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『羅針盤』

自分自身の尊厳 や、寄って立つ自信や、積み上げてきた自己という揺るぎないもの。

そういったすべてを失くした時、何もなくなった 自分をどう受け止めるか、全くの無から自分の足でどう生きるか。

そういった局面に立たされた時、その人自身の本物の「尊厳」「自信」というものが、明確な羅針盤になるのだろうと思う。

私はそれを、入院中のお父さんやたくさんの患者さんから、思い知らされた。

命を落としかけ、寝たきりだった お父さんの、命がけでリハビリをする姿。
病という病が、何度襲ってきても、どんなに 絶体絶命であっても、諦めなかったお父さん。
もう駄目だろう、そういう時であっても、0.01%に自分の命を賭け、リハビリだけは続けた お父さん。
局面 局面を、自暴自棄にならず、「ありがとう」と真っ直ぐにそう言ったお父さん。

どんなに涙の時でも、看護師さんたちをねぎらい、感謝し、困らせることも迷惑をかけることもしなかったお父さん。
どんな痛みの中でも、どんな辛さの中でも、どんな渇きの中でも、「治ってリハビリするんだ!」そう言って全て越えてきたお父さん。

そして、「認知症」(誤診であったが)という診断を受けたとき、迷いなく前を向いたお父さん。

お父さんは、退院して家に帰って 私にこう言ったのだった。

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