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【観劇レポ】キラキラスター活劇 ミュージカル「LUPIN〜カリオストロ伯爵夫人の秘密〜」

2024年の観劇初めはミュージカル「LUPIN〜カリオストロ伯爵夫人の秘密〜」です。

古川雄大の帝国劇場初単独主演作として広告された新作。怪盗紳士アルセーヌ・ルパンを題材にしています(ルパン三世はこのルパンの孫という設定で有名)。

この規模のグランドミュージカルに珍しく(?)、Wキャストは少なめ。カリオストロ伯爵夫人を柚木礼音と真風涼帆、ヒール役のボーマニャンに黒羽麻璃央と立石俊樹。僕の観た公演は、柚木カリオストロと立石ボーマニャンです。

東京公演の感想を見ていると、
「薔薇組トップスター古川雄大」
「エレクトリカルパレード」
「最高のトンチキ」
などなど、中々見られない言葉の数々。さて、どんな感じでしょうか…。

古川雄大がカッコいい

まず感想はこれ。さすが単独主演を謳っているだけあって、古川雄大の色んなかっこよさを散りばめられている。

マント捌き、長い手足を活かしたダンス、物憂げな表情、甘い恋愛劇、まさかの女装を含めた七変化っぷり、拷問シーンで垣間見える鍛えられたボディ、そして何より近年目覚ましい成長を遂げている(と僕は思っている)歌声。

さあ古川雄大を観てください!!と言わんばかりの演出。確かにこれは薔薇組トップスター。

ストーリーが単純明快な分、存分に古川雄大を味わえる。個人的には、古川くんは翳りあるキャラクターが似合うと思うので、そこは少し足りなかったかな。まあそれはきっと別作品で楽しめましょう。

キャストが豪華

次の感想はこれ。キャストが豪華。

クラリスは真彩希帆ちゃん。きいちゃん。こういうお役を務めたら流石ですね。お歌も表情も素晴らしい。芯の強い柔らかな女性がほんとに似合う。(そういえばご結婚おめでとう!)

カリオストロ伯爵夫人のちえさんこと柚木礼音さん。宝塚の現役時代を存じ上げないので、ちえさんの男装は伝説を見せてもらったような感覚。さすが男役トップなだけあって、惚れるかっこよさがあります。正体を明かして以降の女性としての夫人も艶っぽい。

ボーマニャンの立石俊樹くん。エリザベートのルドルフのイメージが強かったですが、ヒール役似合う!欲に忠実な悪どいヤツですが、ヒール役として振り切っているので清々しい。キャラクター自体に共感はできませんが、魅力的なキャラクターではありました。

シャーロック・ホームズの小西遼生さん。最初こそカッコいい感じで出てきますが、ストーリーが進むに連れてただのヤク中の面が強くなり、そして夫人に心を盗まれる。もはやかわいく思えてくる。わりとカッコいいイメージのホームズなのに、この作品においてはコミカルな役目というのがなんとも…。

ガニマール警部の勝矢さん。ミュージカルではキンキーブーツ以来。銭形警部ポジションですが、似合うなぁ…。頑張ってるけど評価されない感じが可愛らしさすら感じる。

ルパンの素性を追う高校生イジドールの加藤清史郎くん。大きくなって…!というのはさておき、ミュージカルや舞台の世界でめきめき成長されてます。高校生の役がピッタリでしたが、もう少し経験を重ねられて、どんな俳優になられるか楽しみ。

夫人の配下・レオナールの章平さん。こういう右腕的な役ってカッコいいですよね。憧れます。ただならぬ雰囲気を醸しながら、夫人のそばに侍る、渋い。

クラリスのパパ・宮川浩さん。ジキハイやヴァグラントでは、ちょっといやーな権力者でしたが、今作ではクラリスを想う真面目なパパ。ボーマニャンに翻弄されるところも、貴族とはいえ立場の弱い絶妙な立ち位置。

プリンシパルはもちろん、アンサンブルも東宝系の作品でもお馴染みの実力派を中心に豪華。古川雄大に負けず、マントを捌いたダンスはカッコいいし、カンカンダンスも可愛かった。ボーマニャンの配下たちもフレンチミュージカルっぽいダンスで情熱的かつユニーク。

