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駆け出しのスタートアップが壁にぶつかりながらも生き残れた理由

こんにちは、タイミーの小川です。

今日はまず、この場で嬉しいご報告させてください!
おかげさまでこの度、タイミーはリリースから5年でワーカー数500万人を突破しました(2023年6月時点)。多くの方のお力添えをいただきここまでこれて、嬉しく思っています。本当にありがとうございます!

今回は初期の振り返りも含めて「タイミーのサービスローンチ直後の紆余曲折」について書いてみようと思います。

ローンチしたものの、求人を出してくれる企業がいない問題

幾度にも渡るビジネスモデルの検証と熱い仲間の尽力のお陰で2018年夏にようやくタイミーをローンチできました。

大学の人脈やPRtimesのリリースが少しバズったりして3000人程度の事前登録を集めてのリリースとなったのですが、ずっと右肩上がり成長だったわけではありません。実はスタート直後も危うい時期があり、大きな課題を抱えていました。

それは、求人を出してくれる事業者がいなかったこと。

サービススタート時点で利用が決まっていた企業は、たったの3店舗ほど。当初は「渋谷・新宿エリア限定のサービス」としてはいたものの、いくらなんでも少なすぎました。

現在は、働いてほしい事業者が求人を公開し、ワーカーが仕事に申し込んで即マッチングできるサービスです。

しかし、当時のタイミーは、ワーカー自身が「空いている時間」をアプリに投稿し、その時間枠に対してお店側から「うちで働きませんか?」とアプローチするUXを採用していました。つまり、働く場所がなければ、サービスとしてはまともに機能しなかったわけです。

知り合いのベンチャー企業に声をかけて、無理やり求人を出してもらったり、当日までに埋まらなそうな案件には、自分が申し込んで働いてみたりもしました。

サービス向上の目的……といえば聞こえはいいかもしれませんが、正直サービスのトラフィック数を少しでも増加させたかったのです。

とはいえ、いつまでもこんなことを続けるわけにはいきません。「とにかくタイミーのワーカーが働ける場所を増やさなければ!」

こうして法人営業の日々が始まりました。

僕自身も、店舗に飛び込んでお店の人と関係性を作ったり、業界のコミュニティに参加してつながりをつくったり。とにかくやれることをやっていきました。とはいえ、全業界全企業に対して、闇雲に飛び込むわけにもいきません。

暗雲が立ちこめる中でそれを晴らしたのは、初代営業部長の岡田正靖さんでした。

「好きだから」を信じて、飲食業界にアプローチ開始

導入店舗数を3店舗から拡大すべく戦略的に業界を絞り込む必要がありましたが、最初に白羽の矢を立てたのが飲食業界。さまざまなドメインを検討したものの、最後は岡田の「おれ、飲食がいちばん好きなんだよね」という言葉が決定打になりました。

ずいぶんといい加減な決め方だと思う人もいるかもしれません。僕自身「え、何それ?」ってツッコんだような気もします(笑)。

でも、このときの僕は「数字分析した戦略性」よりも、営業をする当事者である岡田の「好き」を優先すべきだと信じました。

何より、ビジネスの初期フェーズでは、とにかくモチベーションの有無がものを言います。どうせなら、熱意を持って積極的に攻め込んでいける分野からはじめるほうがいい。

僕には過去、関心のないファッション領域で起業し、最後までパッションを保ちきれなかったという苦い経験がありました。だからこそ、岡田には同じような思いをしてほしくなかったのです。

マッチングしたはずなのに、ドタキャンされる問題

法人営業の努力が実り、2018年8月末時点では登録店舗数は58店にまで増えました。これがさらに86店(9月)→119店(10月)→171店(11月)と伸びていくことになります。

一方で、ワーカー数もそれに劣らない成長を見せてくれました。3480人(8月)→6480人(9月)→1万1072人(10月)→2万4094人(11月)と順調に数を伸ばし、マッチング件数そのものは安定した右肩上がりを描いていました。

……ほっとしたのも束の間(もちろん、まだまだ成長しなくてはいけないんですけどね!)。

このとき、とにかく大変だったのが「無断欠勤」の問題です。当初は、興味本位で登録したワーカーもたくさんいたため、その日のその時間に働くことになっていても、平気でアポを忘れてしまうというケースが少なくなかったのです。

「おたく経由で頼んでいたバイトが、18時になっても来ないんだけど!」

時間になると店長さんから電話がかかってくることもしばしば。そして毎回恒例だったのは、電話を切ったあと、メンバーみんなで顔を見合わせて、一斉にじゃんけんをすること。

負けた従業員が代わりに、バイト先に働きにいくのです。

今思えば、どれだけ泥臭かったんだろうって感じですよね(苦笑)。

当時はそれでなんとかやりくりできていました。しかし、導入店が増えてくると、なかなか人海戦術で対応するわけにもいかなくなる。

みんな自分の本業務に忙殺されていたし、代行どころではなかったのです。そのうち「バイト代行はクレーム電話をとった人の役割」というような暗黙のルールができ、電話が鳴るたびに変な緊張感が走ったりもしていました。

でも、驚くことに、「無断キャンセルの代わりに働きにきました!」と店舗に出向いても、お店の人に怒鳴られた経験はまったくありません。

飲食店側も、まさかバイトのマッチングサービス会社の人が、代わりにシフトに入りにきてくれるなんて期待していないからです。しかも、駆けつけたタイミーの従業員は、高い熱量で全力で穴埋めをしてくれる。本来のアルバイトよりもパフォーマンスが高かったりするのです。だから、結果的にお店は、タイミーに対してよい印象を持ってくれることのほうが多かったと感じています。少なくとも、無断キャンセルのせいで契約を打ち切られたケースは、ほぼなかったと思います。

