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【観劇レポ】魔法の3時間 ミュージカル「メリー・ポピンズ」

ミュージカル観劇レポ、2022年第5弾。「メリー・ポピンズ」大阪公演を見てきました。※2公演
日本で2018年以来、2回目となる公演。他作品では、大阪公演は一作品の上演スパンが短いことが多い気がするのですが、なかなかのロングラン。

ディズニー作品ということもあり、まさに夢と魔法の国。舞台演出には終始感動。
ファミリー向け仕立てのミュージカルということもあって、お子様連れの観客も多かったのですが、子どもたちが演出に驚いたり目を奪われたりしている様子が印象的でした。家宝の花瓶が割れるシーンは、客席から「あぁ・・・」という声が漏れ聞こえました。なんて純粋・・・。

今回観劇された子どもたち、こういう感動体験をぜひ忘れずにいてほしいな(誰目線)。

ステキな演出

星空が広がる様子や、細かいところだとヒバリを逃がすシーンとか、照明の演出一つとっても素晴らしく、世界観に惹きこまれる。
メリーが空を飛んでいくシーン、バートの逆様タップダンスなどのアクロバティックなシーンも、ビッグタイトルのミュージカルだからこそかなと思います。

そして何より、ミュージカルの醍醐味の一つである一糸乱れぬダンスナンバーの数々は、それはもう筆舌しがたい感動があります。
煙突掃除屋さんたちのタップダンスは、モップ捌き、足捌き、一人としてミリ単位の失敗が許されない緊張感もありながら、客席には緊張ではなく感動を与える。これは生の舞台だからこそ感じ取れる空気感で、やっぱり生の舞台は良い。これに尽きる。
そして「スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャス」。まさに文字通り一糸乱れぬパフォーマンス。僕なら絶対間違えるね。自信を持って言えます。アンコールでも使われる演目ですが、観客の盛り上がりも最高潮となる楽曲なので、客席から響く手拍子も含めて楽しさに包まれる。みんな大好き「R」のポーズ、絶対観客席にいた子どもたちはしばらく家で踊るでしょう。

指パッチンと同時に照明がついて、場面転換にも世界観を徹底しているところ。魔法の存在しない現実の舞台で、魔法を見せる演出(メリーの手の動きに合わせて人・装置が動く、メリーやミス・アンドリューが舞台に突然現れるなど)。細かいところも不思議な夢の世界に連れて行ってくれる、何もかもファンタジー。

一糸乱れぬダンスも感動なのですが個人的には、場面転換のシーンでよくある、心臓まで止まってるんじゃないかと思うくらいピタッと静止するキャストに(他作品も含め)毎回感動します。時間を止めてるとしか思えない。一般人とは体幹が違うのでしょうね。

ステキなキャスト

5/23、6/4でそれぞれ濱田&大貫の初演続投ペア、笹本&小野田の新キャストペア。2公演チケットをとってよかった。

濱田さんの発声が本当に美しい。ミュージカルって場面によっては歌詞が聞き取れないことも多いけど、濱田さんはそれがない。全部すっと耳に入ってくる。文字にすると「凛」。大貫さんは、身のこなしが軽やかでなんかかわいい。こんな友達が欲しい(ん?)。

笹本さんは「マリー・アントワネット」の時も思った通り、役の感情を観客に惹起させる力というのかな、「情」のイメージが強くて、だからこそメリーの心の部分を強く感じたのかも。小野田さんは体は大きいけどチャーミングでキュート。低音ボイスもいいけど、やっぱり高音が映える気がします。

それぞれのメリー&バートで優劣はない、というのは前提として言っておきますが、濱田&大貫ペアは「もしかしたら人間じゃないのかも」と思わせるような、隔世的、あるいはまさに魔法使い、天使、精霊・・・そんな不思議な雰囲気がありました。
笹本&小野田ペアはより人間らしいというか、一人の人間としてのメリー、バートの心の部分が垣間見れる印象。不思議な雰囲気はあるけど、根本は一人の人間やで、みたいな。

