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ショートショートnoteでコント「出世魚」

noteで小説が書けるゲーム「ショートショートnote」のカードを活用し、短時間でコントの脚本執筆を目指します。

はじめに

ルール

・お題カードを4枚引く。出てきた言葉は、脚本中のセリフとしてかならず使うこと。
・25分を1セットとし、中間5分の休憩をとること。(集中力を維持するため)

今回引いたカード(=使う言葉)

・寿司
・に教えられたこと
・インドの
・ゾンビ
※文中では太字にしてあります。

コント「出世魚」

作:尾崎 太祐

登場人物

・会社員A
・会社員B
・大将C

本文

少しお高めの寿司屋にて。
A・B、カウンターに座り、ビールの注がれたグラスを持っている。

A 入社おめでとう。じゃあ、乾杯!
B 乾杯!

A・B、乾杯する。

B  なんか、悪いなあ。
A  いいんだよ、こういう日くらいは贅沢しないと。それにサラリーマンとしては俺のほうが「先輩」だし?
B  大人の余裕だあ。
A  二年目だから大して変わんないけどな!
B  いやいや、回らない寿司連れてきてもらうとか、人生初めてだよ。(Aに耳打ちして)高いんでしょ?
A  いやいや!ここ、俺の行きつけで手頃なのよ。大将も気心知れててさ。ほら俺、北国出身だから話も合うんだよね。
B  そうなんだあ。
A  大将!きょうのおすすめは?
C  そうねえ。ヒラメのえんがわが入ってますよ。
A  お、えんがわ。俺好きなんだよね。
C  大丈夫?ちょっと値が張るけど……
A  ええ、ええ。せっかくだから、いただきましょう!こういう日だからね。あとは……お前、なにか食えないのある?
B  何でもいける。
A  じゃあ、就職祝いだから鯛とか、ウニなんかいっちゃったりして。あとは適当にいいのを!
B  お!あざーっす!
C  あいよ!

C、寿司を握り始める。

A  いや、でもよかったよ。お前から単位足りなくて卒業できないって聞いたときは焦ったもん。
B  ご心配おかけしました。落とした単位はすぐに回収できたけどね。一年分の学費、もったいなかったわ。
A  夏だっけ?海外旅行行ってたよな?
B  インドの方にちょっと。
A  いいなー!本場のカレーとか食ったの?ビリヤニ?マハラジャ?
B  まあ食べたけど、でも後半は大変だったよ。水でお腹こわしちゃって。
A  ああ、よく聞くやつだ!
B  もう、ゾンビみたいになってたもん。
A  でもいい経験だよなあ。どうせゾンビになるなら会社じゃなくて海外がいいわ。
B  ああ、仕事、大変そうだね。
A  まあねえ。やっぱり成果は定量的に求められるし、新人として大目に見てもらえてたのも最初の半年だけだし。
B  うわあ。残業とかあるの?
A  それが、逆にないのよ。残ってると逆に怒られるの。だから、時間内にいろいろ終わらせなきゃいけないのがまた大変で。
B  なるほど。
A  でも、だいぶ鍛えられたよ。上司には「次の査定では昇進確実だ」って言われてるし。
B  すげー!3年目で管理職って、スピード出世じゃん!
A  いやいや、わかんないけどな。ただこれくらいの速度で成長しないと、将来が危ういし。
B  そっかあ。あ、アキちゃんともまだ続いてるの?
A  ああ。結婚も見据えてる。だからちゃんと稼がなきゃいけないわけよ。未来の大黒柱は辛いもんよ。
B  すごいなあ。めちゃくちゃ順調だなあ。
A  いやいやいや、ただお前も気をつけたほうがいいぞ。社会人になってからは、とにかくスピードが速い。環境の変化、求められる成長の速度、時間の経過、なにもかもが。
B  なるほどねえ。
A  だからさ、飲み込まれないように食いついていかないと、負けるぜ。
B  いろいろ学んでんだねえ。
A  学んだというより「社会の荒波に教えられたこと」って感じだけどな。
B  かっこいー!
A  お前も困ったことあれば頼ってくれな!友達だけど、先輩でもあるわけだから。
B  先輩あざーっす!

