ガンジャ先生。5-8
強く儚い者たち
深夜バスは走りぬける。
路上の敷居を踏みガッという反動と、寝息が聞こえるだけの車内だった。
Markvard - Desire
正直僕はパニックだ
されるまま歩は僕の口を吸い続ける
目をトロンとさせている歩
次の瞬間。
目が本当に覚めた。
「ビシャ!ジャーーーージャバジャバ!」
「ぬぁ!冷てえ!」
いきなりびしょ濡れだ!!
が、それで歩も目が覚めたのか。
求めることを止めた。
プイ先生が気づき起きた。
後ろの席からペットボトル1リットル分の水全部かけた。
何も言わずプイ先生は歩の手を引っ張って降りていく。
残された僕は。。。何があったか理解できない。がビチョビチョ。
「匠くん。。はいタオル‥」
雪菜は後ろからタオルを差し出した。
それで顔を拭う。
僕はその時雪菜に何も言えず、、
そのまま思考を放棄し、寝た。
☆☆☆
バスは朝の6時を回ったところで停車する。
「オキテ。乗換」
「ん。。。」
僕の横の席にはプイ先生が座っていて。
プイ先生のその席に歩が座って寝てた。
僕が動くとみんなにオキテと声をかけている。
夢だったんだろうか?
しかしTシャツはまだ湿っていた。
薄明るくなったここはどこだろう?
道具をバスから降ろし、小さな船着き場?のような場所で少し休憩のようだ。
コンビニではないが、食料店があり。水などは買える。
また、焼き鳥の露店や果物売り場みたいものもあり、バックパックを背負った外人達はそこらそこらで別れつつ食事を取り始めた。
「ふぁ〜寝たきがしねえ〜なんか食うか匠?」
「タツヤか。なぁ。。昨日の事知ってる?」
「昨日ってなんかあったっけ?まあいいや、飯食おーぜ♪」
タツヤは気づいてないみたいだ。
女性陣は早々に日陰をキープしてた。
茜は寝ボケてフラフラ。未亜も眠たそうに目をこすってる。
プイ先生は道具を預かってくれて、そこに果物持った歩と委員長が果物を運んでる。
あれ?普通だよな。。歩。夢だった?
「よし腹減った!カップラーメン食うぞ!」
「お前朝から重いもんいくな。。匠」
「水も買っとかないと。おごるぞタツヤ!」
「お♪喰う喰う行こーぜ♪バナナ外さね〜」
こうして食料品店でカップラーメンを食う。
店前の露店のチャーハン卵?みたいなのも買ったった!
店でお湯ももらいラーメンは辛いがうまい。
温かい食べ物ばどこか心を落ち着かす。
店の前の露石に座り込み、チャーハン卵を筆頭にバナナとかカップ麺をガツガツ食べてるとプイ先生が来た。
「ヨク食べマスネ。。(笑)」
「成長期なんで。。あ、昨日は。。」
「ダイジョウブ。また話すね。ヨーグルト買いに来ただけだカラ」
しーという仕草でプイ先生は笑顔でそう言った。
そしてお腹が膨れ満たされた。みんなに合流する。少し気まずい空気と思ってたが考え過ぎたようだ。
こういう時男はビビるから。。
「おはー」
「お疲れかな」
「くー」まだ寝てる茜。。おいその枕は俺のカバン。。てか茜の寝付きの良さは羨ましい。
移動で乗換バスが来ると思ったが、そうはならずそのままフェリーに乗っていくらしい。
8時前にくるらしいのでこの埠頭で待機。
トイレなど済ましておく様に。そうプイ先生は説明した。
「それでーフェリー2箇所下りマス。コータオは2回目なのでハジメ降りないデネ」
「アト、ついたらリゾートの人が車で迎えにキマス。予定では講習は昼からデス」
プイ先生がいてくれて良かった。。
たまにバスツアーの人が来て言うけど何もわかんなかった。
フェリーの到着時間が近くなると、シールをもらいカバンと服に付ける。
フェリーのチケットの変わりらしい。
その時汽船の音が聞こえてきた。
「「フォー♪イャア!」」
白人達はテンション上げて船に乗る埠頭に向かった。
さあ僕らも船に行こう。
すでに肌寒さもなくなり、いつも通り日差しが強い日常に戻っていた。
□□□
「おはよう。プイ。バス降りたか?」
「ガンちゃん!ゴメンちょいと問題アッタ。。」
――あのあと。
1階に降りてトイレで私は歩にビンタした。
歩はビクッとしたけどよくわかっていない。
ただ濡れていたので、タオルを貸した。
「うぐっ。うぐ。エーン」
歩はしばらく泣いた。大丈夫。わかる。
そして落ち着いたあと。席を変わった。無言で。
私は13歳からこの商売をしてる。
似たような事があった娘もたくさん知っている――
「ガンちゃん。多分歩は軽いDID(解離性同一性障害)です」
「そうか。記憶はありそうか?」
「今はわからない。けど、人のしたことは忘れるけど、自分のしたことは思い出す」
「そうだよな。よし。何があった?」
私はバスで見た内容を一部始終話した。
そして心配される状態の事も話した。
ガンちゃんも私も日本語やタイ語では専門な用語はわからない。時には英語を交えつつ。あった出来事伝えた。
「・・悪いな。プイ心配かけて。そしてありがとう」
「ちょうど後ろにいて良かった。運良かった」
「また何かあれば電話くれ」
「うんフェリーキターいってきます♪」
「。。プイ。歩任せていいか?」
「モチロン!任せて♪」
電話を切りこちらの集合場所にも顧客が来る。
□□□
「今田さんですね。初めまして。就労ビザ担当の岩屋です。今日明日、よろしくお願いします」
バスに乗り込み書類に目を通す。
チェックシート出しそれぞれ記入を確認する。
ライトバンに乗って行くのはラオスだ。
笑顔で世間話をしながら北へ向かう。
昨夜あった事はプイに任せた。
岩屋の頭には匠のことしか考えてなかった。
匠はまだ。 一度も笑っていない。
ーー意識にないことを繰り返し
そこには衝動しかない
ガンジャ先生。どこにいるの?ーー