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【合気道】アレクサンダーテクニークで変わった身体と魔法のキーワード

 6月の頭から集中してアレクサンダー・テクニーク(以下AT)という身体操作や体メンテナンス法といえるようなメソッドを習った。これまでもnoteに書いたが、特定の症状を軽快させる整体術ではないし、ましてやリラクゼーションを目的としたものでもない。人間本来のもっとも自然で楽な姿勢、ポジショニングを技術として習い、講師の指摘などを踏まえ修正し、新たな習慣としていくものである。

 全10回のレッスンであったが、ついに最終回を迎えるにあたり、これまでの学びを総括し、最後のレッスンをより有意義にするための反省を前半は記述する。
 後段は、最終レッスンの記録と、まとめとしてATを学び、身体が変わったことを記述するものである。

先ずは頭と背骨の関係をしっかりイメージ

 ATのメソッドで、最も根幹となるが頭蓋骨と背骨の結節点の正しい理解、そしてその結節点を具体的にイメージし、自然な結合となるよう緩めることだ。
 もともと武術などでも、姿勢にあっては頭が天から吊り下げられているようにするというような、頭を背骨の上にふわっと乗せる教えがある。武術稽古の中では、それをイメージとして実践することが多かった。
 ATではイメージも使うが、まずは骨格的な理解が先にあった。骨格標本モデルを使い、背骨(椎骨の1番=環椎)と頭蓋骨との接点をしっかりと理解する。

 このようにしっかりと物理的な理解を踏まえたうえで、自然な姿勢への修正方法を学んでいく。実に合理的だ。

頭蓋骨と椎骨の楽な関係への修正方法

1 頸(うなじ)の前面と背面を同時にまっすぐ伸ばす
 うなじの後ろを伸ばすことは意識しやすいが、同時に前側も伸ばすように指導を受けた。首長族のイメージだろうか。うなじを伸ばそうとするあまり、顎を極端に引いた形になってしまうことがあったが、前後を同時に伸ばすことにより、より自然に背筋が自然と伸びるようになった。
 実際に柔らかく自分の手を添えてやるとよい。

2 外側からも結節点の位置を確認する。
 骨格モデルや指導で結節点の場所を理解しても、実際に触れることはできないため、どうしてもズレが生じるもの。そのため外側から触れる骨や器官を補助線として使う。
 耳の後ろの窪みと鼻を結んだラインの後頭部側にその結節点はあるため、その場所の皮膚を触り、イメージとの整合を図る。
 また、内側からであれば、口腔内の上あごの骨の固い部分を舌で触れたところを意識すると教わった。

3 呼吸を使い、肋骨の前後左右に均等に息を入れ膨らます
 この方法は、実際にはイメージになるが非常に大事なメソッドだ。鼻から吸った空気は、肺を膨らませると思っているかもしれないが、実際は肋骨回りの筋肉や横隔膜の作用により肺が膨らむのだ。横隔膜以外は不随意筋なので動かせないが、横隔膜と呼吸はコントロールが可能。そこで上半身を大きく形作る肋骨とその周りの筋肉を正常化するために、肋骨という箱(袋)が前後左右に大きく膨らむとイメージする。この時は施術者に実際に触れてもらいしっかりと膨らんでいる(動いている)ことを確かめてもらうとよい。
 前後左右というのが意外と一人では難しい。先ほどイメージといったが、実際前後左右の肋骨がしっかりと動くことが大事だ。

