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伝統工芸を現代の暮らしに取り入れる方法② 伝統技術と最新技術を組み合わせる。

前回は、①伝統技術をそのまま他分野に転用する方法をお伝えしました。

今回は、伝統技術と最新技術を組み合わせて、新しい価値を生み出し、現代の形に取り入れる方法を紹介します。

デジタル全盛期時代の現代では、商品開発分野においても、3Dプリンター、レーザーカッター、切削機、IoTなどもデジタルツールが一般的な道具となっています。

プロダクトデザインの業界でも、設計に用いる3DCADや、試作や検証をするための3Dプリンターなどのテクノロジーが広く使われています。これらを利用することによって、質を高め、試作や検証の効率化を図れます。

そして伝統工芸技術と最新技術を組み合わせた、双方の利点を生かしたモノづくりの視点は今後において非常に重要なので、現在行われている事例を紹介していきます。

①陶芸×3Dプリンター 「森の種陶工所」

3Dプリンターとは、3DCAD、3DCGデータを元に立体を造形する機器。熱で溶かした薄い層を積み上げる「FDM方式」、液状の樹脂を紫外線で少しずつ硬化させる「光造形方式」など、様々な方式のプリンターが存在します。

森の種陶工所

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引用元:https://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/1710/30/news002.html

今回は「石こう型を作成するための型」を光造形で3Dプリントし、製作した型で石こう型を作成することで、型製作について大幅なコストや手間が削減になりました。

このように型製作以外にも、陶芸×3Dプリンターは多くの方が挑戦しており、今までにない形状や構造も可能になりました。粘土を素材として使う3Dプリンターを用いて、直接陶器を作れることもできます。


デジタル陶芸工房「The Bottery」

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引用元:https://fabcross.jp/news/2018/20180528_the_bottery.html

The Botteryは、陶芸用3Dプリンターを使ったデジタル陶芸を教える米カリフォルニア州オークランドの陶芸工房。デジタル陶芸は、コンピューターを使って陶器の形状をデザインし、3Dプリンターで造形してから陶窯で焼いて作るという新しい陶芸の形だ。


②漆器×3Dプリンター 「KISHU+」

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引用元:https://kishu-plus.jp/product/details

『KISHU+』が掲げるのが、先端工芸。漆器の地である木を大切にしながらも、合成漆や樹脂生地などの最新技術を駆使しています。従来の職人による手仕事も生かしながら、3Dプリンターといったデジタル技術も利用し、最新技術との組み合わせで、使いやすい漆器を生み出しています。


③沈金×レーザーカッター 「中静 志帆」

レーザーカッターとは、イラストレーターなどでデータを作ることで、木材や金属板のカットなど自動でカットできる加工ができる機械です。安価なモデルもありますが最低でも100万円台、外付けの集塵機を導入する必要があるなど、導入のハードルが高くはあります。

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(引用元: http://www.shiho-nakashizuka.com/forkplateknife?lightbox=image15pt)

沈金とは、加飾をするための伝統的な工芸品に用いられる技法の一つです。伝統的な技法では、ノミで塗面に模様を彫り、そこに漆をすり込み、金粉などを埋め、模様を描きます。

中静 志帆さんは、この沈金という伝統的な装飾技法をもとに、レーザーカッターを用いてアクリル素材に施す手法で作品を制作しています。


④漆器×iOLEDフィルム光源  「輪島キリモト」

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(引用元: https://creatorzine.jp/news/detail/639

「余光」は表面を薄くくり抜いた器に、貝殻薄片とiOLEDフィルム光源を貼り付け一体化したものをはめ込み、その表面に漆が一層塗られている。漆を薄く何度も塗り重ねていくことで強く美しい塗膜を生み出すことが輪島塗の大きな特徴であり、螺鈿で扱う貝殻薄片もできるだけ薄いことが条件となる。iOLEDフィルム光源が厚さ0.07mmと紙よりも薄いため、貝殻薄片との一体化が実現した。

石川県輪島市で生産される漆器、輪島塗。その輪島で200年以上、漆器に携わり続けている「輪島キリモト」と、おむつの素材である高吸水性樹脂や光ファイバーを開発している日本触媒がコラボレーションしました。

螺鈿(らでん)とは、貝殻の内側の真珠色の光を放つ部分を、漆地や木地の彫刻された表面にはめ込む手法です。その技法と、紙より薄いフィルム光源(iOLEDフィルム光源)を組み合わせ、新しい器を生み出しました。


⑤組紐×蓄光撚糸  「龍工房」

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最後に手前味噌ですが、自分が企画・デザインに携わった伝統工芸×最新技術の紹介しようと思います。組紐の老舗工房である龍工房さんと伝統を纏う防災用品「蛍組紐 お守りブレスレット」を開発しました。

蛍組紐とは、熟練の組み技術によって蓄光撚糸(ちくこうねんし)を組み込んだ組紐です。太陽や蛍光灯の光に当てることで蓄光し、夜や暗所で蛍のように優しくぼんやり光ります。この蓄光効果によって居場所を確認でき、夜間災害の際にも役立ちます。組柄には、由緒正しい角打ちの紐「中尊寺組」の流れを汲む、角源氏が用いられています。


いかがでしたでしょうか。
次回は、③アニメとコラボする。をお話しします。

伝統工芸を現代の暮らしに取り入れる方法
① 伝統工芸の技術を転用する。
② 伝統技術と最新技術を組み合わせる。
③ アニメとコラボする。

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