航空障害灯

深夜2時。翔平は部屋で煙草を吸っていた。 秋めいてきたこの時期、窓を開け放しにすると寒い。 けれど、煙草の臭いを翌朝に残したくなかったし、なにより、翔平はこの寒さや冷たさが好きだった。 ――ああ、また秋になったのか。 この寒さと冷たさに、季節の一巡を実感する。 この部屋に引っ越して、もう何年になるだろうか。 越してきたころも、同じような秋だった。 当時はこの寒さに心細さも感じたものだが、今となってはむしろ風物詩だ。 ああ、また一年経ったのだな、と。 ――今年、契約更新

#ショートショートnote 『君に贈る読書』

「ぼく、物知りになりたい!」星に願った5歳の少年の前に、神様が現れていいました。 「今日は神様から、きみにプレゼントだ。」 「わーい。なにをくれるの?」 「読書だ。」 「読書?本じゃなくて?」 「そうだよ、物知りになりたいんだろう?」 「うん!」 「じゃあ、きみに"読書"を授けよう」 神様はそういうと、少年に向かって呪文を唱えます。 すると…… 「さあ、これを読んでごらん」 神様は、少年に本を差し出します。 「太宰治の『人間失格』?読んだことあるからいらないや」 「じゃ

ショートショート「神様の思う壺」

「ホールケーキおひとつ、いかがですかー?」 ああ、寒い寒い。街には雪がちらついている。 こんな時間まで、寒空の下でサンタの格好してケーキ販売。 このコンビニのオーナーはどうかしてるな。 そもそも俺は一人暮らしだし、ホールケーキなんて食いきれないっつーの。 革靴にスーツ、カバン持ってるからって、家族のために遅くまで働く会社員だとでも思ったか。 就活中だよ。老け顔なんだよ。家族どころか、嫁も、彼女もいませんよ。 今年もいわゆる"クリぼっち"だ。慣れたけど。バーカバーカ。 住

ロボットコント『AI婚活』①

イントロダクション 「日本政府がAIで未婚の男女を支援」――こんな見出しが話題になったのは、つい最近のこと。 これまでの婚活――つまり、容姿や収入などの条件をもとにした婚活――ではなく、プロフィールには載らないような、隠れた相性を判断し、実はお似合いかもよ?という相手を、AI(人工知能)が見つけ出してくれる、というものだ。 やがて、AIによる婚活支援は大成功。これはその数年後、AIによって運営されている結婚相談所でのお話。 登場人物 男 冴えない未婚男性。相談にやってくる。

ロボットコント『開店!ロボットレストラン』①

登場人物 男  レストランを訪ねてきた客。 ロボ お店のマスコットとなるロボット。接客がヘタ。 店主 新しくレストランを開業。 ※ロボ=可能であれば、Pepperを使用する。 舞台は、小さな飲食店。レストランのようである。 上手側は入口、下手側はバックヤード。 中央には、テーブルと椅子。 入口の近くには、ロボットが立っている。 男、店外から歩いてくる。 男「ここかあ、新しい店」 男、扉を開けて入店。 ロボ「いらっしゃんしゃんせー!」 男「!?」 男、ロボットに気づく