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Leica M11、新たな沼のはじまり

かつて、「レンズ沼から抜け出すためにたどり着いたライカQ2」というエントリーを書いた。

ライカQ2はレンズ交換のできない高級コンパクトデジカメ。F1.7のズミルックス28mmレンズ1本で勝負する潔さに身を預ければ、際限の無いレンズ沼から抜け出せられる♪ 70万円など安いものよ

などと言い訳を並べ立てて自分を満たしていた。

あれから3年。

実際、写りにも取り回しの良さにも洗練されたUIにも満足している。Q2は素晴らしいカメラだ。ライカの克明でありながら油絵のようなこってりした描写がオートフォーカスで堪能できるのは画期的だと思う。しかも防塵防滴。ズミルックスレンズでマクロ撮影までできちゃうし、M10よりも軽くてバッテリー交換も楽々。金利はジャパネットが負担。欠点もそれなりにあるものの、3年経ってもまったく飽きない。

つまり、今も最高の相棒に変わりない。

だのに、なぜ。
気づいたら買っていた。

ライカM11を!!!!

3年前の自分はこうも書いている。

たまたまSXSWで出会ったライカ古参ユーザーの方に「Qは入り口。ライカはMだから。沼へようこそ」などと脅されました。が、沼おじさんを抜けてやっと幸せボンビーおじさんになれたのだから、Mなど知るものか。

「レンズ沼から抜け出すためにたどり着いたライカQ2」より

ごめんなさい、前言撤回。
予言者のお告げの通り、いちばん深い底なし沼にハマってしまった。親指を立てて溶鉱炉に沈んでいくばかりで「I'll be back」できなそう。

堂々と言い切る「Mなど知るものか」が恥ずかしい。

そう、M型なのでもちろんレンズ交換式。
買ったレンズは1本100万円もするアポズミクロン35mm・・・と言いたいところだけど、ライカストアの店員さんに

「予約待ちで1年以上、この調子だと4〜5年はかかるかもしれませんね〜」

と言われていったん予約待ち(予約だけならタダ!未来の自分、戦え)。

代わりにズミクロン35mmとアポランター50mmを購入した。

総額の値段についてはもはや書くまい。書けません。言えません。レンズ沼を飛び越えてライカ沼。そこの住民票を取ってしまったのかもしれない。

ただひとつ言えることは、

めちゃくちゃ楽しいのだ、写真を撮ることが。

克明で色のりがいいから嘘みたいな画になった。M11+アポランター50mmで撮影。

Q2のいちばんの良さはライカレンズなのにAFであることだった。M11の良さは何か?僕の中ではM型であること、レンジファインダーで、Q2とほぼ同じUI、ほぼ同じ重量であること。

人物だけじゃなく動物も鳥も瞬時に判別して瞳にバチッとフォーカスを合わせてくれる超賢い機種が当たり前の時代に、その何倍ものお金を払って、手ブレ補正もなけりゃAFもない、動画撮影機能もないカメラを使う。

これって何なんだろう?
茶道とか華道とかに近いかもしれない。知らんけど。

おまけに僕はレンジファインダー初心者。
慣れてないのでピント合わせだけでも絶望的に下手になる。

まるで初めて写真を撮りだした16歳の頃に戻ったような気分。

この四苦八苦を、ライカハックと呼ぼう(たぶんこの先使わない)。

動きまわる子どもにピントを合わせるのは至難の業。

そう、写真で四苦八苦することが久しぶりすぎて、それが楽しく懐かしい。

もっと上手くなりたい、乗りこなしたい!なんて思うなんて、いつぶりだ?

ええと、16歳で父親のミノルタをもらったときと、17歳でビッグミニを買ったときと、大学生でペンタックス67IIを買ったときぶりか?(多いな)

ではQ2はもうお役御免なのかというと、まったく逆で。

M11を知れば知るほどQ2の良さにも気づかされる。
3歳児のトリッキーな動作を収めるにはQ2の俊敏なAFが威力を発揮するし、28mmの広角もトリミングしやすい。頼もしさが尋常でない。

M11のせいで出番が減るのはあまりにももったいないと思うからこそ、きっとQ2の出番ももっと増えそう。

これはQ2で撮った夏の一枚。水面の描写がエグい。

Q2を買ったときは明確に「娘を撮る」目的で手に入れ、実際に娘ばかり(ときどき妻)を撮っているけれど、M11はそれに加えてもっと日々の目の前にある物事をスナップしていきたい。

そうじゃないと元が取れん!という貧乏性成分も多分に含みつつ、とにかく撮りたくなるカメラなのだ。

思えば、アメリカはオースティンで出会った予言者のお告げの通り、Q2を手にした時点でM型の沼へ墜ちることはFate(運命)だったのかもしれない。

なんて嘘。ぜんぶ言い訳。
いいのだ、ぜんぶ抱きしめてキミと歩いてゆこう。

でもね。もうレンズ沼にはハマるまい。オールドレンズとか、そういうのはまだいい。少なくともあと10年はいらない。ダメ、絶対に!

いつか座右の銘が「前言撤回」にならないことを震えながら祈っている。

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