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あなたのたくさんの愛に甘えないよう、強くありたい

いっしょにいると、心地よいと思える人がいる。
穏やかで、優しさに満ちている人。

満ちている状態、それは豊かであるということ。確かに、愛情豊かという表現がとても似合う人だと思う。
自分の笑顔にちょっと自信がないらしいけれど、そんなところも愛おしく感じるくらい、私はこの人が好きだ。

お互いに一生嫌いにはならないんだろうな、というちょっとした自信がある。だから彼の前では自由でいられる。笑い合えば私の身体は薄いピンクのふわふわした雲で包まれ、幸せで、ずっとここにいたいと思う。


彼は私に、愛を与えてくれた。


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ずっと愛されたかった。泣きながら求める私に、母は赤ちゃん返りだとため息をつき、父はすぐ泣くのが女の悪いところだと嘆いた。決して愛されていないわけじゃない。ただ、愛よりも世間体を気にしてしまう環境にいた。

楽しそうな家族を見たり、笑い声を聞くと、涙が止まらなくなり拒絶反応が出た。


そんな時に、彼は言った。

「私があなたの母になり、父になり、望むなら兄や妹にだってなろう。」

私は慎重にシートベルトを外した。今この瞬間を、頭に、そして心に焼き付けなければならない。何でもないいつもの動作すら粗雑に扱えば、繊細に輝くその言葉たちが飛んでいってしまいそうだった。

愛がこぼれ落ちないよう、そっと地面に足をつける。言葉は用意されていたわけでもなく、彼はいつも通りの歩幅で前を歩く。どうしてこの人の子どもに生まれなかったのだろうかと過去を睨み、生まれてくる子どもは幸せだろうなと遠くない未来を羨んだりした。


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「人を認められる強さ、それも豊かさだよ」
きっとあなたはこう言って、また私の背中を押す。

私の心が、温かさで満たされていくのを感じた。

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