C、寿司を握り終わる。

C  へい。おまちどおさま。
A  どうもー!
B  ありがとうございます!
C  お客さん、今日は呑みすぎないようにしないとね。お友達の祝いの席なんだから。
A  ちょっと!大将やめてくださいよ!(静かに、のポーズ)
B  なになに?相変わらず呑んだくれてるの?
A  いやあ、酒はやめらんないよね。やっぱりさ、仕事終わりのビール、たまんないし。あとやっぱり、寿司には日本酒が合うのよ!
B  大丈夫?
C  酔いつぶれて、閉店までぐっすりなんてこともあったよなあ?
A  いや、ほんとすみません。
C  (Bに)私がタクシー呼んで、押し込んだこともありますよ。
B  やってんねえ。
A  もうほんと、勘弁してくださいよ!
C  愚痴ってたよねえ。「うちの会社はブラックだあー!」とか泣きながら。
B  あらー。
C  あんな会社辞めてやるよ!って叫んでたことあったわな。
A  ちょっとちょっと大将!秘密!それ秘密!
C  「昇進できそうにねえから転職するんだ俺はー!」って言ってたよな。
A  ちょっとちょっと……
B  へえ。でもそれから頑張ったんだ。
C  「それから」つっても、ここ2週間くらいの話ですけどね。
B  え……?
C  はい。
B  え、2週間?
C  あれ、その前の週じゃねえよな。すみません最近どうも忙しくて。
A  なんだよ大将、ボケるのには早くないかあ?
B  いや、そういうことじゃないんですよ。いまの愚痴って、ついこの前の話ってことですか?
C  ええ。
B  あれ、でもさっき「次の査定では昇進確実だ」って……
C  期待されてるんでしょうけど、成績がドベだとかで。扱かれてるんだそうですよ。
B  ええ?
A  ま、まあ新人だからさ!やっぱり先輩方には勝てないっていうか……
C  いつも呑みながら「同僚に負けた」って、愚痴り愚痴りですよ。で、いつもそれを私が聞く形で。
B  「昇進確実」なんじゃ……?
C  あ!ショウシンって聞いて思い出しましたよ。少し前ですけど、彼女さんと別れたかなんだかで「傷ついた」って号泣してましたよね。ショウシン違いか。
B  そうなんですか。
A  いや、その……ついカッとなったっていうか。
C  彼女さんに愛想尽かされちゃったみたいで。
B  あれ……?でもさっき「結婚も見据えてる」って。
A  そうだよ。見据えてるよ。
C  あれから復縁されたんですか、よかった。連絡取れないっておっしゃってたから。
A  ……いや、まあ。
B  あれ?あれれ……?

間。
B、ニヤニヤと訝しがる。
A、目を合わせることなく沈黙。

B  やってんね?
A  なにが。
B  やってますね?
A  やってねえよ。
B  嘘、ついてるね?
A  いや……
B  うわっ!なにこれ怖っ!実は別れてたってこと!? さっき(かっこつけながら)「結婚も見据えてる……」とか言ってたのに!?
A  そんなふうには言ってない!
B  いや言ってたね!(Cに)ねえ?
C  ありゃ、そうなんですか。失礼しました、お話聞いてなかったもんで。おめでとうございます。
B  いやいや、もう別れたのに(かっこつけながら)「結婚も見据えてる……」って、気持ち悪っ!
C  でも実際、結婚を考えたお相手だったんでしょう?相当な落ち込みようでしたから。
B  だとしたらなおさら怖いわ!よくあんなふうに言えたね!?(かっこつけながら)「結婚も見据えてる……」って!
A  いや、その……
B  なに「未来の大黒柱」って!
A  いや、まだわかんないじゃん……
B  ってことはアレか!スピード出世もウソか!
A  アレは……お前が勝手に盛り上がって……
B  (かっこつけながら)「これくらいの速度で成長しないと、将来が危ういし……」ってなんだよ!
A  実際危ういし。
B  別の意味でな!(かっこつけながら)「とにかくスピードが速い、なにもかもが……」ってなんだったんだよ。
A  いや、実際そうだし……
B  (かっこつけながら)「飲み込まれないように食いついていかないと、負けるぜ……」って、もう飲み込まれきってるじゃねえか。
C  酒にものまれてるし。
B  (かっこつけながら)「社会の荒波に教えられた……」
C  先輩風吹かしたかったんだよな。
B  (かっこつけながら)「未来の大黒柱……」
C  よっ!あんたが大将!
B  腐りかけじゃねえか!
A  うるさいうるさい!いろいろ頑張ってんだよお!もういい、ションベンしてくる!

A、おもむろに席を立つ。カバンを持ち、足早に店を出ていく。

C  おい、手洗いならこっちだぞお!……さっそく酔っ払ってるなあ。
B  (気づいて立ち上がり)あ、アイツ逃げたな?

B、立ち上がりAの後を追う。
暗転。

(おわり)

反省と感想

・当初は長くても50分で書き終える予定でしたが、結果的に2時間以上?3時間近くかかりました。執筆スピードは25分で700字ほどでした。

・集中力を持続させるための休憩ルールでしたが、終盤は時間を忘れるほど楽しんでいました。

・作風や文体が限りなく「東京03」の作品に影響を受けています。彼らならこれも軽快なコントにできそうですが、私がこれをコントと読んでいいのだろうか。疑問です。しかし「学ぶは真似ぶ」ということで、どうかご容赦ください。

・ショートショートnote、他にもいろんな使い方やルールのアレンジができそうで、面白いカードゲームです。「ショートショートnoteでコント」、またやってみたいと思います。

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