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唯坂詩集

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唯坂優の詩作品集です。ヘッダー・挿絵はアプリ『AI Picasso』様により生成。
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2022年11月の記事一覧

拾ったゴリラ

拾ったゴリラ

ええ はい

ゴリラを 拾いました

昨日の飲み屋の 軒先で

しとどに雨に 濡れている

凍えたゴリラを 見過ごせず

家まで連れて帰りました

一晩経って今現在

彼女はバナナを喰っている

わたしは途方に暮れています

明日にゃ到着 ボスゴリラ

うちの周りでドラミング

きっと隣の受験生

血相変えてやってきます

そのメスゴリを 引き渡せ

さもなきゃ俺は 3浪と

涙ながらに叫ぶでしょ

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納豆という扉

納豆という扉

素手で納豆を食べなさい

できないのですか

それはなぜ

事後には

事後には手を洗えばいい

だのになぜ

あなたはそれを拒むのですか

納豆はお好きでしょう

毎朝食べているのでしょう

なら 何を躊躇うのです

口の中に入れるものです

あなたの身体を作るものです

それなのに

あなたは

あなたというひとは

素手で納豆を食べようとしない

あなたには

物の本質が見えていない

理由

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しめじをどうぞ

しめじをどうぞ

しめじはいりませんか

しめじは

あっ

ありがとうございます

しめじをどうぞ

えっ

しいたけですか

いえ

わたしがさしあげているのは

しめじでして

…そうですか

期待はずれでごめんなさい

わたしがもっているのは

しめじだけ

なめこも、えのきも、えりんぎも

なにひとつもっていない

だから

しめじがほしいひとをさがしているの

しめじでゆるしてくれるひとを

ごめんね、

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末路

末路

ぬっじょじょぽん

ぬっじょじょぽん

あれは

あれは

山のうえから

聞こえてくる

特殊な虫の鳴き声

聞こえるだろう

君にも

ぬっじょじょぽん

ぬっじょじょぽん

いや

あれは

あの音量は

虫なんかではない

ヒトだ

ああ

全てを捨てて生きる者は

ああなってしまうのだろうな

軌道

軌道

わたしをくくりつけて

とても長い棒に

先が見えないくらいの

空を裂くほどの

丈夫な素材でできた

長い棒に

そして

振り回して

気の済むまで

あなたの気の済むまで

ああ

衛星軌道上で

あなたの腕の力を感じる

わたしはきっと

世界から 一番遠くで

愛を感じた最初の人間

イエティと僕の孤独

イエティと僕の孤独

離してください

イエティが待っているんです

だれかが見つけてくれるのを

吹雪の荒ぶヒマラヤの

木っ端に朽ちた山小屋に

たったひとりで

いつかだれかが

迎えに来てくれると

信じながら

だから

早く放してください

僕を

常識という拘束から

マンドラゴラの叫び

マンドラゴラの叫び

わかりますか

私がどうして叫ぶのか

気の狂うほど叫ぶのか

伸ばしたばかりの根毛が

音を立てては切れるから

土に埋まった友達が

悲しい瞳で見てるから

心地のよかった畑には

もう戻れないと知っているから

叫びます

あなたにも この悲しみをわかってほしくて

卵

うずら卵を

3日放置すると

にわとりの卵になります

4日放置すると

ダチョウの卵になります

今 あなた 疑ったでしょう

疑ったから あなた

もう二度と 目玉焼きは食べられないものと思いなさい

卵たちが怒っていますよ

あなたが疑うから

あまねく卵から

生まれた雛が

あなたの肉を啄むでしょう

でも 希望はあります

ペンギンが

ペンギンだけが

あなたの味方をしてくれます

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不本意なきのこ

不本意なきのこ

あなたにきのこを授けましょう

嬉しいでしょう?このきのこ

きれいな色でしょ

いい形でしょ

さっそく背中に植えたげる

深いところに植えたげる

菌糸体から子実体まで

全部があなたに入ってくるの

あなたの胞子を風に散らして

冬の前には朽ちなさい

『ぬ』

『ぬ』

『ぬ』が

『ぬ』が来てます

『ぬ』が

困りますね

これだから田舎は嫌いなんです

『ぬ』が出るから

『ぬ』が出よるから

奥さん 黒胡椒

黒胡椒をここへ持てぃ

ほら ボサッとしとらんで

撒いて 全面に

畳に 土間に 玄関に

撒いて

『ぬ』には黒胡椒 これ一択

の はずだが

待って え 待って

殖えとるやん

殖えとらすやん

奥さん!!奥さん

あんた何撒いとる

…あ

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イカ吐きおじさん

イカ吐きおじさん

おじさんっ!口からイカが出てますよぉ!

そんな 素知らぬ顔で

無理があるよ

それは 消化器で飼ってたの

それとも 今日のお昼ご飯

いや 昼から丸一のイカは

さすがにいかないか

いかだけにな

…ごめんなさい ほんとうにごめんなさい

たたかないで

たたかないで

イカの触腕(イカの脚の中でも最も長い2本)で

口からはみ出た イカの触腕で

たたかないでください

痛 痛い

地味

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ラーメンウルフの猛進

ラーメンウルフの猛進

止まるなっ 走れっ

ラーメンウルフを見失ってしまうぞ

その メンマの脚で

強く地面を 蹴り捨てて

とんこつの風を 従えて

誰か止めてくれ

あの野生の躍動を!

あぁ ラーメン屋が潰れていく

とんこつの風は死の風か

ラーメンウルフは死の尖兵か

…おぉ 見よ!

足音が聞こえる

草を踏み締め

大地に四足を突き立てて

ちゃんぽんライオン

ちゃんぽんライオンが

その勇姿!!

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鹿撒きの朝

鹿撒きの朝

鹿は 等間隔に撒かないと

ちゃんと育たないんだ

苗を買ってもいいんだけど

種から育てた方が 愛着が湧くよね

袋の底から 鳴き声がするよ

元気だね

春を過ぎた鹿畑は

くすぐったい風を走らせて

みんなに 獣の匂いを届けてくれる

収穫の秋は ジビエ祭り

もも肉を食べた

隣のこどもが 泣いてるよ

来年また 会えるから

今は 胸いっぱいのまま

ベッドに入ろうね

ウニ

ウニ

うに うにうに

ウニが降ってくるよ 容赦ないね

無防備な僕らに それも頭上に

ビニ傘なんて意味ないよ ズッタズタさ

おい 冗談じゃないって

ガンガセ混じってんじゃん

これウニの類でも悪質なやつだよ

ってかこれ何

出所は何処

空見上げても 雲一つない夜空

星だってないけどね

そもそもこれ海の幸でしょ

あっ

そうか

ここ ここが海の底

母なる海の 一番底で

今 僕らは

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