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君は「死霊の盆踊り」を見たことがあるか(意訳:見なくていいです)

◇はじめに◇

ドーモ、タイラダでんです。よくいらっしゃいましたね。

さて、このたびワタクシ日本の首都キョ―トに赴き、一本の映画を見てまいりました。

それこそが、かの有名なカルト映画「死霊の盆踊り」

ご存知ですか? この映画。おそらく殆どの方が聞いたことがなく、また聞いたことがある方でも実際に鑑賞したことがある方は少ないのではないかと思います。

その怪作が京都の映画館「出町座」さんで、期間限定上映されています。

正直、見ることをオススメするわけにはいかない作品なのですが、どのような力学が働いたのかコイツをHDリマスターした挙げ句、33年ぶりに劇場のスクリーンにかけようとしている……!

風情のある商店街、その奥まった場所にあるカフェ✕書店✕シアターといういかにもなオシャレスポットなんですよ。それがなぜ? よりによって?

しかも、今回の上映にあたってこの映画の仕掛け人である江戸木純氏のトークショーも行われるらしい……! いやホント、ナンデそんなに気合入っているんでしょうか? こんな えいがに まじに なっちゃって どうするの?

と、思っていたのですが、どうやらその江戸木純氏プレゼンツ「サイテー映画の逆襲2020!」なるイベントの一環だったようです。全国各地の映画館(九州以外)で順次公開していっている様子。

ともかく、そのトーク付き上映が実施される日と休みがたまたま一致してしまったせいで、今回の遠征と相成ったわけでありました。

え? 実際、どんな映画なのかですって?

ストーリーは虚無言葉どおり、何もありません。誇張一切抜き。

一言で言えば「裸の女性が踊る様子をただひたすらに見させられるだけ」という代物で、その筋では有名な作品なのです。

もともとはポルノ解禁前のアメリカで女性の裸を見せるためだけに作られた作品(1965年撮影!)なので仕方がないんですけどね。

それでまあ、せっかくと言えばせっかくですので、実際に見た僕(通算3回目)が、どんな映画なのかを詳しくお伝えしようと思います。この記事を読めば、もう本編を見る必要はなくなるでしょう。うーん、人助けは気持ちがいいですなあ

1 冒頭

まず画面に現れるのは屈強な体つきの男たち。彼らが安い作りの棺桶の蓋を開けると、中から安い黒マントに身を包んだ”自称・闇の帝王”。演じるのはエド・ウッド映画でおなじみの預言者クリスウェル

そうそう。この映画の原作・脚本は、かの有名な”史上サイテーの映画監督”ことエド・ウッドです。

クリスウェルは、大袈裟かつ大根役者の生きた見本の如き演技で、エド・ウッド特有の冗長、大仰だが意味のないセリフを喋り始めます。

曰く、「ワシは夜の支配者! 悪霊たちよ、墓場から蘇って踊るのだ! そしてワシを楽しませろ! もしワシを満足させられなければ永遠に地獄行きだぞお!」

……半笑い、しかもカンペをガン見しながら言われてもあまり説得力がありませんが。

場面は変わって、人気のない道。疾走する一台の車。

乗っているのは売れない小説家ボブと、そのガールフレンドのシャーリー

ボブはホラー小説のインスピレーションを得ようと、深夜の墓場に向かって車を走らせているのでした。そのとき謎の力がわかりにくい描写で働き、ブレーキが急に効かなくなってしまいます!

画面が高速回転! 次に二人が気がついた時、そこは件の墓場のそばでした。その墓場からは、やけにムーディーな謎の旋律が流れてくるではありませんか……!

シャーリーは恐怖に震えますが、ボブは「墓の管理人のしわざさ、助けてもらうとしよう」と一笑に付して墓場へと近寄って行きます。

生い茂る草を払い除け、墓場へとたどりついた彼らが見たものとは――!