4 胸鎖関節を開く
 胸鎖関節は、肩のラインに沿って横に入っている両鎖骨が胸骨とつながるところだ。

 このyoutubeをみると胸鎖関節には鞍状の部分があり、円滑に動くようだ。私が今回のATレッスンでもっとも苦労した半面、収穫だと思ったのは、この胸鎖関節を開くというメソッドだ。
 私は普段の姿勢が悪いためか、性格的なものか、巻肩、猫背であり、ふと写真を撮るとかっこ悪いのでとても嫌だった。胸を張ればよいのだが、これでは背を反らすような動きとなり、あまり武術的でないし、威張っているようでイメージもよくない。これを解消するのが「胸鎖関節を開く」だった。
 一つには、胸鎖関節は皮膚の上から触れるのでこれを物理的に開く。
 二つ目は、胸鎖関節が実際に開く感覚をしっかり理解する。これは赤ちゃんのようにハイハイをしてみるとわかる。両手を地面につけ、突っ張らないで上半身を支えるようにすると自然と胸鎖関節が開く。この動きだ。
 三つめは、これまで述べてきたことの複合だ。
 背骨の上に頭蓋骨を乗せ、結節点を意識する。ゆらゆらとよどみなく動くことを確認し、首の前後を伸ばす。肋骨が前後左右に膨らむように息を吸い、頤(おとがい)を調整すると、胸鎖関節が動き始めるのだ。

胸鎖関節が動くと・・・

 胸鎖関節が動くと、私の中で連動して動く箇所がある。それが肩甲骨だ。 武術的にもよく「肩の力を抜く、肩を下げる」と言われたが、これがいつまでたっても「できていない」と指摘を受ける。肩を下げるは、肩回りの筋肉や脇下の筋肉を使って肩を引きずり下ろすような動きになってしまっていた。(実際にその動きを指示する方もいた)
 ところがこの胸鎖関節を開くを使うと、多少のタイムラグの後、肩甲骨がぐぐっと背中側に落ち込んでいくのが分かる。ここからさらに胸先を少し上にあげるようにすると、さらに肩甲骨が背骨を降りていくような感じが出てくる。
 ここからは合気道の話になるが、「肩を腰につなげよ」という教えをかなり長い間受けてきたが、ずっとうまくいかなかった。イメージでつなげてみたが、思ったような結果・出力ができなかった。
 それがこの胸鎖関節を開くをきっかけとした身体操作で肩と腰をつなげる回路が分かったのである。これは大きな収穫だった。

10回目最終レッスン(7/23)

 9回目からだいぶ間が空いてしまったが、最終回レッスンでは、下半身からの調整の仕方と腕の完全リラックス ロールダウン動作の復習をリクエストした。

凡例 太字=課題 〇施術者 ●私(体験者)の感想や気づき ◎ATによる修正結果の事実

課題:立ち方を整える際に、下半身はどのようにするのがよいか。

⇒解決のアプローチ
・まず「こうあるべきだ」という型を作ろうとするのは違う。自分の身体が「こうなったらいいな」「理想の状態となることを許してあげる」というようにとらえる。
・足の骨の形から学んでいく。

〇指導
・足の骨格モデルを見ながら、踵骨の上に、距骨、そして脛骨と腓骨が嵌まっているという構造を理解する。(そのほかも詳しく)
・立つ際に安定するのは三点、三角形。足裏では、母指球、踵、そして小指の付け根あたりの3点となる。その間はアーチを描くいわゆる土踏まず。
・膝は、膝蓋骨を緩めることと、膝蓋骨の下のぷにぷにと柔らかいスポンジのような状態を維持すること。
・膝をロックするように立つのではなく、膝蓋骨が動く程度に。
・股関節は、前回やった長座をして、爪先を開くと股関節が開くを何度か繰り返し、動きやすくする。

●結果
 足裏三点で立つことを意識すると設置の安定性が増しました。
 膝蓋骨が動くように立つことは、なかなか意識しないと難しいようです。どうも膝裏を伸ばして立つ癖があるようです。
 股関節もすぐに意識が消えてしまい固まってしまいます。私なりのイメージですが、股関節に卵大の玉をイメージしておいておくと股関節が柔らかくなり腰も楽になるような気がします。

