見出し画像

【観劇レポ】心の声を叫びな! ミュージカル「スクールオブロック」

観劇レポ。ミュージカル秋のラッシュ中盤戦は、ミュージカル「スクールオブロック」大阪公演です。

初演時は流行病の影響で中止となったリベンジ公演。劇場である新歌舞伎座に入るや否や、ミュージシャンのライヴ会場かと見間違うステージが。ライティングが完全にロックバンドのそれです。

キャストはこちら。子役たちは2チーム制なのですが、チーム・ビートです。

9/30ソワレ

ストーリー

主役のデューイはバンド活動をしながらも、そのバンドすら追い出され、いわゆるニート状態の男。昔馴染みでエリート校の教師を目指すネッド、その彼女で超しっかり者のパティとシェアハウスしているものの家賃も払えず…という中で、あるエリート校からネッド宛の採用電話をデューイがたまたま取ったことから物語は始まります。

ネッドの名前で名門校の臨時教師になるデューイ。二日酔い&遅刻と、超絶やる気のない教師生活でしたが、ひょんなことから、受け持つクラスの子どもたちが楽器を弾けることを知り、バンド結成とバンドコンテストに挑むことを目標に掲げます。

全体的にコメディ調で、デューイと子どもたちの受け答え、真面目で完璧な校長との掛け合い、ネッドとのやりとりなど、笑いを誘う場面が多かった印象。

一方で、子どもの未来を思うがあまり、親の考えを押し付けレールを敷いてしまう大人たちの傲慢さ、本当に好きなものを封じて自分の役目役割を果たそうとする校長、パティの言われるがままになっているネッドなど、それぞれの登場人物から感じ取れるメッセージやテーマもありました。

特に、デューイの正体がバレてもなおデューイを「大事なことを教えてくれた、一緒に大切な時間を過ごした先生」として慕う子どもたちの姿は、嘘から始まった関係性でも、心を通わせていたことが分かる感動シーン。
その人が誰であるかより、どんな時間を過ごしたか。子どもたちにとっては、それが一番だった。ここから一気にフィナーレまで進むのですが、心が揺さぶられる展開でした。

ロック・ミュージックは社会や世界への反抗心から生まれた音楽ですが、アンチ社会とまでは言わずとも、周囲の環境や自分の置かれた状況に、フラストレーションを抱えている人は多いもの。自分が本当に思っていることを、声に出して叫ぶ。大人になればなるほどに難しいことですが、実は子どもたちも、よっぽど我慢し、耐えていることもある。大人、子ども、という区分けではなく、人間誰しもが内なる感情を抱えながら、現実に耐えている部分があることをしみじみ感じました。

キャスト

主演はかっきーこと柿澤勇人。春に観た「ジキル&ハイド」が非常に良かったんですが、ここまでコメディに振り切ったかっきーもまた良かった。声の出し方が2作で全く異なるのですが、まさにロックンロールな尖った感じと、子どもたちにある意味対等に接する姿勢とが絶妙でした。単に子どもっぽいシーンもありますが。

全体的にアドリブ多めのような印象を持ったのですが、例えば校長との会話でメリーポピンズという単語が出たのはアドリブなんでしょうかね。いや、君ら(かっきーと濱めぐさん)ホンマにメリーとバートやんって心のなかでツッコんでしまった。
2幕でかっきーが大量の水を吹き出すシーンも、いつもより多めに吐いております!なのか、横にいるキャスト(たぶん神田さんかな)の耳にまで水が入ったようで、キャスト勢もちょっと笑ってました。そのあと気遣ってたのはたぶんデューイじゃなくてかっきー。

親友ネッドは梶裕貴さん。そう、かの売れっ子声優さん。アニメでよく聞く声が目の前に聞こえる…!なぜあんなに好青年感、パティの尻に敷かれている感、主人公の横にいるいいヤツ感のあるお声が出せるのでしょう。またら終盤でパティに初めて反抗するシーンでの「うるさーーーーーーーーーい!!!」のロングトーンは拍手が起きてましたね。
ラストにビジュアル系の姿に扮していましたが、最早誰か分かりませんでした。声に名前が書いてあってよかったね…。わりとメイクが酷いらしく、(たぶん)アドリブでかっきーに「そんなに酷かった?」とツッコまれてました。

