二十代の頃、白髪が人生を変えた話。
若白髪といえば、僕のことである。父も若白髪なので遺伝に間違いない。思えば、二十代前半の頃から白髪があった。だから他の誰よりも白髪との仲は深い。ちょっとした自慢だ。そう、僕は人生のいろいろな場面で白髪と対話してきた。
二十代の頃、転勤辞令が出た。ふるさとの大阪から東京へ。関西弁の抜けない野暮ったい男は、新しい上司からとある仕事を任された。辞書みたいな厚さの冊子を作る案件だ。ページ構成やライティングなどをマラソンのように進めていく。半年間、必死に走り続けて、冊子は無事に納品され