あなたもわたしも中二病
なんだよ。みんな普通の顔して社会に出てさ。
知ってるんだよ。
会社では部下からそこそこ慕われてそこそこ大きな仕事も任されるようになって休日には気が進まなくても子供を連れてアスレチックパークに行ったりもするけど、実は家族が寝静まってから18歳の大学1年生の女子のフリしてオンラインゲームに勤しんでること。
知ってるんだよ。
学校ではカーストの上位まではいかなくてもそこそこ人望もあって上手く立ち回っていじめる側にもいじめられる側にもならなくて成績も地元のそこそこ良い学校に進学できるくらいには良くてさ、でも実は誰かの一番になりたくてこっそり練習している自撮りで写真フォルダがいっぱいなこと。
なんなんだよ。みんな器用だよな。表ではそんな素振り一切見せないもんな。
でもさ、私たち秘密はあっても悪いことしているわけじゃないよね?
もちろん人に迷惑をかける秘密は暴かれて罰せられるべきだけど、そうじゃないのならこっそり楽しむ秘密は持っていて良いはず。
言いたいことは一つ。
もし秘密を知ってしまったらそっとしておこう、だ。
中二病なんて言葉があるが、私はいまだにその病から抜け出せない。いや、この世に産み落とされた日からどこかおかしい。
5歳、買ってもらったブロックのおもちゃで作り上げたのは筋肉ムキムキで9等身の異性。あるだけの知識を振り絞り、恋愛という未知の学問を彼相手に検証していた。
7歳、神のお告げに憧れていた。でもいくら待ってもお告げは聞こえてこない。自分には不思議な力が宿ったと思い込むことにした。
何かに導かれて(いることにして)、目はうつろ(ただ細めているだけ)、右手は勝手に引っ張られ(自ら差し出して)、神が眠る箱にたどり着いた(実際は救急箱)。
幼少期で既にこれ。IKKOさんも驚きすぎて「どんだけ…」と小声で呟くことしかできないだろう。
中学生になり、携帯電話も活用できるようになった。
もちろんメモ機能の中には誰にも見せられないようなファンタジーがぎっしり。
ある時、部活仲間のBちゃんに携帯を奪われてしまった。
しまった。油断していた。
最新のメモは「5年後のわたしへ」。
未来の自分を鼓舞するポエムだ。5年という遠くない未来を選ぶなんて、ニクイね三菱。
私の人生もここで終わりか。
1分も経たずに、Bちゃんは携帯電話を返してきた。
「そういえばさ、隣のクラスのさ〜」なんて話し始めたから、どうやら見なかったようだ。
季節も変わり、部活の休憩中は暖房の前でおしゃべりすることが恒例になっていた。
Bちゃんが「てかさ〜、」と話し始める。
「携帯のメモに未来への自分にメッセージ残す人どう思う?」
ちょっと待ってお姉さん。今何を?
「ありえないよね〜(笑)」
これがお前のやり方か。ピンポイント攻撃。
何か月前の事件を引っ張ってきたのか。そのネタ温めすぎて低音火傷してない?
他の子は「何それ〜」と言うだけですぐに他の話に変わった。
Bちゃんもその話について行く。置いてけぼり私。手足が冷えてきた。え?ここで息絶える?
もしかしたらBちゃんは私がいないところで馬鹿にしていたのかもしれないが、そのあと一度もポエムの話は出さなかった。成人してから会った時も何も言ってこなかった。
変化球すぎて私も上手く対応できなかったが、皆さんも肝に銘じておいてほしい。
秘密にしていることは表に出したら恥ずかしいことだとわかっているから。
気持ち悪いと思ったとしても、誰しもそういう恥ずかしい部分は持っているはず。
お互い様。自分がされたら嫌なことはしない。
基本を守れない人が多すぎるから、今日から心がけよう。
最後に、14年前のわたしへ。
「どん引き〜!」
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