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【観劇レポ】これが私の幸せ ミュージカル「モダン・ミリー」

観劇レポ、本日はミュージカル「モダン・ミリー」大阪公演です。

前回(2022年)の時は、公演日程と予定が合わせられず見れずじまいだったのですが、ようやく観れました。
これも巡り合わせなのか、前回とは一部キャストが変わり、今回の公演は新たにマイフェアプリンスまりまりが出演!!ああ、今回観るのが運命だったのですね。

笑顔になれる王道ブロードウェイ・ミュージカル。時代の変化を経て、キャラクター設定や脚本が改まり、再演でありながら、新脚本版としては世界初演となる公演でした。

キャスト

まずは語らせてくださいね。マイフェアプリンスまりまりのことを

いやほんまになんてこと。ジミーに田代万里生をキャスティングしてくれた人に国民栄誉賞をお送りしたい。まりまりのカッコよくて可愛いところが全部盛りじゃないですか!!!

ネタバレになるけど、結局ノーブルな坊やんというところも含めて育ちの良さが滲み出て、勿論あの素晴らしい歌声も存分に発揮され、そして可愛いが可愛くて可愛い。ちょっとだけダンス(ステップ)も嗜まれる。え?!強みを発揮しつつ、新たな一面も魅せてくれるなんてもうどういうこと?いやーなんかここ数年の色々なお役の集大成のような味わいすら感じました。

ジミーは最初、ちょっと(だいぶ)イヤーなシティボーイなんですけど、その雰囲気すらも良い。普段のまりまりがお育ちの良い感じだからこそ、こういうちょっとヤなキャラクターの言い回しとか仕草に逐一ときめいちゃう。

タートルネックにサスペンダーのまりまり、とても良かったな。とても。あと皿洗いのシーンの佇まいもとても良かったな。とても。


主役を差し置いてまりまりを先に語ってしまいましたが、主人公はまあ様(朝夏まなと)。いっとき、何作も連続で拝見していたのですが、久々でした。
相変わらずスラリとしたスタイルの良さと、かっこよさと可愛さ、そしてコメディエンヌとしての絶妙なバランスを持ち合わせておられ、チャーミング。ダンスが多い作品は、まあ様のスタイルの良さと華麗なステップが映えますね。

1幕終盤のソロ「ジミー」をはじめ、お歌もステキ。うん、ジミーにゾッコンなのわかるよ。まあ僕はジミーというかマイフェアプ(略)。

グレイドンの廣瀬友祐さん。「様子がおかしい」との前評判の通り、ほんまに様子がおかしくて色々無駄遣い(褒めてます)。イケボ長身ハンサムなのに、真顔で真面目におかしい。ウケ狙いのボケではなくて、真面目にふざけているところに面白さがある。
一回笑ってしまうと、歌っていても踊っていても喋っていても面白くて見えてしまう。罪な存在(くどいですが褒めてますよ)。一人だけ声量のレベルが違っていたのすら面白い。

ドロシーの夢咲ねねちゃん。廣瀬グレイドンも大概ですが、ねねドロシーも大概様子がおかしい(褒めてます)。僕はぶりぶりした天然キュートな女の子はあまり得意ではないのですが、ねねドロシーくらい振り切っていると最早感動する。基本的にThe女の子らしい感じですが、時々野太い声が発されて、それもまた面白いです。

マジーの土居裕子さん。大御所な歌姫でもありながら嫌味はなく、どこか母のような温かさをも感じる役どころで(実際「母」ですが)、歌唱パフォーマンスもセリフお芝居もステキでした。作品の締め役なだけでなく、終盤のぶりっ子(!)やヨーデルなどコメディシーンも大変よかったです。

ミセス・ミアーズの一路真輝さん。僕は今作初見なので、こういうヒール役もやられるというのが意外でした。
そして前回までと大きく役どころが変わったのがこのミアーズ。夢への執着ゆえに手段は色々と間違ってしまいましたが、彼女もまた自分なりにもがいて生きている人間というのが分かるから、どこか憎めない。

ミアーズの下働きをしている中国人兄弟、チン・ホーの大山真志さん、バン・フーの安倍康律さん。日本語セリフはほとんど無いけど、表情や動きで感情が伝わってくる不思議(字幕もありますが)。チン・ホーかわいいよね。このキャラクターなくしてこの作品は成り立たない。

ミス・フラナリーの入絵加奈子さんを筆頭に、アンサンブルメンバーもスポットライトがあたる部分が多くて、カーテンコールでは、それぞれのキャラクターが象徴的なポーズをとるのも面白かった。楽しいエンタメとして最初から最後まで楽しめますね。ちなみに僕の座席位置はミス・フラナリーの肘のポーズが真ん前でした。

