たぐちすず

アラサーの女。文章を書くのが好き。「闇深いね」とよく言われます。

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アラサーの女。文章を書くのが好き。「闇深いね」とよく言われます。

最近の記事

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コンサータとストラテラ。新しい私にこんにちは。

変わってしまった。つまらない人間になってしまった。あんなに人生を謳歌していた私はどこへ行ったのか。 この目で見る世界は、みんな生き生きとしていて眩しかったのに。今となっては「赤は赤で、緑は緑」だ。事実をそのままに受け取るだけで、見聞きしたものを面白がる意欲がなくなってしまった。 もしかしたら、薬を変えたからかもしれない。数年間変わらなかった処方を、半年前に変えてもらったのだ。 ーーーーー 私は新卒1年目の25歳の時に、注意欠陥・多動性障害(ADHD)と診断された。自閉

    • ベッドの上から明日への一歩を

      「頑張らなければいけない?」 そんなことないよ。眉尻を下げながら答えるあなたに、そう言うと思ったよと突き放す事しかできない。 私は、頑張ることができなくなった。 仕事を辞めた。たった3か月で。 決断する前に出社拒否を始めてしまったから、私の机は1か月ほど主人を探していたことだろう。残念ながら、もう二度と再会することはない。 天井ってこんな色だっけ。 外に出なければいけないという義務が無くなって、余裕が生まれたのだろうか。カーテンの隙間から差し込む光の眩しさにも、新鮮さ

      • Perfume「Dream Fighter」のイントロのテレレレレについて

        Perfumeを知っていますか。 知ってる? じゃあPerfumeの「Dream Fighter」のイントロは? https://www.youtube.com/watch?v=rBX5YGPNDbs とりあえず最初の2秒だけ聴いてほしい。 私はこのDream Fighterという曲が大好きで、特にイントロには助けられてきた。おはようからおやすみまで、私をいつも支えてくれている。 曲が最高だと知っているから、イントロのテレレレレレ…でキターーー!!と叫びたくなる。鼓

        • あなたもわたしも中二病

          なんだよ。みんな普通の顔して社会に出てさ。 知ってるんだよ。 会社では部下からそこそこ慕われてそこそこ大きな仕事も任されるようになって休日には気が進まなくても子供を連れてアスレチックパークに行ったりもするけど、実は家族が寝静まってから18歳の大学1年生の女子のフリしてオンラインゲームに勤しんでること。 知ってるんだよ。 学校ではカーストの上位まではいかなくてもそこそこ人望もあって上手く立ち回っていじめる側にもいじめられる側にもならなくて成績も地元のそこそこ良い学校に進学で

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        コンサータとストラテラ。新しい私にこんにちは。

          マチュピチュの養子になりたい

          中学生くらいから、ずっと胸に秘めていたことがある。 それは、ペルーに行ってマチュピチュを抱きしめたいという夢だ。 何を言い出すんですかお嬢さん、マチュピチュは抱きしめられませんよ、だなんてそんなことは分かっている。いいから黙って最後まで読んでほしい。 マチュピチュはペルーにある世界遺産だ。15世紀のインカ帝国の遺跡で、1911年にアメリカの探検家ハイラム・ビンガムが発見した。ペルーからボリビアに存在したアンデス文明は文字を持たなかったため、解明されていない謎が多くある。

          マチュピチュの養子になりたい

          自分を愛しく思ったら、人生観が変わった

          結局、私は私を嫌いになりきれない。 ーーーーー 「どうでしたか?」 お決まりの台詞。何がどう、なんだとか型通りの質問ですねとか後になって思うことはある。でも残念ながら、話すことリストを握りしめた私にそんな余裕はない。 「落ち込もうとしても、うまく落ち込めないんです」 何度も脳内でリハーサルした台詞。小さな達成感が広がる。 カチャカチャとキーボードを鳴らす音が診察室に響く。先生に、私はこう続ける。 「落ち込み始めると、このまま行くと泣いてしまうなと以前までは分かっ

          自分を愛しく思ったら、人生観が変わった

          あなたのたくさんの愛に甘えないよう、強くありたい

          いっしょにいると、心地よいと思える人がいる。 穏やかで、優しさに満ちている人。 満ちている状態、それは豊かであるということ。確かに、愛情豊かという表現がとても似合う人だと思う。 自分の笑顔にちょっと自信がないらしいけれど、そんなところも愛おしく感じるくらい、私はこの人が好きだ。 お互いに一生嫌いにはならないんだろうな、というちょっとした自信がある。だから彼の前では自由でいられる。笑い合えば私の身体は薄いピンクのふわふわした雲で包まれ、幸せで、ずっとここにいたいと思う。

          あなたのたくさんの愛に甘えないよう、強くありたい

          担任教師に「お前が泣いてくれれば皆の心は動くんだ」って言われた

          涙を流す女は、好きですか? こんにちは、田口鈴です。 私の予想ではきれいなおねえさんは皆好きだが、ただただ涙を流すアラサー女は嫌いだと思う。 また田口の自虐が始まったと思ったでしょう。違うね。なんてったって田口の涙は人の心を動かす力を持っているからね。 その確信を得たのは中学2年生の時のこと。 私は校内合唱コンクールのクラス委員だった。その頃はまだ優等生と呼ばれていた時期で、何かを仕切ることを頼まれたり、自らその役目を担うことも多かった。 それなりに仕切って、それなり

          担任教師に「お前が泣いてくれれば皆の心は動くんだ」って言われた

          嫉妬する自分を責めるあなたに読んでほしい

          好きな人をいつの間にか嫌いになっていることがある。好きじゃないの?と聞かれたら、可愛さ余って憎さ百倍かなと答えていた。ことわざの意味も、なぜ嫌いになるのかも、以前の私はよく分かっていなかった。 1年ほど前に、ある芸能人のファンになった。言動に知性を感じたり、礼儀正しいところに惹かれた。テレビで見かけるたびに好きになっていった。 しかし、最近その気持ちが曇ってきた。 クイズ対決をしていたらその人の敵を応援しているし、好きだった知的な発言も裏があるのではと考えるようになってし

          嫉妬する自分を責めるあなたに読んでほしい

          傷つきやすいあなた、こんな癖ありませんか?

