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これからの水泳授業のカタチ〜高学年編〜

数年前に書いたこちらのnoteにコメントをいただきました。
自分としては、伝えたいことは書き切ったつもりでしたが、具体的にどうやって授業をデザインし、実践していくのかについては、書いていない部分がたくさんありました。

そこで今回は、2023年度に行った実践を超具体的にレポートという形で書かせてもらおうと思います。
今年度のあなたの実践の何か役に立てれば嬉しいです。

授業デザイン

授業デザインの順序

授業デザインのときに、1番に考えることは、「水泳の楽しさとは?」である。
楽しさが明確になれば、その運動の楽しさを思いきり味わえるような活動や手立てを考える。
※楽しさとは、その運動のビギナーも、プロも共通して感じているものだと捉えている。

今回は、「色々な方法で向こう岸までたどり着くこと」が水泳の楽しさだと捉えて授業づくりをスタートした。
その過程で、水の中の心地よさや自由に体を動かす楽しさに気づくことができるだろう。

次に、誰もがその楽しさを味わうための挑戦課題として、「向こう岸までたどり着くことに挑戦する」ことを設定した。
苦手な子は、補助具を使ったり、仲間にサポートしてもらう。
得意な子は、色々な種目に挑戦したり、手のかきの数をより少なくすることに挑戦したりする。

持っている力が一人ひとり違うからこそ、誰にとっても挑戦する余地のある課題を設定せねばならない。
挑戦する余地があるから、自分に合った課題を設定し、主体的に授業に臨むことができるのである。

授業全体のイメージ

ここまでで、授業の大枠はできた。
次は詳細について詰め、学年の先生方に提案した。
資料は以下の通り。

授業の実際

ではここから1時間の流れを紹介する。

オリエンテーション

オリエンテーションでは、水泳授業全体のデザインと、大切にしたいこと、約束について子供達と確認した。
プールサイドで行うため、視覚支援としてスケッチブックを活用する。

タイトルは学年目標と関連づけて。
広く体育学習とは?
試行と思考
支える価値をあらためて確認
水泳学習は命の学習でもある
バディやグループで常に仲間を気にかける。安全確保の基本。

チャレンジタイム①

子どもたちは更衣を済ませたら、グループでそろってシャワーを浴び、体操をして、チャレンジタイム①に入っていく。
更衣が早ければ早いほど活動時間が増えるので、準備が非常にスムーズになる。
※5分あれば十分

チャレンジタイム①では、今ある力を磨くことが目的だ。
泳ぎの基本となる、けのび・ボビング・板キックに、自分のレベルに合わせて挑戦していく。
プールは横に区切り、活動の場を確保する。
ここでも水泳の楽しさである、向こう岸にたどり着くことにチャレンジしている。
横に区切っている分、ハードルが下がるし、苦手な子はサポートを受けることもできる。

また、これまでに学んできた技能をスキルカードとして提示し、ポイントを確認できるようにする。
言語化していつでも確認できるようにすることで、自分の力に自覚的になる。
できていることをちゃんと「できている」って伝えてあげることが大事なのだ。

それぞれの場には、以下のような表示をしておき、子どもたちが自分で活動を選び、進んでいけるようにしておく。陸上にも拡大掲示をしておき、いつでも確認できるようにしておく。

グループタイム

グループタイムでは、新たなスキルを身につけられるよう、お互いに学び合う。
スキルカードはこちらから提示し、見通しを持てるようにする。
補助のしかたや声かけについては、ワンポイントとして教師から伝え、全体に広めていく。
単元序盤は学び合う方法を中心に、後半になるにつれて、技能面や泳ぎのポイントを中心に学び合いをサポートしていく。

自分の課題に合わせて練習内容を考えたり、選んだりすることができるようにする。

クロールの呼吸を安定させるために、まずはこれを教える
「空を見て!」はみんなで言える合言葉。
これは一斉指導でしっかりと教える。
伸びるをとにかく意識づける

チャレンジタイム②

チャレンジタイム②では、ここまでの学習で身につけたことを活かして自己ベストに挑戦する。
プールフロアを活用して、距離のバリエーションを作る。
プールフロアから壁に向かって泳ぐことで、誰もが壁にたどり着く喜びを味わうことができる。
チャレンジは必ずバディで行い、必要なサポートや声かけをすることで、苦手な子も安心して挑戦できるようにする。

得意な子はストロークの数や泳法に目を向けることで、自分の力に合わせて自己ベストを追求していくことができる。
距離以外の物差しを示してあげるイメージだ。

壁にたどり着くことや自己ベストをポイント化し、グループでためていくことで、学び合う必要感や、仲間のチャレンジを自分事として喜びあえる関係性が生まれると考えた。

距離が5mから50mまであるので、力に応じて場を選ぶ。

ふりかえり

チャレンジタイムタイム②を終えたら、グループで集まりチャレンジの報告をする。
自分のチャレンジしたことや伸び、仲間のいい姿を伝え合うことで、次の時間の課題を設定したり、モチベーションとしたりする。
その日のうちに、Formsを活用して振り返りを行い、子どもの現状を捉え、授業改善の手立てとする。

授業を終えて

授業前には、71名が苦手、51名が嫌いと、ネガティブな評価が多かった(児童数193名・回答数191)
授業後には、48名が苦手、15名が嫌いと、ネガティブな評価の割合が大きく減った(回答数188)

以下、子供達の感想を一部抜粋(追記します!)

終わりに

水の大好きな子を一人でも多く。
その一心で授業を作ってきました。
スイミングスクールへの授業の委託が進んでいる中で、学校の水泳授業を行う意味をもう一度考え直し、子どもたちにとってより良いカタチを探っていきたいと思います。

このノートに関する質問や、水泳授業に関する質問はいつでもお答えしようと思います。
この記事が誰かの何かのきっかけになれば嬉しいです。

それでは。
Good Luck!!

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