ネッドの恋人パティは宮澤佐江さん。サバサバちゃきちゃき系の気の強い女性。「キングアーサー」のグィネヴィア以来ですが、こういうはっきりしたお役が似合う気がします。
明確な悪役がいない今作の中で、ある意味嫌われ役を買ってしまう役ですが、そう、正しさは時に人を傷つけるんですよね…と妙な共感を得たキャラクターです。

校長先生は我らが濱田めぐみさん。なぜこれほどまでに校長先生が似合うのか。名門校を預かる者としての規律、厳しさもありますが、某ギチギチの国のトランチブルと違って、ちゃんと優しさや愛もある人。そして本来は自由を愛するロックな人でもあるというのがいい設定で、彼女の存在は極めて重要です。
歌についてはもう言うことないでしょう。これぞ濱メグ。2幕のソロ曲はこれぞ、という圧巻の歌唱。僕がどんな言葉を尽くしても、この凄さを語れないので黙って全世界に濱めぐ陛下の歌を聞いてほしい。

アンサンブルメンバーも豪華。主には皆さん、先生と保護者の役です。それぞれ何の担当の先生なのか、セリフに表れなくてもキャラクターとして分かるのも面白いので、複数回観れたほうが楽しめるかも。

ミュージカルとしては子どもたちがメインになるので、僕の好きな大勢のダンス&ハモリみたいなのは少ないのですが、ストプレ部分の土台をしっかり支えてくれていた印象です。
終盤では舞台の下手側から保護者として客席横に連なり、子どもたちの演奏を見届けます。最初は「なんでこんな無駄なことを!」とプリプリしてる感じですが、演奏を聞くほどに「うちの子こんなことできたのね」みたいな表情へ変わっていっていたのが、本当に細かい演技が素晴らしいと思った瞬間。多くの観客はステージを観てますからね。それでもなお、気を抜かず演じきるプロ魂。

そしてチーム・ビートの子どもたち。みんな歌上手いねぇ…おじさんビックリしちゃう。余談ですが、変声期が来かけている子もいて、子役って難しいよなあと一瞬考えました。「ファインディングネバーランド」でも、変声期のため降板ってありましたし。
それぞれ親とのシーンも描かれて、内に抱えている思い、そしてそれをある意味開放してくれるデューイへの信頼が、観る大人たちに刺さりますね。目玉でもある演奏については次の段で。

生演奏

ミュージカル作品は数ある中、生演奏かどうかというのも作品や会場によって異なります。

その中でも本作は異色。作中でバンドを組む子役のキャストたちが、本当に楽器を弾いています。小さな体でギター、ベース、キーボードにドラム。その姿だけで、あるはずのない僕の中の父性が爆発して号泣ものです。楽器弾けることに憧れのある僕としては、はえーすごいなぁーという素人丸出しの感想しか述べられないのが悔しい。

それにしても、「ビリー・エリオット」しかり、子役がメインのお芝居は弱いですね…涙腺ダムがすぐ決壊する。子役だからという贔屓目は失礼だと思うので、あくまで一俳優として観るものと思いますが、一生懸命練習したんやろうなあというのを想像してしまうともうだめですね。父性ビックバン。

ちなみに主役のかっきーもたぶん、ギターを本当に弾いていました。また僕はかっきーVerで拝見しましたが、Wキャストで同じ役を現役ミュージシャン・西川貴教さんが演じています。西川兄さんのも観てみたかったな。

🤟ロックンロール!🤟

そういえば、フィナーレからカーテンコールにそのままつながるのは新鮮でした。それぞれ手を🤟の形にしてポーズを決めていくの、ハッピー系カーテンコールの極みですね。
ソワレでこどもたちが多いので、時間が迫る中でしたが、チーム・ビートとプリンシパルキャストが千穐楽だったということで、簡単にかっきーから挨拶がありました。初演時は中止となったこともあり、ようやく幕が上がってよかったなあと思いますし、キャストを始めカンパニーも万感の思いだろうと拝察します。

ということで「スクールオブロック」のレポでした。全体的に分かりやすく、笑えて泣けて感動もする、そんな作品です。
理不尽なことの多い世の中ですが、自分の内なる思いには耳を塞がず、時には叫んで解放してあげたいものだなあと思いました。そしてできるなら、身近な他人の内なる声にも耳を傾けられる人でありたいなとも。

はー面白かった!もう1パターンのキャストも観たかったのですが、ぜひ、再演お待ちしています。

ロックンロール!!🤟🤟🤟


この記事が参加している募集

舞台感想

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?