          私には直したい癖がある。物事を浅く、表面だけでとらえてしまう癖。 最近思う。私の傷つきやすいガラスのハートはこの癖が生み出しているのではないだろうか。 例えば、学校で先生に叱られたとしよう。 最初に感じることは、”怒られた”という事実だ。そして怒られたら、誰だって落ち込んだり悲しかったりする。悔しいという感情も生まれるが、それはまた次の感情だ。 私は怒られた→辛いな、ここで考えることを止めてしまう。辛い出来事をその後も考え続けたら、辛さが増してしまう。考えることを放棄し

          傷つきやすいあなた、こんな癖ありませんか?

          高校5年生、過去とはお別れ

          「卒業おめでとう」 何がそんなにめでたいのか。泣いたり笑ったり、この時期は騒がしい。 卒業したくてもできない人だっているんだよ。とは言ったものの、お前は卒業したいのかと聞かれると言葉に詰まってしまうが。 今日は私の高校も卒業式らしいね。今頃みんな証書を受け取っているだろうか。ベッドに横になりながら、この3年間を思い返す。 目を開けると、もう夕方だった。いつの間にか寝ていたらしい。だいぶ陽も長くなって、まだ外は明るい。 枕元の携帯が点滅していることに気がついた。どうせメ

          高校5年生、過去とはお別れ

          学年一の優等生と、ゴーストライター

          本をたくさん読んだからといって、文章力が上がるわけではない。 何でもそうだが、ゴールをはっきり意識して取り組まなければ、そこまで到達することは難しいだろう。部活だったら大会優勝とか、仕事だったら個人売上100万とか。文章力を上げたいなら、意識して本を読むことでやっと、さりげなく表現されたコツなんかが見つかる。 小学生の頃、私はただただ読書が好きな女の子だった。 ーーーーー 「田口、今度の読書感想文コンクールに出てくれないか」 突然だった。先生は眉を八の字に下げながら

          学年一の優等生と、ゴーストライター

          空想色彩日記#1/タバスコの「赤」編

          ふと、好きだった人が好きだったものを見かけると、心臓がきゅっと小さくなる。懐かしい日々が押し寄せてきて、少し立ち止まる。 一緒に暮らしていた街に行くと、そんな瞬間がよく訪れる。よく待ち合わせ場所にしていた時計台とか、路地裏のパン屋さんとか、こだわっていた食器屋さんとか。 この前は、ふらっと立ち寄ったピザ屋さんのタバスコが過去を引き連れてきた。そう、あの人は「赤」が好きだった。 ーーーーー 「また、靴下脱ぎっぱなしにしてる」 そう言って深いため息をつく。後ろでパソコンに

          空想色彩日記#1/タバスコの「赤」編

          いじめと喧嘩。強さと弱さ。

          「そういえば一時期、かなちゃんと喧嘩してたよね」 まいこはそう言ってふふっと笑った。 私はショックだった。 喧嘩?あれは、いじめでしょう?なんで笑っているの? 覚えていないのか、それともまいこの言うとおりあれはただの喧嘩だったのか。混乱しながら、私は口角を無理やり上げた。あの日々を思い返しながら。 ーーーーー 小学5年生の秋。1年前から通っているテニススクール。いつも通り素振りをしていると、隣で同じようにラケットを振るかなちゃんがこう言った。 「力を持っている子を敵

          いじめと喧嘩。強さと弱さ。

          諦めることを覚えたら、一つあなたに近づいた気がした

          「もう私は諦めてるからさ」妹は淡々と続ける。「お母さんはああいう人なの」。 私はうーん、と小さく唸ることしかできなかった。納得できなかったから。 母がどんな人かは知っている。ただ、母と上手に付き合っていくために諦めるという選択をすることは、私の中であり得なかったのだ。 ーーーーー 私は新卒で入った会社を、わずか3か月で休職した。精神的に疲弊してしまい、新卒1年目の夏、実家に戻ることになった。 勤務していたところは地元から飛行機で1時間半はかかる距離にあったが、心配した

          諦めることを覚えたら、一つあなたに近づいた気がした

          夢の中でさえ、空を飛べなくなってしまった

          肩にもたれ、寝息を立てる君。 いつもの席で君は、あの頃のように私に身を預ける。 本当に寝てる?声には出さない。 外は真っ暗。風景に変化がない高速道路。今どこを走っているかも分からない。 窓に映る私の顔。戸惑いながらも、大人になった自分を保とうとしている私が見えて、そっと目を逸らした。 ーーーーー 「付き合っちゃう?」 大学1年生の4月、入学したてで浮き足立っていた私たち。ふわふわしたまま恋人になることを決めた。 早く彼氏が欲しかった。シナリオ通り。いやな女。 彼は

          夢の中でさえ、空を飛べなくなってしまった