美術が良い

衣装をはじめ、美術はさすが。舞台が20世紀なのである意味当然ですが、ミュージカルに求める非現実感・夢の空間がありました。やっぱり色とりどりのドレスやタキシードで繰り広げられるダンスはかっこいいですしね。

舞台そのものがルパンの影を模しているのは大胆ですが、面白いです。

スターエンタメ

キャストの良さと作品の豪華さについて書きました。キャストを楽しむ作品としては満足。

そして、いつもならストーリーについても色々考えてレポにするのですが、今回はストーリーについてはございません。

今作は典型的なスターによるスターのためのエンタメだなと感じました。演出の小池氏の本職でもある宝塚らしいといいますか、キャストのスター性ありきで、それをどう魅せたいかというところ。小池氏の魅せたい古川雄大はこれ!っていう感じです(良い悪いではないですし、宝塚を貶める意図はありません)。

他のキャストもそうで、きいちゃんの純真ながら芯の強い娘役、ちえさんの男役と退団後に磨かれてきた女性性のコントラストなど。こう魅せたいというのがはっきり分かります。

一幕ラストのゴンドラ(これが通称エレクトリカルパレードと言われたシーン)をはじめ、各シーンの演出も、キャストをどう魅せるかが先にあって、そこにストーリーが付いてくるという印象でした。

正直、作品のストーリーやメッセージが先で、そこにキャストの表現力が付いてくる方が個人的に好みなので、先入観もあるかもしれませんが。

楽曲

フランスが舞台ということもあって、フレンチ。昨年観た「キングアーサー」と同じで、クラシカルというよりはロックな感じ。パキッとしたダンスとの相性がよく、活劇の雰囲気にマッチしていると思いました。

若干昭和の歌謡ショーっぽい雰囲気も感じなくはないですが、全体的に親しみのある曲感とも言えます。…後述のコーラスを除いて。

気になった点

キャストを楽しむエンタメとしては最高なんですが、個人的にどうしても好みに合わなかったのが以下の点。

「純潔」という言葉の多用
→多用しすぎてかえってクラリスの純粋さが損なわれる気がするし、20世紀が舞台とはいえ、令和の時代に新作として出すには若干時代錯誤感が否めない。純潔を守る/守られるという言い回し自体が逆にいやらしいというか…。

謎のコーラス
→ルパンのメイン曲、クラリスのソロ曲(「アデュー、昨日までの私に」のはず)で気になったところ。前者はなんか中田あっちゃんのパーフェクトヒューマンみたいやし、後者はわざわざ影コーラス入れなくても、クラリスだけで十分深みが出るシーンだと個人的には思う。

キャスト登場時の拍手
→これは客席側ですが、主に宝塚系統のお文化?四季でもたまーにありますが…。ストーリーが始まる前とか、もちろんカテコはいいんですけど、ストーリーが進んでいる中で気持ちが中断される感じがして僕は苦手。

オチ
→若干吉本新喜劇っぽいと思ったのは僕だけかな?ほなラストのプロポーズ要らんやん…と思いますがどうなんでしょう?フィナーレのルパン独唱はミュージカルらしいしカッコいいから余計に。

総括

豪華なキャストを楽しむエンタメとしては面白い作品でした。ストーリーも複雑さがないので、誰でも楽しめる作品ですし、特に各キャストのファンの方にはたまらないと思います。兎にも角にも、古川雄大がかっこいい

個人的には重ためのストーリーが好きな傾向にはあるのですが、年明け早々に考えさせられるような重たい作品を観るより、エンタメに振り切った作品を観る方が、精神衛生上は良いかもしれません。

そして、色んなことがある世の中だからこそ、せめてエンタメの世界では深く考えすぎず、ただ豪華な世界に浸って楽しむというのも大切な見方。僕は考え過ぎるタイプなので、すぐメッセージが云々と言いますけども。エンタメの役割は、まさに世の中が少しどんよりしたときにこそ発揮されるものです。

気になる点とかも書いてしまいましたが、総合的には楽しめたことは間違いありません。ミュージカル初心者の方にも観ていただきやすい作品でもあると感じました。

というわけで、2024年一発目の観劇でした。古川ゆん氏の次作にも期待!!

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