成功の連鎖を生み出す -私がカスタマーサクセスの仕事を通じてこれを目指す背景-

 「自分のやりたいことが分からない」という悩みの声をよく耳にする。特に就職活動の際など、自身の進路における岐路に立たされた時に、この悩みに直面する人が多いようだが、これは自然な現象に思える。

 「自分のやりたいこと」をこの世に生を受けたその瞬間から自覚している人はほとんどいないであろうし、幼少期以降も考える必要性に迫られる局面は限定的だろう。だから、唐突に話題を振られても答えは出ないというのは当たり前だ。

 個人のキャリア形成に影響を与える要因の一つに「メンターとの出会い・関わり」がある。憧れの先輩像を見て、自分もこうなりたいという意志を持つというメカニズムだ。しかし、自分にとっての憧れの先輩は、そうそう出会えるものではないようだ。

 一方で、幸いなことに私は人生の先輩との出会いに恵まれたおかげで、「自分のやりたいこと」が見つかり、これに挑戦することができている。

 私が人生で成し遂げていきたいこと(Mission / Purpose / Will)は、「新たな成功事例を創出し、社会の進歩に貢献すること」だ。

 この記事では、読んでくださる方にとってケーススタディの一つとして何かしらのヒントをご提供できればと思い。私がこの考えを持つに至ったきっかけや背景を記していく。

世のため・人のために働く、人生の先輩方との出会い

 大学時代、起業家の方々が集うイベントや、Goodfindというプラットフォームを通じて、社会課題を解決するため・より良い社会を創るために、本気で挑戦する人生の先輩方の存在を知った。先輩方の熱意や覚悟をしびれるほど肌で感じ、強烈な影響を受けた。自分も社会の進歩を牽引する仕事をしていきたいと思った。


人手不足という社会課題への挑戦

 大学卒業後、人手不足等の社会課題解決に挑むHRソリューションズに参画させて頂いた。どのような言葉を選んでも決して十分な表現にならないが、人生の礎となるかけがえのない経験をさせて頂いた。

 事業はHRテクノロジー領域のSaaSで、日本全国に店舗や事業所をお持ちの大手企業様を中心に採用活動などご支援する。私は3年半カスタマーサクセス部に所属し、飲食業・宿泊業・小売業・物流業など様々な業界のお客様のご支援を担当させて頂いた。

 日本では、生産年齢人口が1996年から、総人口が2009年から減少の一途を辿っている。また、1年間に生まれた赤ちゃんの数は2020年に85万人を下回って5年連続の過去最少記録となり、日本は既に未曽有の人口減少社会を迎えている。そして、2017年時点で既に約121万人だと推計されていた全産業合計の人手不足数は、2030年に約644万人に上ると予測されている。

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※出所:国土交通省『「国土の長期展望」中間とりまとめ概要』(2011年2月)より
※備考:上記グラフは推計データが含まれるため2004年12月がピークであるとの表記があるが、前述の通り実際には2008年(1億2,808万人)がピークで2009年から減少に転じている。

 人手不足という課題は、企業にとって業績のトップラインや長期的な成長にも大きな影響を及ぼす重要な経営アジェンダだ。東証一部に上場されているような大規模の企業様も含めて、私どものご相談を先方のCEOや役員クラスの方に直接ご対応頂くことも珍しくなかった。一方で、HRソリューションズは私が入社した当初から組織体制が追い付かないほどに社会的な需要や事業の成長速度が凄まじかったため、新卒入社の私にも早い段階から大手企業様のご支援に携わらせて頂いた。

己の圧倒的至らなさを痛感し、多くを学ばせて頂いた

 当然、各社様のご支援は当時の私一人で到底手に負えるものではなかった。上司や先輩方にご助言頂きながら、社内で代表や役員の皆様からも直接ご指導を頂いた。その時の一秒一秒の空気と一言一句には直接心臓に突き刺さるような感覚があった。自身の甘さ・弱さ・至らなさを身に染みて痛感し続けた。しかし同時に目の前に広がる無限の可能性に心を躍らせた。心と魂がヒリヒリする毎日を重ねて、徐々に皆様のご指導のおかげで、お客様に感動頂ける水準での支援や成果創出ができるようになっていった。

