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調査自体が貴重なUXだった。

こんにちはWHITEでサービスデザインをしている原田です。
今回はサービスデザインをWHITEで始めて改めて思い出したことを書こうと思います。それは実地に赴いて行う調査の納得性です。とは言え大げさな話ではなく、現場でのリサーチとヒアリング・インタビューを起点にした施策進行や結果に対する有効性の話です。

プロモーション実施までの進行で、施策のベースとなったマーケデータが、お座成りにされる事がちょくちょくあります。勿論、プレゼンで得意先が納得したから受注に漕ぎ着けているので施策の足場として間違いないはずなのに、なぜかあらぬ方向に流されて行く。会議を重ねるたびに「え?それは、そもそもの前提がちがう話ですよね?」みたいな、その場だけのジャストアイデアに振り回され、あれこれやってるうちに納期がどんどん迫ってくること、あると思います。想像するに得意先にとって頭では納得できたけれどなんとなく実感が薄く自分の体験として咀嚼できていないことが原因で、思考の足場がグラつき、時間の経過とともにこういうことが起こっていたような気がしています。

・前提が崩される原因は得意先の納得体験が足りていない可能性あり。
現状を体験の延長で咀嚼できると納得を得やすいかも。
・迷走して時間が進んでも得意先と納期は待ってくれない(徹夜決定)。

そんな中で、ぐらつかなかった鉄板の足場ありました。
得意先と行った現場リサーチをベースにした施策です。
現場リサーチをおこなうことで得られる進行のメリットはの大きく4つ。
1、得意先が納得しやすい現場から生まれるなるほど!(ペイン)」の発見
2、納得のペインから生まれた、立ち返る事のできる施策定義(足場)。
3、解決すべき施策定義(足場)が揺るがないことによる堅牢な方向性。
4、結果、アウトプットまでの時間、コストの効率を上げられる。


4に関しては単純な話で、話し合う「コト」自体が曖昧だと、論点がふわふわして横道にそれて雑談に陥りがちです。逆に言えば、論議の足場がしっかりしていれば、話がブレにくく、お互いに共感しながら効率的に話は進みやすくなります。社会人アルアルだと思いますが、やたらと長い割に、なにも決まらないミーティング。そうですあの疲労感だけが発生するしんどい時間が減っていきます。

・調査の中で得た【ペイン=得意先の納得や共感成分を含んだファクト
 が論議の足場になる。
・足場に櫓(仮説や検証)を組む。という話し合いの目的が設定できる。
・足場の出自に疑いなく進行できるので、横道にそれても補正できる。
・WHITEのちゃんとした調査については「弊社吉田航也の記事へ」

「体験とセットでツールをイメージしてみる」

得意先との共感という意味では少しイレギュラーに案件化したもので、現場のペインをもとに生まれたセキスイハイムの“みらいおん”というキャラクターがあります。セキスイハイムの提案にあたり、住宅展示場で販売員の方を「観察」し「話を聞いたこと」がこのキャラクターが生まれるきっかけとなりました。

ご存知の通りセキスイハイムの提供する住宅は2世帯、3世帯を対象にした住宅です。得意先オリエンでは上記のような家族に対して住宅のメリットを伝えるための機能や価値をわかりやすく紹介するプロモーションを希望しており、特に展示場で販売員が使うツール類に力を入れていました。更にオリエン時ヒアリングしていく中で展示場に来たお客様が検討に至るのは展示場に複数あるメーカーの中から3社に選ばれること。という話も聞き出せました。そんなインプットをした上で住宅展示場と縁のなかった自分は手がかりを探しに住宅展示場に行くことにしたのです。

現場につき、販売員の行動観察が進む中で『アレ?』と違和感を感じはじめます。なぜなら、力を入れて機能を上手に説明したツール類 があまり機能していなかったのです。

その原因は現場販売員の方から話を聞いてわかりました。先ほど書いたように2世帯、3世帯には当然お子様がいて展示場にも一緒に訪れています。そうすると子供にとって退屈な展示場はすぐ飽きてしまうため、ツールを使って説明しようとしてもグズる子供を連れてすぐ出て行ってしまうのです。つまり販売員のペイン、それはお子様の退屈による説明時間の不足でした。これではいくら良いツールを作ってもお客様に渡すだけになってしまいます。

・現場でしか見えないペインがある。
・ツール内容をどうしたいか?では説明時間というペインは出てこない。
・オリエンだけでは現場のペインが見えにくい。


「カスタマージャーニーで体験タイミング検証する」

そこでツールを機能させるために考えられる対応方法はザックリ2つ
1、お客様が持ち帰っても機能するツールにする。
2、子供を足留めし、保護者を拘束、販売員がツールを使って説明する。


得意先オリエンから発想すると1が理想的なのですが、カスタマージャーニー的に違和感があります。なにしろ展示場で選択肢の3本以内に入らないと検討対象から外れるわけで、家に持ち帰ってから読んでもらえるようにツールの内容をしっかり考えましょう!というのは本末転倒。そもそも3指に入らなかったメーカーは候補から外れるわけで、ツール類は9割ゴミ箱に行っていると考えられます。そこで2の方向で対応を考えました。

2のペインは簡単にいうと説明時間(営業対応時間)を確保をすることです。要はお客様(説明、購入する親)に対してではなく、お客様の時間を奪う要因(子供の退屈)を解決することでお客様の拘束時間の向上を狙ったわけです。

結果として施策は功を奏し、10年たった今でもグッズ展開し、展示場だけではなく工場見学などでも家族を出迎え、各地地域の販売員にいろいろな形で利用されながら、販売員のペインを解消しつづけるキャラクターとして愛用されています。

お客様の行動に期待するのは控える。
・ペインの本質的な原因を見つけ解決する。
施策はカスタマージャーニーを意識する。
・現場のペインから生まれた施策は結果的に息が長い施策になる。