もちろん、サービス運営側として無断キャンセルは防ぐ必要はあります。しかしサービス駆け出しの当時、僕らがフォローに入ったことで、現場のリアルも知ることができたし、お店の方たちとのつながりが深まっていくことがとても嬉しかったことを覚えています。

ワーカーさんたちが安心して働けるように、レビュー機能を実装

こうした無断キャンセル問題を、現在最小限に保っているのが、事業者とワーカーの「相互評価システム」です。タイミーではワーカーと事業者による相互評価が可視化されるようになっています。これはサービス設計段階から僕が「必ず搭載する」と決めていたシステムの1つ。

アルバイトや派遣の仕事における最大の「負」の1つは、現場の雰囲気や仕事内容が事前によくわからないこと。つまり「不透明性」です。ブラックバイトなどの問題も、こうした構造から必然的に生まれたものだと考えられます。

これらを解決するのが相互評価システムです。職場に対する働き手からの過去の評価が可視化されていれば、ワーカーさんは安心して仕事を選べます。

「働きたい時間」と「働いてほしい時間」とをマッチングするサービスである以上、「働く」に関わるあらゆる問題を解決し、ワーカーさんたちが安心して働ける環境をつくることは、僕たちの使命だと思っています。

タイミーはただの「マッチングサービス」ではない

相互評価システムについては、今でも多くの事業者から質問されます。

タイミーがスタートしたばかりの頃は、お店の人に「ワーカーさんからの職場評価がアプリ上に開示されます」と伝えるとものすごく嫌がられました。「悪い評判を書かれたらどうするの?」「『ここはブラックバイトだ』なんて広まったら、御社は責任をとってくれるの?」というわけです。

中には「なぜこんな面倒なシステムを入れているのか? 評価システムがなければタイミーを利用したいのに……」と思ってくださる事業者もいるかもしれません。

しかし、タイミーが目指すのは「『働く』を通じて人々の時間がより豊かになっていく世界」

ただいたずらに事業者を増やせばいいわけではありません。

その意味では、この評価システムに対する事業者の理解を得ていくことも、タイミーの重要な姿勢なのです。

だから、当時も現在も、この仕組みに懸念を示している事業者の担当者には、胸を張ってこう伝えるようにしています。

——いや、それは違います。
もしワーカーから低評価がついてしまったのなら、その評価に向き合って改善していかなくてはいけないと思います。
そのサイクルを回していかないと、人手不足の時代に勝ち残っていくことは難しくなると思います。

タイミーのレビューがきっかけで、働きやすい職場が生まれる

以前、ある大手企業のイチ事業所がタイミーの利用を決めてくれたことがあります。そこは、同社の中で最も離職率が高い事業所でした。

タイミーが導入されると、その職場にはワーカーからの評価がどんどんつけられました。内容はネガティブなもの。しかも単発バイトである以上、コメントはいっさい忖度なし。遠慮なく低評価コメントがつけられていました。

それを横目で見ていた僕たちは、内心では戦々恐々としていました。担当者がカンカンに怒り出すのではないか——。

しかし同社は、これらの評価を正面から受け止め、現場で働いている従業員にヒアリングをする、担当者自らワーカー目線で働いてみるなど、職場改善に向けた具体的なアクションを起こしてくれました。結果、その事業所の離職率は大きく低下。「残業時間が減った」「作業効率が上がった」という声や、「相互評価の仕組みのおかげで、いい緊張感をもって働けるようになった」というフィードバックをいただくことができたのです。

「相互評価システムを入れる」という自分の判断が間違っていなかったと思うと同時に、ちょっと大げさかもしれないけど、タイミーのおかげで「働きやすい職場」がまた1つ増えたと誇らしい気持ちになったのを覚えています。

もちろん、すべての事業者がこれを実践できるわけではありません。厳しい評価がついても、それを見て見ぬ振りをする会社だってあるかもしれません。

しかし、今後さらにタイミーを利用する事業者が増えたら、どんなことが起きるでしょうか? 現在、タイミーを導入しているのは46,000社・130,000拠点(2023年6月時点)ですが、ワーカーさんに働いてもらうために、これまで以上に働きやすい環境をつくろうとするはず。

タイミーが海外に進出して、世界中の企業でタイミーが使われるようになったら……? ますますその意識は働くはず。

さらに夢は広がりますが、日本だけでなく「働く」の課題は世界共通です。

そうなれば、ブラックバイト撲滅どころではありません。世界中の労働環境を改善することができます。「タイミーがなかった世界」と「タイミーがある世界」を比べたとき、後者のほうが幸福の総量が高いのは間違いありません。僕たちはまさにこういう仕事に関わっていることを誇りに思っています。


今回もついつい熱く語ってしまいました(笑)。やっぱり苦労した分、たくさんの想い出があって……。ここまで読んでいただいてありがとうございます!

次回は、僕が尊敬してやまない大先輩について話したいと思っています。楽しみに待っててもらえると嬉しいです。

それから、タイミーは随時メンバーを募集しています。ぜひ以下からエントリーしてください!!

新卒採用も開始しました。気合の入ったサイトなので、ぜひご覧ください!


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