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保険業界の潮流 #75

今回の記事も前々回、前回に引き続き、2021年にNewsPicksでピックした記事を紹介したいと思います。

今回は、現在僕の仕事のメインフィールドである、「保険業界」に関する記事のコメントをご紹介したいと思います。

14世紀に北イタリアで誕生して以降、保険は社会生活や企業活動のリスクの移り変わり共に進化してきました。
今後も社会インフラとして必要とされる仕組みだと思いますので、これを機会に保険の世界にも興味を持ってもらえたらと思います。

皆様にとって何らかの参考になれば幸いです。

「保険業界」関連

【赤字】ライフネット生命を研究すれば「会計」がわかる
2021.6.5newspicks

生保は保険期間が長く、責任準備金の積立などもあり、契約獲得の初期費用を長期に亘って回収していくビジネスモデルなので、成長過程では、赤字になることが一般的です。EV※1がプラスであれば特に問題はないと思います。とはいえ、ホワイトレーベル※2事業参入などは、日本におけるネット保険の限界を表しているといえ、創業当初のビジネスコンセプトは見直しを迫られている状況なのかもしれません。

※1 EV(エンベディッド・バリュー:Embedded Value)とは、生命保険会社の企業価値をあらわす指標の一つで、生命保険会社が既に獲得した契約から生まれる将来利益の見積額(保有契約価値)と、貸借対照表に基づく既に実現した利益の蓄積額(修正純資産)を合計したものをいいます。
※2 ホワイトレーベル(ホワイトラベル:White Label)とは、「ある企業が生産した商品・製品を、他の企業が自社のブランドを使って販売すること」です。よく似た言葉で、OEM(Original Equipment Manufacturing)というものがありますが、ほぼ同じようなことと思って良いと思います。

【真相】SOMPOが「グーグル出資のAI企業」と組んだ本当の目的
2021.6.7 newspicks

今朝の日経の記事でも今後25年以内に自動車保険市場は現状の4割になると分析していました。あながち間違いではないと思います。自動車保険は損保収入の約半分を占めるので既存の保険会社にとってのインパクトの大きさは絶大です。AIの発達で、保険は事故が起こった後の補償から、事故そのものを防ぐ方向に移行していくと思います。保険のビジネスモデルが大きく変わっていく中で、先を見据えたSOMPOの取り組みは注目です。

【独自】火災保険料に水害リスク反映、都道府県ごと改め「地域別」保険料へ…23年度にも
2021.6.8 読売新聞

水害は地域によって明らかにリスクが異なるので、地域毎に保険料を細分化することは合理的だと思います。一方で、日本における保険の考え方は、相互扶助的です。少しづつの負担でお互い助け合うという意識が欧米などに比べると強いので、リスクの高い一部の契約者の保険料が上がり過ぎることを嫌う傾向にあります。基準を示すとのことですが、どのくらいの保険料較差まで許容するのかですね。金融庁の整理が注目されます。

三井住友海上がドレスコード廃止!「お堅い」イメージ一新なるか
2021.7.23 ニュースイッチ

多様性を社内に根付かせようとすれば当然の対応です。男性、女性という切り口でのドレスコードも今やどうなのかなと。このこと自体にニュースバリューがあるのが今の日本の現状と言えるのかなと思います。

「サイバー保険」需要膨らむ=テレワーク広がり、リスク増大ー損保業界
2021.8.1 時事通信

サイバー保険の需要は高まっており、保険会社にはその需要に応えていく責任があります。中小企業を中心にリスクを過小評価している場合も多く、リスク啓蒙や保険普及の活動にも力を入れていく必要があります。
その一方で、サイバーリスクはどこまで損害が拡大するのか、予測が難しいという問題があります。事故事例が少なく、統計的な処理ができないので、保険会社としてもあまり高額な補償の引き受けができません。また、そのため保険料も高めに設定しがちとなっています。再保険市場でもリスク分散がやりづらいという背景もあり、保険会社にとってもこれらの点がジレンマになっています。

痴漢冤罪、旅行キャラセルも補償=「少額短期保険」拡大ー保険業界
2021.8.22 時事通信

少額短期保険会社は、既存の保険会社が手を出しにくいニッチ市場をターゲットとするユニークな保険商品で既存の保険会社と差別化しています。
一方で保険料単価が低く、既存の保険会社のような仕組みでは利益が出しづらいという特徴があります。したがって、再保険を活用した独特なビジネスモデルを構築しているケースが多いように思います。
業界としての今後の成長はこのビジネスモデルを今後も維持できるのか、あるいはデジタル等を活用した新しい切り口でのビジネスモデルが生まれてくるのか、そういったことにかかっているのでないかと思います。
既存の保険会社が少額短期保険に参入する主な理由は、テストマーケティング等情報収集の意味合いが強いのではないかと思っています。

