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人類は3種類の人間に分かれた #06


 僕は原口に聞いた。
「ところで、何で、君はこんなに
僕に親切にしてくれるんだ?」

「前にも言ったが、電脳世界で俺
がやってきた事を誰にも喋らない
でくれたら、それでいいのさ。
 もし、仮に君が、この世界で成
功したら、後でお返しをしてくれ
たら、それでいい。
まあ。期待はしないがな」

「俺は、これで帰るよ。何かあっ
たら、呼んでくれ。アレクサに話
掛ければ、すぐに俺につながる」
 そういうと、原口は去って行っ
た。

 原口の話では、AIによって、
人々の暮らしは支配されているら
しい。それの意味するところは、
今の僕には理解できなかったが、
追々分かってくるという。

 人類は、AIが作り出した、電
脳人とこの地球の表面に暮らして
いる地球人の他に、火星へ移住し
た、火星人がいるらしい。
 火星は、地球人が移り住む、植
民地になっていた。

 AIが作りだしたものは、先ほ
どのUFOもそうだが、他に、数々
の驚くべきものをつくり続けてい
た。
 人類が解明できなかった、重力
や、エネルギー問題など、数々の
問題に解を出してきた。

 その中には、夢物語でしかない
と思われていた、時間旅行までも
可能となったと云う。

 ただし、時間旅行については、
過去へは行けるが、未来には行け
ないという。理論的には未来へ行
くことも可能だが、法律によって
禁止されているという。

 時間旅行を行う、旅行代理店が
街のあちこちにあるようだ。

 僕はその話に、大変興味を持っ
た。この世界で勉強し、数々の技
術を吸収し、タイムマシンで、過
去の世界に行って、事業を起こせ
ば、ぼろ儲けじゃないか? と思っ
た。

 AIに支配されるこの世界は人口
もコントロールされていた。

 AIが支配する以前の世界は、
人口爆発による環境破壊と、食糧
不足により、人々は苦しんでいた
そうだ。

 地球に暮らす人間の崩壊も時間
の問題だったようだ。
 そんな問題も、AIが出現して
からは、一遍して、全て解決され
たようだ。

 人々はAIの支配下に、コント
ロールされていた。
 AIは地球上の人口を適切に保
つため、人間の選別を行った。

 それは、すなわち、火星への移
住や、AIが作り出した電脳世界
への割り振りや、過去の世界への
送り出しだった。

 過去へ行く場合は、一般の旅行
者と、二度とこの世界には戻って
これない、定住者に分かれていた。
 旅行者は、過去から、現代に戻っ
て来れるが、定住者は一方通行の
片道切符だ。

 自らが希望して、定住者に成る
者もいるが、そのほとんどは、囚
人だと、原口は言っていた。

 それからの僕は、この世界の技
術を身につけるため、寝食を忘れ
て勉強した。

* * *

 僕が電脳世界から、この実世界
へ来て、早くも4年が経ち、27歳
になっていた。
 あれから、いろいろな事があっ
た。
 大手アパレルメーカーに入社し
た僕は、研究開発部門へ配属にな
り、そこで、たくさんの技術を学
んだ。
 もちろん、AIに助けられなが
らだが……。

 ある程度の技術を身に着けた僕
は、いよいよ、過去の地球へと、
旅立つ準備ができた。

 待っていろよ、過去の世界。
僕の技術で、世界を一遍させて
やる。
 僕は、新たな希望と夢に燃えて、
新天地の21世紀へ旅立つことにし
た。

つづく

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