2 序盤戦~地獄の始まり

ここからはひたすら、「霊という設定の女性が登場→脱いで踊る→ちょっとした茶番」のループ。登場する女性は合計10人。つまり10回もこのループが繰り返されるわけですね。拷問か

闇の帝王クリスウェルは配下の闇の女王(ジェネリックヴァンパイラという感じの女優さん)を呼び出し、彼女に帝王である自分を楽しませる悪霊を呼び出すよう命じます。

まずは「炎を愛した女」の霊。インディアン・ダンサーです。アメリカ先住民ではなく、インドの女性、という設定ですね。浅黒い肌の美人さんで、おっぱいは普通の大きさでした。

インドと言えばダンスですから、一番手にふさわしいのではないかと思います。しかし現在のインド映画のようなハイテンションではなく、あくまでも裸を見せるための踊りですから、非常にゆったりとしたダンスです。見ているこちらは早速睡魔との戦いに身を投じることになります

二番手は「彷徨を愛する女(?)」の霊。赤毛の美人さんで、おっぱいは小振りでした。

彼女のダンスは……なんといいますか、いかにもなムード音楽に乗せて、扇情的な手付きでこちらを誘う、非常に官能的なものとなっております。昭和のストリップ。正直、僕も実際に行ったことはありませんが、イメージとしてのそれ。

このあたりで、見ているこちらもだんだん辛くなってきます。僕は一体何を見せられているのか?(ポルノです)

続いて三番手は「黄金を愛した女」の霊。ヒロインのシャーリー役の女優さんの、一人二役です。赤毛のシャーリーに対して、こちらはブロンド。おっぱいは……おっぱいは、すごかったです

この女優さん、当時一番人気のベリーダンサーだったらしく、スタイル抜群でダンスも上手い。

この映画の数少ない評価点の一つに、「本職の方々を集めたので、ダンスがキレッキレで素晴らしい」というものがあります。久しぶりに見返して、各人のダンス、その表現力にちょっと感動すら覚えてしまいました。ほかがダメダメな分、余計に。

さて、素晴らしいダンスを披露してくれた女にクリスウェルもご満悦。褒美をやろうと言い出します。

そこに登場したのは冒頭に出てきた屈強な男二人組、最後の出番です(よかったですね!)。彼らはなにかのツボを取り出すと、その中身――金貨らしきもの――をひざまずく女に振りかけます。

ジャラジャラ……ジャラジャラ……

クリスウェル「もっとだ!」

ジャラジャラ……ジャラジャラ……

クリスウェル「もっとだ!」

ジャラジャラ……ジャラジャラ……

クリスウェル「もっとだ!」

ジャラジャラ……ジャラジャラ……

クリスウェル「もっとだ! ハーハッハッハ!」

テンポ悪すぎるだろ! 演出イチから勉強し直してこい!!!

そんな観客の心の声などつゆ知らず、クリスウェルは男たちに命じます。

「そんなに黄金が好きならば、こうだ!」

男たちが用意したのは煮えたぎった黄金が入れられた大きな瓶! 中の黄金が8bitシューティングゲームのような音を立てている!(ナンデ?)

いやホント、なんでそんな音なんですかね……?

そうこうしているうちに嫌がる女を瓶の中へ! しばらくして取り出された女は、哀れ全身金粉ショーと化していたのでした。

金粉ショーを知らない良い子は、おとうさん、おかあさん、またはグーグル先生に聞いてみよう!

さて、そんな宴の様子を悲痛な顔で見ているボブとシャーリー。観客の「どこにそんな顔をする要素が?」という心中のツッコミもつゆ知らない彼らに、唐突な危機が訪れます。

彼らの後ろから忍び寄る怪しい影! 恐るべき怪奇、ミイラ男と狼男

……予算がないためでしょうが、ミイラ男は麻袋に穴開けて上からかぶせただけのような造形、狼男はダ○ソーの仮装グッズのほうがまだマシな感じの安い作りのマスクでした

彼らに襲われ、哀れボブとシャーリーは拉致されてしまいます。

気がついた二人の前には闇の帝王と女王! 
帝王は命じます。「我等の仲間にしてやろう!」

それに応じる女王、「縛りあげて、この宴を見せてやろう!」

ナンデ?