課題:ロールダウンのワークを復習したい。

〇指導
・環椎から、背骨一つ一つを数えながら曲げていくように、ゆっくりと。
・頭頂部から背骨を一つずつ意識して力を抜いて落としていくと、頭頂部が最終的に下に落っこちる。天橋立の股除きぐらいまで。
・下まで気持ちよく落ちたら、そこからまたゆっくりと立ち上がってくる。

◎結果
 ロールダウンで落としていくとき、頭蓋骨と頸椎を固めたまま落としていることに気づきました。そこがリラックスできていないため、一つ一つを落としていくし、下に落ちるときは重たい頭が下に来るのは、ある意味当然でした。

そのほか、身体が自由に動くようになるワークを二つ教えていただきました。特にワーク2は、身体が無理なく動くので、日常動作で意識するとより楽に動けるのではと思いました。

【ワーク1】人差し指を目先で伸ばし、空中を指す。
・その指先を目で追う。指先は蝶がひらひらと舞うように自由に、8の字などに動かす。目で追いながら、身体もついていく。身体の可動域がよくなる。

【ワーク2】オオカミになったつもりで、口からモノを取りに行く。
・オオカミや犬がフリスビーを投げると口でキャッチに行く。そんな動作をまねして、何かものを取りに行く際に、自分の口から取りに行く。こうすると横着して無理な姿勢でモノを取ったり、持ち上げたりすることがない。
 もっとも自然な身体の可動範囲内で、適切な動作で動くことが出来る。

アレクサンダーテクニークで変わった身体と魔法のキーワード

 ATの全10回講習を終えた。ATに出会ったのは、もう10年以上前になるだろうか。そのときには、さほど深く学ぶことはせず、ただ頭と背骨の関係が大事ということだけ持ち帰った。
 今回、しっかりと理論から実際の応用、具体的な動作改善までを教えていただくことが出来た。テストモデルではあるが、とてもラッキーだったと思っている。講師の方も、分からないところは持ち帰って、次回のレッスン時にフィードバックや新しいワークやアプローチを提示してくださった。
 このレッスンを通じて変わった身体は、特に背中だと思う。鏡に映る自分を見ると、肩がすっきりと落ち首筋がカッコよく立っている。わずかな変化なので、もしかしたら家族には気づかれないかもしれない。
 この変化は内面的なものも含むので、私の認知的な変化を及ぼしたのかもしれないと思った。
 動きの中でも、ATのメソッドは生かしやすい。何しろメインの教えは、「頭と背骨」だけだから。合気道の稽古中に、複数の注意を維持しながら動くことは至難の業だ。その点、頭と背骨の関係だけを正しく意識しながら動くことはできる。
 先日合気道の動画を撮ってもらったが、技の姿勢が少し良くなっていると思えた。
 一点を意識するだけで、身体全体が整うなんてなんて素晴らしいことだろう!とても感謝している。

 理論面以外で、とても重要な教えだと思ったことが次の点だ。

”命令型で記述しない こうあるべきだと型を意識しない。”
これは言い換えると、
そうあってほしい > そうあるべき

 身体に脳が命令するのではなく、そうあってほしいとお願いするのだと。頭蓋骨と背骨を整えようとするのではなく、整うことをお願いする、その自然な位置関係になることを許す、そうしてみてください、とのアドバイスを受けた。
 すると、自然と股関節が開き、膝が緩み、身体全体が整ってくる。これは、整えよという命令を受けてではなく、頭と背骨が整った結果、その状態を身体の各所がキャッチして、自然に整うのだと教えていただいた。
 ATには型があるわけではない。その人固有の自然な状態があるはずで、その状態を探す手伝いをするだけ、ということだろう。

願う 祈る 許す

 この魔法のキーワードを唱え、自分の身体に対して命令するのではなく、あらまほしき状態になることを願う、そうなるように祈る、そういう状態を許してあげる。このような優しさが、今後私には必要なのだと思った。

以上で、全10回のATレッスンのレポートを終わります。
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