伝わるかなこれ。伝われ

それぞれの歌い方とか発声、体の使い方、台本の解釈、あるいは素のお人柄の影響があるというのは、この作品にかかわらず、Wキャスト(トリプル、クワトロもある)のむしろ醍醐味とも言えるところ。うーん、この感覚的な違いを文字にする能力がない自分を恨む。

メインでWキャストの枠ではMr.バンクスの駒田さん・山路さん、バードウーマン/ミス・アンドリューの鈴木さん・島田さんが、それぞれの公演で見れました。他のキャストでWキャストの枠は2公演とも同じ方。
観客の反応(笑うポイントとか)も、それぞれのキャストで違ったんですが、細かすぎてこれこそ伝わらないかも。

余談ですが、おもちゃの逆襲のシーンで、登場するおもちゃの種類が微妙に2公演で違いました(23日の公演ではクマ?の人形がいたけど、4日の公演ではいなかった)。芸が細かい。

スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャス

ディズニー作品の系譜だけあって、楽曲はどれも耳に残るキャッチーさがあるなと感じました。チム・チム・チェリーはその代表ですね。

2公演見て、一番好きなのはやっぱり「スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャス」(打ち間違えてないか心配)。ダンス・演出を含めてしばらく脳内再生が続きそう。

ファミリー向けの作品ということもあって、メッセージ性も散りばめられているのですが、個人的ベストは「どんな意味にもなる」この言葉。この作品の世界観を代表する言葉やなと思います。
長いし声に出して言ったら絶対噛むけど、ちょっと自分を元気づけたいときとか、失敗したときとかに頭の中で唱えたい言葉です。

自分次第で何とでもなる、というのは作中でメリーのセリフとしても出てきます。現実世界では、手から火を出したり、空を飛んだりはできないですが、自分の心も持ちよう次第で自分の人生を彩る”魔法”は、僕らにも使えるのかもしれません。


ミュージカルは、非現実の世界に引き込んでくれるのも魅力の一つなのですが、現実で活きるヒントみたいなメッセージがあるものも多いので、やっぱりいいなと思います。

また明日から仕事ですが、テキパキ動いて、自分に時々魔法をかけながら一つずつクリアしていきましょうかね。スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャス!


余談

ミュージカルって、圧倒的に女性客が多いんです。男性客がいても、カップル・夫婦とか。男性一人で、しかも20代ってホンマに見かけないんですよ(おじさま層はたまにいらっしゃる)。

そんな中6/4公演、なんとお隣が男性一人客(しかもたぶん同世代)でした。最初隣に座られた時、「あー、カップルできて、彼女さんはお手洗いに並んではるんかなあ」とか思ってたんですが、おひとりでした。確実に。

同世代の男性一人客なんて、トキワの森に出てくるピカチュウ以上に珍しい。しかも隣。サファリゾーンのミニリュウかな?ウルトラレアすぎる。

平静を装い何食わぬ顔で座りながら、内心めちゃくちゃ興味を持った(変な意味ではない。断じて。決して。)ものの、

「いや、突然話しかけたら変な人やん」「そもそもミュージカル来た=ミュージカルファンとは限らない」「メリー・ポピンズ(ディズニー)やから来たのかもしれない」「そもそも当方陰キャ・コミュ障・オタクである」「もしかしたら彼女と来るつもりが直前に別れたとか複雑な状況があるかも」「僕と同じで一人の時間として楽しみに来られているとしたら話しかけたらタダの邪魔」

など不毛な思考が巡り巡り、結局話しかけることはありませんでした。ミュージカル友達が欲しいとかは特に思ってないですが、気持ちがゼロではないので、ドギマギしてしまいました。
1階席後方で挙動不審な男性客がいたら、僕です。ごめんなさい。

何はともあれ、若い男性も、ミュージカルもっと見ようぜ。

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