観客を全速力で置いてけぼりにしつつ、ボブとシャーリーは墓石に縛りつけられてしまうのでした。

3 中盤戦~映画も観客も息が切れてくる

そして四人目。今度は「猫を愛した女」の霊! 現れたのは……胸とお尻だけ丸出しにした、ネコのコスプレ女! 闇の女王いわく、「愛することとはすなわち、そのものになること」!

ナンデ? 

おっぱいは大きかったです。

女性が妙に可愛らしい音楽(ナンデ?)に乗せて、ネコネコダンスを踊る! 

その後ろで、女に当たらないように気を使ってムチを振るう男! ナンデ?

女王いわく「猫は鞭打たれるものだ! いい気味だ!」

ナンデ? というか猫好きとしては普通に腹立ちますねこれ

女は踊りながら服を脱ぐ! ネコミミ付きの被り物だけが残りますが、正直ホッカムリにしか見えませんつら

五人目。「奴隷女」の霊。登場早々手を縛られ、優しくムチを打たれています……と思っていたら自力で手枷を外し踊りだします。ナンデ?

この方の踊りも、オレンジ色のスカートを華麗に翻しながらのなかなか素晴らしいものでしたが、なにせポルノなものですから、すぐに脱いでしまいます。残念。おっぱいは普通でした。

そんな踊りを見せられるボブとシャーリーは悲壮な表情で「パニックになるな、必ずチャンスは来る!」「私コワイわ……!」みたいな会話を交わしています。なんでだよ。

六人目、「闘牛士を愛した女」の霊。フラメンコですね。真っ赤なドレスが情熱的なダンスに映えます。すぐ脱いじゃいますけどね! おっぱいは普通でした。

七人目、「蛇と煙と炎を愛する女(?)」の霊。フラダンスですね。おっぱいは大きく美しい。蛇を愛するという設定のためか、時折ガラガラヘビの映像がインサートされます。

彼女を見ていたミイラ男くんがしみじみと語り始めます。
「クレオパトラみたいだ……彼女も蛇が好きだった」
そのまま生前の思い出を語るミイラ男くんの話を聞いてあげる狼男クン。「ワオーン(蛇はコワイヨー)!」と吠える狼男クンを、肩を叩き慰めるミイラ男クン。

急にクリスウェルに呼び出しを食らい、コワゴワ近づく二人……。女達が踊る姿をスクリーンの端で楽しそうに眺めている二人……。耳打ちしあい、肩を組み合い、二人で楽しそう……。なぜでしょうか、はしゃいでいる二人がだんだん可愛く見えてきてしまいます……。

そちら方面もカバーとは、ポルノとして隙がない構成ですね。後は隙しか無いですが。

そのときです。ボブがシャーリーに話しかけます。「縛られている手が外せそうだ!」
シャーリーは応えます。「怖いわ、こんなことになったのは貴方のせいよ!貴方なんか嫌いよ! 元カレならこんなことにはならなかったのに!

え……? このタイミングでそれを言うの……?

3 終盤戦~観客の心が一つに……!「早く終わってほしい」

八人目、「骸骨と踊る花嫁」の霊。結婚初夜に相手を殺してしまった女性らしく、ウエディングドレス姿で骸骨とともに現れます。そして例によってすぐ脱ぐ。おっぱいは普通でした。

この方のダンスなんですが、ただひたすらに上半身を揺らし、その勢いでおっぱいを揺らすだけという、後半のこのタイミングで受け止めるのはかなりつらいものでした。勘弁してくれ、せめてダンスで楽しませてくれ……そんな我々観客の祈りも虚しく、スクリーンではおっぱいが揺れていました。

ここでクリスウェルがシャーリーに語りかけます。
「お前は美しいので、我々の仲間にしてやろう!」(棒読み)
「キャーーーーーー!」(棒読み)
「それとも狼男への褒美としてくれてやろうか!」(棒読み)
「ワオーーーン(うれしーーー)!」
「キャーーーーーー!」(棒読み)

見ていたお客さん、大爆笑

すると今度は闇の女王が「あの女は私にくれると言う約束だったはず!」

クリスウェル「うるさい! 私は闇の帝王だぞ! 私が全て決めるんだ! 私の言うことは絶対なのだ!」

闇の女王「でも時間がありません! あの月が沈めば私達は……!」

クリ「そんなことより続きはどうした! 続き! ほら早く!」

何というパワハラ。鬼○辻○惨かな?

