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その課題、解く鍵はもうお持ちかもしれません ★ 自治体の方々と、これからの地域事業者の支援を考えたい(3)

株式会社ただいまの佐藤と申します。これまで10年以上、地域の事業者さんの支援を手がけてきました。支援にあたっては、日本各地の自治体や、地域の金融機関さんや支援機関の方々とご一緒させていただく機会が多く、千葉、長野、京都、広島、福岡、長崎などで主に活動しています。

新型コロナの影響が、まだまだ見通しにくい状況が続いています。そんな中でも、地域の事業者は生きていかなければならず、またそのための支援もレベルアップが必要な状況です。以前より、地域金融機関の方向けのコンテンツを発信させていただいていますが、前回に引き続き5回程度、日本各地の自治体の皆さまに向けて、地域の事業者の支援についてご一緒に考えるコンテンツを発信させていただきます。

前回に引き続き、地域の自治体職員の皆さまと、まずは書籍で背景となる知識を共有し、その中身をどう解釈し支援につなげていくか、この場でご一緒に考えていければ幸いです。

話題の「ディープテック」は、地域の産業を活性化するか?

今回参考にしたい書籍は、下記です。

『ディープテック Deep Tech 世界の未来を切り拓く「眠れる技術」』です。

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話題の「ディープテック」を具体的に、地に足がついた内容でわかりやすく学ぶことができる一冊です。豊富な事例に加え、そもそもどんなことに着目して進めれば効果的かについても頭が整理できます。例えば、SDGsを概念で終わらせることなく、きちんと儲けるビジネスに創り上げることも志向されています。

地域の支援に活用する視点では、特に下記のポイントにヒントがあります。

地域内での「共生」により、新しいタイプのビジネスを紡ぐ視点が重要

本書では、異なる生物種が同じ場所で生活することで互いに利益が得られる関係のことを指す「相利共生」という言葉が紹介されています。

同じように、トヨタなど自動車産業の存在が必要不可欠である、「Uber」や「Grab」などの「シェアリングエコノミー」の世界にも「相利共生」が見られると言います。

200年以上続く老舗企業は約5,500社あり、その半数以上が日本にあるそうです。それほどの数の会社が長きに渡って存在し得たのは、それぞれの地域に持続可能な仕組みがあったからではないか、と。その仕組みを紐解くことで、新しいビジネスを編み直すきっかけがつかめるかもしれません。

ディープテックは、必ずしも最新テクノロジーである必要はない。地域に眠れる技術を解決に活用する視点を持つ

私がこれまで関わった地域支援においても、古いものはもういらない、とにかく新しいものを政治主導で導入する、ような事例も知っていますが、必ずしも事業化に繋がるケースばかりではありません。

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本書では、課題解決の手段であるテクノロジーが、必ずしも最新のテクノロジーである必要はなく、むしろ「枯れた技術」「眠れる技術」と思われている技術が役立つかもしれないことを示唆しています。

地域には、老舗企業があり、独自の技術やノウハウがある。その用途を「これしかない」とみきるのではなく、もう一度、地域の課題解決の視点から見る角度を変えて見ると、時代のニーズに即した新しい使い道、新しい価値が発見できる可能性がある。ということが、言えるのではないかと思います。

本書では、テレビの技術が液晶にかわり、倒産してしまったあるブラウン管の会社について触れられています。世界でも高く評価され、信頼を得ていた日本のブラウン管の技術を、あの時もし違うことに役立ててみようと考えた人がいたら、今もその会社は存続していたかもしれない。何か課題を解決していたかもしれない。それは、なんと悔しく、またもったいないことでしょうか。

日本が得意とする基盤技術。その高い汎用性を活かして、これまで考えたことのなかった分野での問題解決に活かせるのではないか。かつて持っていたもの、今持っているものと、目の前の課題をマッチアップさせる重要性を、本書では強く訴えています。

「とりあえず組み合わせてやってみよう」の大切さ。自治体と民間事業者が目指すポイントを共有して進めたい

先にも紹介した「相利共生」の考え方は、これまでの西洋的なビジネスロジックであるゼロサムゲームではない「東洋的な」考え方であり、本来日本人が得意としてきた、複雑系の中に何かを見出す、そんな感性をこれからのビジネスの現場に取り戻せる可能性を、本書は示唆しています。

そしてこれからの「共生型社会」ではますます重要になってくると思われる「とりあえずやってみよう」「とりあえず組み合わせて作ってみよう」という「好奇心」の大切さを説いています。弊社のこれまでの支援の経験からも大いに共感できる点です。

昨年度より支援がスタートした、北海道標津町では、地域活性化の切り札のひとつとして、DMOの設立を検討。その物販事業の戦略策定を支援させていただいています。企画書にまとめた戦略の手応えを、リアルでひとつひとつ確かめながら、現場のペースを保ちつつトライアルに臨んでいます。

標津町の場合は、やはり水産品の販売拡大が課題であり、さまざまな方策を検討しました。が、結局一番の決め手は、地域でずっと地道に水産物をさばき販売してきた事業者さんの想いと腕のよさでした。それを、地域への関心が高いICT企業のニーズ起点で俯瞰し、販売戦略を立案しました。

ヤフー標津フェア

先日は、ヤフーさんの社員食堂のメニューとして標津産の水産物を提供する取り組みや、オンラインツアーを実施。常々、地域活性とICTの相性が良いとは思っていましたが、標津町がもともと持っていた水産加工技術をベースに、新型コロナの影響も思わぬ機会となって、次の一歩を踏み出すことにつながりました。

今回も長文にお付き合いいただき、ありがとうございました。次回は 弊社が特に支援事例が多い「食」関係の地域を支えるビジネスを検討するために必要な技術について、考えてみたいと思います。

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