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命と命、そして作品と。

三島こうこさんは、いつも私の原稿に必要な画材や目にいいものを見つけると、お手紙をつけて送ってくださる。

三島こうこさんは、悪性褐色細胞腫の他に、七つの重篤な疾患を抱えている。

以前、私が泣き言を言った時、彼女に言われた。

「私は、あなたの作品をすべて愛している。文章も漫画も、ずっと追いかけ続けてきた。あなたの漫画を読むために、あなたの文章を読むために、オペを繰り返し、抗がん剤にも耐えてきた。
これがあなたの作品のファンというものだ!
あなたは、自分の読者を見くびるな!!
あなたには、どんなに遅筆だったとしても、漫画を描き、文章を書いていく義務がある。これは義務というよりも天命だと思え!
私は、肝臓と肺に爆弾を抱えている状態だ。
次はどうなるかわからない。
だけれども、あなたが今必死で描いている、『港町ブルース』の完結を見るまでは、私は絶対に死なない。
この作品だけに関しては、一編 一編 買うことはしない。単行本が出た時、あなたの命と私の命、それを対面させるようにして、命懸けで読みたい。
そのためなら私は、あなたに何だってする。
この漫画を描かせるためならば、私はあなたに何だってするよ!!
なぜなら私は、今もう、『港町ブルース』の 完結を見ること、その為だけに闘って生きているのだから」

三島こうこさんに、こう一 喝された。 

自分はいつも、作品に命は賭けてきたつもりだ。
だけども 今度は、今回は、私の命を全部使って、余すことなく 使って、『港町ブルース』を執筆するんだと、そう思いながら、1話 1話、描いている。

私と彼女は、20代からの付き合いである。
彼女が、どれだけ 凛として、いつも治療にあたってきたか、壮絶なオペと抗がん剤の苦しみに、生に食らいつくようにして、耐え抜いてきたそのさま、それをいつも思う。

いつか言われたことがある。
私が自分の死を望んだ時だ。

「生ぬるいこと言ってんじゃないよ。
あなたは『余命宣告』されたことはないでしょう?
あと何ヶ月しか生きられない、あと何年しか生きられない。私はいつもそう 言われて生きてきた。『余命宣告』というものをオペのたびに言われた。
どういう気持ちかわかる??
生きられる人間は、生きなさい!!!」

彼女の、心からの叫びであった。
そして私への、いや全ての、自分から命を断とうとする人たちへの、これは切望であった。

世の中には、
「生きたくても生きられない人々」
というものは確実に存在するのだ。

彼女はその闘病 において、一緒に入院してきた 仲間たち、そのあまたの命を見送ってきた。

私はずっと、そんな 三島こうこさんの絶叫を、折に触れ 折に触れ、聞き続けてきた。

私は命に謙虚にならなければならない。
死んではならない。
そして、統合失調症に負けてはならない。
作品を、命ある限り、描き続けて行かなければ。

そして 今自分が描いている『港町ブルース』を最高の、自分の中で一番の、今ある力の中で1番の作品に仕上げること。

彼女に、彼女が命を賭けてくれているお礼を出来るとしたら、私はこの作品を、自分の至上最高のものにすることである。

【三島こうこさんの闘病記 です】
https://note.com/tankta

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