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第40回:「4つのお願い聞いて」:居心地の良いレストランは飛沫が飛ばない!?

さて、筆者は昭和の生まれですのでついつい、ブログなどでよくあるタイトルの「〇〇をするための〇つの方法」みたいな題名を見ると

「♪4つのお願い聞いて~~ 聞いてほしいいの~♡」

というプライミングが働いて、脳内で「♪いつものように幕が~」開いてしまいます。わからない読者の若人はお父さんに聞いてみよう。お父さんもご存じないかしら・・。

さて、 以前うるさいレストランはリスク食堂?として、2018年のザガットの顧客調査ではレストランに対するクレームとして「うるさい」=BGN(Background Noise)が筆頭にあげられていること、80-85デシベルの騒々しい環境では、味覚が正常に機能しなくること、そして何よりも、騒がしい環境では会話の声が大きくなり、然飛沫もより多く飛び、コロナウィルス等への感染リスクも高まるのではないかということを申し上げました。

大声で飛沫を飛ばしまくった会話をしなくていいようにBGNレベルを下げたり、空間のサウンドコントロール(反射・反響・吸音・マスキング等々)設計を試みるお店が、「居心地が良いだけではなく、優れた感染対策をしている優良店」と考える風潮ができていくべきではないか、とソニック・アーキテクトは考えるわけです。

BGNレベルが高いお店は高い頻度でアルコールのグラスが空けられ、お客様はちゃんぽんで色々なお酒をお飲みになります。そして、早食いを促しますので、お店の回転率もあがるでしょう。一時だけ流行るお店をつくって次々に開店→閉店させて行くのならば、一時的な売上アップは狙えるでしょうけれども、それは持続可能なビジネスでしょうか?

そもそも早食いは心地よい体験ではありませんし、がんがんとアルコールのグラスが空くのはストレスが原因です。ですから、一時的な売上増加だけを考えるのではなく、長くお店が続いてお客様に再訪して頂けるにはどのような空間の音環境を創れば良いのか、考える方が良いのではないかと考えます。

「音の反射と吸収がキー」

BGNを適切に制御するためには内装やインテリアにおいて、「硬い表面と柔らかい表面のバランスをとる。」ことが大切です。

飲食店はそれぞれの店舗のコンセプトに基づき、インテリアや内装装飾がされていますよね。

木製やタイル張りのフローリング。金属製の備品、カウンター越しのキッチン、ガラス張りの外観などなど。ここにレストラン自体の音が加わります。レストランの音とは、従業員の声、キッチンの調理器具や食器の音、料理人が調理する音、換気扇の音、お客様のテーブルでの食器の音、従業員やお客様が歩く音、各テーブルの会話、BGM、空調や室外機、送風の音。

レストランとはこれら多様な音=周波数がぶつかりあい、反響しあう空間なのです。これらの反響をコントロールしなかったらどうなってしまうでしょうか?

つまり、上述した音の反射・反響をいかに吸収し、コントロールするか、が快適な音空間を創る鍵である、ということです。今日は快適な音環境を創るための「4つの対策」をご紹介しましょう。

1.交通量の多いエリアを特定しましょう
タイルや木製の床に人の歩く音は結構「カツカツ、コツコツ」と響きますよね。一般的にはお店の入口、レセプションエリア、お手洗いの出入口、キッチンの出入口が交通量が多いでしょう。

2.窓にはカーテン
自然光や外の空気を取り入れたり・・・もちろん大きな窓は素晴らしい演出効果がありますが、ガラスは音を反射します。そのため、窓周辺のBGNには注意が必要です。一方で素敵なカーテンやロールスクリーンは店内を美しく装飾しますし、音の跳ね返りを相殺し、BGNレベルを和らげる効果があります。もちろん重厚なドレープが最も吸音効果が高いですが、インテリアの演出上使いにくければ、薄い生地であっても充分です。特に、お店が大通り沿いにある場合、電車や地下鉄が近くにある場合などは屋外の騒音レベルも高いですから、できれば二重窓を設置したいところですね。

3.緑を設置する
オフィスと同様ですね。植物の葉、茎、枝、木は音を吸収します。ですから壁面にグリーンウォールを設けてBGNを下げている演出も最近は増えてきましたね。また、大型の植物プランターも良いでしょう。堆肥は音をとてもよく吸収しますので、大きな植物が店内を彩ると同時に、音環境を改善することができます。植物はお店の真ん中に設置するよりも、隅の方に置いた方が効果的です。なぜならば、壁面で反射された音をダイレクトに植物がキャッチし吸収してくれるからです。店舗の外では、室外機など低周波騒音を発する機器を囲むように植物を配置すると効果的です。植物は見た目も美しく、店内外の空気を綺麗にする効果もありますので万能のツールですね。

4.天井・壁・床の間での反響を防ぐ
床が硬く、更に店内の他の場所に大理石やスチールなどでできた硬い表面の壁や天井、装飾がある場合には、床・壁・天井との間で音が反響し、騒音となってしまいます。このような環境では、以下のようなささいな音も増幅され、快適な環境から更に遠ざかってしまいます。つまり、郊外の大型スーパーですとか、アウトレットのフードコートなどで、音が響き渡って「ぐわんぐわん」と回ってしまっている状態がありますが、「BGN度の高い反響」とは、ああいったものをご想像ください。例えば・・・・

・人が歩く音
・椅子を引く
・食器を動かす
・テーブルを囲んで会話をする
・スピーカーからのBGM
・天井付近からの空調・冷暖房の音
・キッチンからの調理音、食器、機械、食器洗浄の音、料理人の話し声や動作音

このような音が反響してしまっている場合には、床に吸音タイルを設置したり、頭上や壁面に防音パネルを設置することによって音を抑えることが可能です。

さて、今日はここまで。

今日は4つの対策をご紹介しましたが、まだまだ対策はあります。次回、「番外編!心地よい空間への3つのステップ」として細かなことですが、快適で美しい空間づくりの方策をご紹介します。


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