 お客様から学ばせて頂いたことも非常に多い。業界や事業のことを教えて頂いたり、お客様の現場業務を視察させて頂いたり、お客様の研修に参加させて頂くこともあった。また、お客様から「それで本当に成果を出せるのか」「こういう点も考慮すべきではないか」といったご指摘を頂くこともあり、そこでの議論を通じて、提案や施策に不足している点を勉強させて頂くこともあった。さらには、前例のない領域における挑戦的な取り組みについてもお客様から「一緒に創っていきましょう」と言っていただけることもあり、本当に有難かった。

 自身の不勉強や無関心を大反省する機会にも恵まれた。特に組織で上位の役職に就いていらっしゃる方や中央省庁にお勤めで社会の在り方を日々構想されている方など、責任範囲が広範囲に及ぶ方は、視座・視野・視界の次元が異なり、限界が全く分からなかった。ほんの数分間に交わされる会話の内容という一面だけを切り取っても、例えば経済成長・国際情勢・安全保障・社会保障・財政政策・地方創生・貧困や格差の是正など、当事者意識をお持ちの領域範囲が桁違いであった。しかも素人目線では普段のお仕事や事業に直接関係がないと思われるお話ばかりであった。

バトンを繋ぎ、社会に恩返しする

 私は、たまたま運がよく、偉大な人生の先輩方との出会いがあり、かけがえのない経験やご指導を賜ってきた。自身と社会のプライマリーバランスを考えると、圧倒的に負債が大きく、しっかりと社会に恩返しをしていかなければいけないという状況だ。

 今、日本には安心・安全で便利で豊かな毎日があり、これを生まれた時から当たり前のように享受している。この毎日はこれまで社会の先輩方が築き上げ繋いできてくださった総合芸術だ。私も少しでも良い未来を後世に残していきたい、創っていきたい、繋いでいきたい。

契約業務プロセスのDXへの挑戦

 HRソリューションズを退職後、弁護士ドットコムに参画させていただいた。クラウドサインという電子契約サービスの社会実装に向け、大手企業様を中心に契約業務プロセスのDXのご支援を担当させていただいてる。

 どの企業でも「契約の締結作業をしたくてその企業に入った」という人はほとんどいないだろう。機械に代替される業務に好き好んで取り組みたいと思う人も少ないだろう。それよりも、本質的な付加価値の高い、注力すべき・注力したい業務が別にある。現状日本は国際競争で後れを取っている状況であり、企業としても従業員の時間や情熱を、ルーティーンワークに割いている余裕は全くない。2020年に菅政権が象徴的に「脱ハンコ」を標榜したように、非効率な商習慣や前例主義を見直し業務改革を推進する手段として、電子契約のような取り組みは有効な一手となりうる。

 一方で、電子契約は「顧客の現場担当者様」が取引先を説得する必要があるという特性上、本質的なチェンジマネジメントが要求される。そのため、他のSaaSやITツールと比べて、活用浸透や定着化の難易度が高いと思われる。逆に、企業が電子契約の活用浸透や定着化に成功できるケイパビリティがあれば、他の業務プロセス改革もほとんど成功させられるであろう。

 2020年12月末に経済産業省から発表された「DXレポート2」の中では、一般にDXは9割以上が成功に至っていないとされている。また、別の調査で取り組みテーマ別で見ても、下図の通りDXプロジェクトはほとんどのテーマについて9割以上が成功していない

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※出所:アビームコンサルティング株式会社『日本企業のDX取り組み実態調査』(2020年12月)より

 お客様と共にこの状況を打破していきたい。お客様に契約業務プロセスのDXを成功いただくことを通じて、DXに関する実績・能力・自信・文化の獲得につなげていただきたい。一人でも多くの方に、一秒でも長く、本来注力したい”コト”に、注力していただけるようにしたい。

成功の連鎖を生み出し、進歩に貢献する

 どのような領域であれ、一つ新たな成功実績が生まれると、それを参考に同様の悩みを抱える企業や個人も課題解決できるという連鎖反応が起きる。そういった成功の連鎖を生み出すことができれば、多くの方のお役に立てるのではないか。少しは社会の進歩に貢献したと思えるのではないか。

 成功の連鎖を生み出すことは、社会に新しい未来を実装していく活動そのものだ。それ自体が最高にエキサイティングで、面白く、誇らしく、幸せな挑戦だ。

 最後までお読みいただき誠にありがとうございます。私自身の個人的な経験や考えに関する内容ですが、有言実行するべく自身へのコミットメント表明という意味も込めて記載・公開させて頂きました。もしご覧いただいてお感じのことがございましたら、その内容をシェアして頂けますと大変うれしいです。

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