ダンスシーンも多い作品で、アンサンブルの皆さんの世界づくりが美しい。コメディではあるけど、ミュージカルとしてのかっこよさや華やかさも最高レベル。この時代のお衣装の雰囲気が好みというのもあいまって、満足感が高かったです。

王道コメディ

僕は結構重ための作品が好きな傾向にあり、コメディ作品は、「あー面白かった」で終わってしまいがちなので、そこはかとない物足りなさを感じることもあるのですが、王道に笑いを誘うコメディの良さが表れていた作品でした。笑いは健康にいいですから。ダンスやモーションもステキなので、複数の意味で笑顔になれる。

加えてコメディの良さは、キャストも楽しそうなのが伝わって来やすいところ。もちろんお芝居なので、楽しいばかりではないのですが、キャストの皆さんが楽しそうなのがいち観客としてもうれしくて、作品の外側でも満足感があります。

マイフェアプリンスも楽しそうなのでね!!プリンスが笑って生きているならこんな幸せはない!!

ストーリーと上演の意味

どんな作品でも意味とか世界観とかを考えてしまう僕による、「わざわざ重ために解釈」のコーナー。

前回までの公演を知らないので正確かわかりませんが、今回脚本も見直されたとのことで、ストーリーの背景にある部分(人種差別など)にテコ入れがあったとのこと。
初演版の独特の良さもある一方で、ミュージカルの歴史は、他のエンタメと比べてそれほど長くはありませんが、それでも時代や上演場所が異なれば、変化させていくべきところもあります。

フィクションとはいえ、人々に感動や楽しさを与えるエンタメである以上、時代にそぐわないがために観客に違和感を与えるものはアップデートしていく必要がある、という思想は、いちミュージカルファンとしてハッとするところがありました。

そして、この作品の時代設定は今から100年前。主人公のミリーは、恋愛結婚ではなく、計画的・実用的な結婚を望んで田舎から出てきます。

当時の「モダンなガール」とはこういう生き方だと信じて、独身社長のグレイドンに気に入られようと奮闘するのですが、自分にはどうにもできないジミーへの恋心に芽生え、まさに恋煩いな状態に。
マジーの助言もあって、結果的にジミーを選び、「幸せ」を手に入れる。しかも、ジミーは実はお坊ちゃまなので、結果論ですが、当初の目論見通りに玉の輿に乗ることにもなります。

結婚はおろか、恋愛すらも贅沢品だと言われつつあり、結婚だけが幸せじゃないという主張が市民権を得て久しい現代。
100年前が舞台のフィクションとはいえ、結婚、玉の輿、というところが観客に意図しないメッセージを与えることも考えられるわけですが、それでもこの作品を今の時代に上演する(しかも脚本をアップデートしてまで)ことの意味は、

何が幸せかは自分で選ぶのが「モダン」な生き方である

というメッセージなのかなと思いました。

ここでのモダンは、最先端の、流行の、みたいな意味ではなく、現代つまり今を生きている、という意味。モダンの中身は移り変わるなか、2024年のモダンとは、これなのだと。

本作のヒール役であるミアーズが、女優に憧れ執着し続け、なおもなれなかったのも、ある意味この鏡合わせなのかなと。彼女からは、夢を追い続ける一種のひたむきさも感じつつ、「今の幸せ」を自分で再定義することができなかった姿も垣間見ることができるのではないかと思います。

もしかしたら、ブロードウェイで初演された時は、違うメッセージがあったかもしれません。でもそれは唯一不変なものではなく、常に「今演る意味」を制作側も観客側も再定義していく、ということが、これからも永くミュージカルというエンタメが楽しまれるものであり続けるための要素なのかなと思いました。

そしてそれは、ミュージカル自体の歴史が程よく長くなってきたまさに今、求められていることなのかもしれません。

総括

なんか前段、思いの外思想強めにしてしまったな…。なんで僕は「あー面白かった!」で終えられないのだろうか。

さておき、前回(2022年)をスケジュールの都合で諦めたこともあり、個人的にリベンジ観劇というところもありました。結果的に大いに笑い、大いに楽しませてもらい、そしてマイフェアプリンスまりまりを堪能させていただき、とても大満足です。ええ、とても。

これぞブロードウェイミュージカル!という王道な作品で、ホンマによく笑いました。コメディは「ウケなかったら大怪我」の可能性もありますが、たぶんほとんどの人が笑えて楽しめる作品だと思います。

これを書き終えた頃には、ちょうど東京凱旋公演を控えている時期かと思います。最後までカンパニーの皆さんが、安全に健康に、楽しく大千穐楽を迎えられますように。

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