車保険料、安全運転データで割引 東京海上日動など損保業界で標準化も
2021.9.19 日本経済新聞

損害保険料率算出機構が参考純率化するという点がポイントです。個人の運転歴を保険料に反映させるという点をデフォルト化するということだと思います。
ノンフリート等級制度は事故歴を事後的に反映させ、保険料負担の公平性確保とモラルリスクを排除する仕組みですが、それを事前の仕組みとして取り入れようとするのが、このようなテレマティクスです。
自動運転車の普及を目前に、社会的コストである自動車事故をより減らしていく取り組みは社会ニーズにも合っていますが、保険会社の初期投資も大きく、今後のこのような自動車保険の動向はさらなる業界再編を促す可能性があると思います。

テスラ、「リアルタイムの運転行動」が価格を左右する自動車保険をテキサス州でスタート
2021.10.17 TechCrunch Japan

自動車が走るスマホになると、自動車事故の責任もメーカー側が負う可能性があり、自動車メーカーはこぞって自動車保険分野に参入し、自動車保険を自動車本体とセットで販売することになるでしょう。
そうなると既存の保険会社は自動車メーカーとどう手を組むかということでしか、この分野をマネタイズできなくなります。このメガトレンドを押さえているかどうかが既存保険会社の将来を左右します。

イーデザイン損保、顧客に合う担当者 AIでマッチング2021.10.14 日本経済新聞

この「事故対応担当者と話がかみ合わないと余計にストレスや不安を感じる」というのは、実際によくあることです。まさしく、お客様にとって、事故は非日常の出来事で、一部の方を除き、多くの方が初めての経験になります。
当然ながらこの時のために保険に入ったんだって、思いをお持ちなので、保険会社に対する期待も大きくなります。
したがって、事故の担当者との相性は大切だと思います。今後このサービスがどういう評価をもたらすか注目したいと思います。

損保ジャパン、カナダECと提携 保険をサイトに組み込み
2021.10.25 日本経済新聞

ショッピファイのようなプラットフォーマーやサービサーの付加価値を高めるような保険組込み型の仕組みの提供は今後益々増えていきます。デジタル化が後押しする仕組みです。自動車本体と自動車保険をセットにするような売り方も主流になります。保険会社には保険を単体で売るという発想の転換が求められています。

三井住友海上の挑戦―DXを通じた社会との共通価値創造へ お客さまに選ばれ持続的に成長するための新たなビジネスモデル
2021.11.1 JBpress

「大量の顧客データを持っていること」新型コロナや近年の気候変動による自然災害の多発化・甚大化を例に出すまでもなく、「これからの時代はよりリスクが多様化していくこと」を踏まえるとビックデータとリスクを組み合わせる保険ビジネスは今後最も発展性のあるビジネスとも言えます。しかし、それはより競争力を求められるということでもありますので、何を強みとするのか、保険会社各社のビジネスモデル再構築の取り組みが注目されます。

損保ジャパン、最短30分で保険金支払い AI審査
2021.11.29 日本経済新聞

損害保険は、かつては事故後の丁寧な査定対応、正確な保険金支払いを売りにしてましたが、今後は、事故をいかに未然に防くか、万一事故があった際にいかに迅速に補償するか、そちらの方に価値がシフトしていきます。多くの業務がAIに置き換わっていくので、より高付加価値の業務に人が当てられるようになります。事故現場で直接保険金をキャッシュレスで受け取る時代はもうすぐです。

「CSV×DX」で損保が目指す、まだ誰も知らない安心とは
2021.11.30 あいおいニッセイ同和損保 | NewsPicks Brand Design

損害保険各社は、SDGs、CSV、サステナブルなどのワードを用いて社会課題解決を戦略のベースにしています。保険そのものが、個人生活や企業運営、社会活動のリスクを多数の危険集団でシェアする機能なので、これらのワードとの親和性は元々高いのです。
DXも各社が掲げるワードですが、デジタル化の進展は、縦割りの業界構造を破壊するインパクトがあるものなので、損害保険業界もプラットフォーマーとの連携を通したオープンイノベーション等の活用で、どう縦割りのビジネスモデルをトランスフォームしていくのかが、今後のポイントになると思います。

以上になります。
主なキーワードは、

リスクの多様化・甚大化(自動車リスクの変容やサイバーリスクの台頭、自然災害リスクの増大など)
デジタル化、AIの浸透
保険ビジネスモデル変革(アライアンス、収益構造の見直し)

だと思います。

個人や企業活動の側面では、特に「リスクの多様化・甚大化」が重要なキーワードになると思います。

現代は、「不確実性が高く将来の予測が困難な状況にある(VUCAの時代)」と言われています。
だからこそ、このリスクの変容に、より意識を向けることが大切です。

個人においても、企業においても、このリスクを自らマネジメントしていく意識が今の時代には特に必要だと思います。

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