九人目、「ゾンビ女」。ゾンビダンス(?)を披露してくれます。ゾンビなので最初から裸です。おっぱいはぺったんこでした。

このゾンビダンス、ゾンビのように緩慢に両手を上げ下げし、ゾンビのようにトボトボと歩く……からの、微妙なステップでひたすら円を描くように移動するだけ……という、ダンスとしても全く見どころのないものでした。いや、ですからね? この観客が疲れ切っているタイミングでそれはないでしょう? つらい

最後、「羽飾りに殉じた女(???)」の霊。ええと、何ダンスなんでしょうか。ちょっとわかりませんでした。

その名の通り、ヒラヒラと美しい衣装に身を包んで登場し、即脱ぎ捨ててしまいます。だってポルノですからね。おっぱいは大きめ、きれいな形でした。

ん? 今、ちらっと映ったミイラ男くんと狼男クン……キミら、なんで手をつないでるんですか!? しかも恋人つなぎ!

やっぱりか!

このダンサーの方は監督のお気に入りなのか、やたらアップで映されます。大画面、高画質で映し出される美女のおっぱい。冷えていく観客の心。

つらい。

ここでクリスウェルがようやく告げます。
「そろそろ時間だ、女王よ、あの女を好きにしていいぞ」

あれ、狼男くんは? あんなに喜んでいたのに……。

女王は喜々としてシャーリーに近づくと、ひとしきり踊った後(脱ぎません)、シャーリーのシャツのボタンを外す! 豊満な胸があらわに! ブラのつなぎ目を切る! アブナイ!

ここでボブが縛られていた縄から脱出し、シャーリーを助けようとした……その瞬間、狼男くんに後ろから殴られて昏倒します。情けない、そんなことだから元カレのほうが良かったとか言われるんですよ

と、ここで唐突にまばゆい光のカットインが入り、あわれ帝王たち闇の眷属はまとめて骨と化してしまうのでした

いや、あのですね。

朝が来たからってことなんでしょうけれども、映し出されたのが明らかにただのまぶしい光なのはおかしいだろ! せめてもっと太陽らしいもんにしろ! 演出の勉強、イチからやり直せ!!!

二人はそのまま気絶、気がついたときには医者や刑事に囲まれていたのでした。

ここでシャーリーがボブに話しかけます。「愛しているわ、ボブ」

は??????????????

お前さっき、「元カレのほうが~」とか言ってたじゃん!!!! だれだよ、こんな脚本書いたのは!

あ、エド・ウッドでしたね。ではしょうがないですね。

4 戦い終わって

というわけで「死霊の盆踊り」、いかがだったでしょうか?

おそらくこの記事をここまでお読みになって「よし、見てみよう」となった方は皆無だと思います。

しかしながら、なんだかんだ言ってここまで語り継がれる作品です。それはやはり、この作品に何かしら不思議な魅力というものがあるからではないでしょうか。

間違いなくサイテーの映画の一つですし、そもそも映画と名乗るのもおこがましい。でも一種の「味わい」はたしかに存在する

昨今のマーケティング至上主義のもとで作られた映画モドキよりは遥かに……いやスミマセン、やっぱり擁護できませんねコレ

まあ少なくとも、見終わった後に謎の達成感は得られることでしょう。

4月にはブルーレイもでるそうですし、貴方も一度ご覧になってはいかがですか? おそらく二度と得られない映画体験が待っていますよ(「二度と得たくない」の間違いでは?)

あ、ちなみに。

そのあと続けてみた「死霊のえじき」HDリマスター版、コレは文句なしでした。「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」「ゾンビ」に続く、ロメロ監督の初期ゾンビ三部作の最後を飾る大傑作が、高画質でよみがえる! あんなシーンやこんなシーン(お察しください)も全て高画質!

これは完璧にオススメです。未見の方はぜひどうぞ。

◇いじょうです◇

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