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【英語論文解説】デザイン思考からアート思考へ

今回のTTC(法政大学タナケンゼミ)では、アート思考についての論文を読みました。デザイン思考の足りない部分を補ってくれるアート思考とは、何なのでしょうか。簡単にまとめていきます。

英語論文はこちら

視点1:デザイン思考とは何か

今回の論文によると、デザイン思考について広く受け入れられている共通の定義はないそうです。そのため、いくつか定義が紹介してあったのですが、なかでも僕がいちばん分かりやすいなと思ったのは以下の定義です。

デザイン思考は、観察、協働、素早い学習、アイディアのビジュアル化、プロトタイピング、複数のビジネス分析を同時並行で行うことに重点を置いた人間中心のイノベーションプロセスである。

一度デザイン思考を学んだことがある人は、納得のいく定義だと思います。

デザイン思考とマーケティングの広告デザインは何が違うのかについて、今回の論文では以下のように書かれていました。

マーケティングは、人に商品を欲しいと思わせるように広告やパッケージをデザインする。それに対して、デザイン思考は、人が欲しいと思う商品そのものをデザインする。

視点2:デザイン思考の限界

しかしながら、そんなデザイン思考には限界があるというのが、今回の論文の注目ポイントです。

良くも悪くも、デザイン思考はデザインの「直観的」な部分を取り除いて、すべてをテンプレート化してしまったというのです。

デザイン思考の限界1つ目は、ユーザー中心アプローチであると述べられています。たしかにユーザーは大切であるが、ユーザーエクスペリエンス第一主義が、アイディアのブレイクスルーを阻害しているというのです。

デザイン思考の限界2つ目は、デザイン思考によって生み出されたアイディアが上層部になかなか受け入れられないことであるといいます。


視点3:アート思考とは何か

最近出現してきたデザイン思考の新たな側面が、アート思考だとこの論文には書かれています。

デザイン思考が「AからA+」を作るものだとしたら、アート思考は「AからB」を作るであり、ユーザーエクスペリエンス(UX)の制約から解放をもたらすものであるというのです。

そんなアート思考には、次のような特徴があります。

- 役割の明確化
- マイルストーンを示す
- スプリントと呼ばれる時間管理
- 上層部以外のグループによるファシリテーション

アート思考は、理想的な目的地をみんなで描いて、そこに至るまでの想像的な戦略を実行に移すことなのです。

視点4:アート思考をケーススタディで理解する

今回の論文の特徴は、なんと言ってもこのケーススタディです。デザイン思考とアート思考がGSDという団体を財政上の危機から救ったというお話です。

GSDとは、グラフィック・スタジオ・ダブリンのことで、アイルランドにあるアーティストが集まって版画を作成するスタジオです。

このスタジオはバブル崩壊で借金を抱え込み、大変な状況でした。不景気でアートが売れなくて収入がないのに借金の返済をしなければいない、まさに八方ふさがりの状態だったのです。

そこでどうしたかというと、ワールドカフェというファシリテーション手法を用いたワークショップを行って、たくさんのメンバーで収益を生むプロジェクトのアイディアを出し合った。

そのうちのいくつかを実現することで、驚くべき成果をあげて収益を改善し、復活することができたのです。

この解決策は非常に面白いので、興味がある方は原文を読んでみることをおすすめします。

今回は、アート思考やクリエイティブへの興味をかきたててくれる論文でした。興味があるかたは、こちらの本などを読んでみてはいかがでしょうか。論文の中でも紹介されていましたよ。


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