【解の一つ】"理解する"を理解する -フレームワークと応用-
「理解する」という言葉はよく使うと思います。何かを教えた時に「理解できた?」と訊いたり、逆に何かを教わった時に「理解できました」と答えたりしていることと思います。
しかし、そもそも理解できているとはどんな状態なのかについて考えたことがある人はあまり多くないかもしれません。
本稿では、「理解する」とはどういうことかについて独自のフレームワークを構築し、それに基づいて説明するとともに、理解する、或いは理解されるためにはどうすれば良いのか、理解することを応用すればどのように役に立つのかについて書いていきます。
日々の生活で物事の理解力を上げたい方、他人に理解してもらうにはどうすればいいかで悩んでいる方などのお役に立てれば幸いです。
1.理解するとは
①辞書的な意味
まずは、辞書的な「理解」の意味について記載します。
ざっくりといえば、「物事の意味や人の気持ちを分かること」でしょうか。しかし、「理解」という言葉を「分かる」という言葉に置き換えただけにも見え、理解するとは具体的にどういうことなのかが今一つ掴めません。
②筆者の考える意味
そこで、私は「理解する」とは、以下のような状態になることであると考えました。
「何をどうすればどうなるか」は具体的な対象・行動とそれによって引き起こされる結果を、「何故そうするのか」は行動の目的や背景を、「何故そうなるか」は行動と結果の因果関係について指しています。
これらを、他人の力を借りずに自分一人で言語化できるようになることが、物事を理解できている状態であると考えています。
2.「理解する」のフレームワーク
①フレームワーク
上記の「理解する」の定義を基にして、そこに当てはめれば誰でも物事が理解しやすくなるフレームワークを作ってみました。
②具体例
以下に、このフレームワークを用いた例を3つ挙げてみます。
自転車の例のように、目的に至るための行動が少ない場合は分かりやすいのですが、会社のプロジェクト管理のように複雑な物事になると、実際には1つの目的に対して多数の「対象+行動⇒結果」が存在することになります。
③フレームワークの活用
実際に現場で用いる際には、上図のように丁寧に書くのも手間だと思いますので、構成要素である「何を(対象)」、「どうする(行動)」、「どうなる(結果)」、「何故そうなる(因果関係)」、「何のため(目的)」について箇条書きで整理していけばよいと思います。
自分や相手が、その物事を理解できているのかを確認するときには、上記構成要素を一人で正しく埋められるかを試します。
逆に、自分や相手が物事を正しく理解するためには、物事を上記構成要素に分解して書き出せば、自ずとその物事についての理解が進むはずです。
会社でマニュアルを作成する際に記載が必要な要素としても使えるかもしれません。
3.理解することの応用
今までは、基本的には物事を理解することを扱ってきました。しかし、冒頭の「理解」の辞書的な意味にはもう一つ、「人の気持や立場がよくわかること」がありました。今回のフレームワークは、人の気持ちや立場を推し量ることにも応用ができます。
①他者理解
物事を理解する際には、基本的には構成要素の各項目が明らかなため、フレームワークに当てはまるだけで理解することが可能です。
しかし、他者理解となると、構成要素の全てが明らかになっているわけではありません。他者から得られる情報は、対象と行動、そして実際に起きた結果しかないからです。
例えば、道を歩いていると前を歩いている人が急にしゃがみこんで動かなくなったとします。この時に分かるのは、対象(前を歩いている人)と行動(しゃがみこむ)だけです。そして、それに気づいた貴方が「大丈夫ですか?」と声を掛けた場合、それが結果(貴方が声を掛ける)となります。
因果関係と目的はどこにも書いていませんし、誰も教えてはくれません。ここで必要なのは、想像力になります。具体的には、自分を相手の立場に置いて考えることです。
しゃがみこんだ人を見れば、周りの人が気になって声を掛けてくれる(期待する結果)でしょう。そして、それはきっと苦しい、立っているのが辛い状況だと思ってくれるから(期待する因果関係)でしょう。そうなれば、誰かが救急車を呼ぶなどして辛い状況から救ってくれる(期待する目的)でしょう。
このように、他者の取った行動を自分に当てはめることで、期待する結果、期待する因果関係、期待する目的を想像してあげることが、他者理解への第一歩です。
重要なのは、その想像が正しいかどうかではありません。他者の置かれた状況を自分に当てはめたときに、自分でも大変だと思える状況であると好意的に想像し、「大変なんだな」「そんな状況なら仕方ないな」と共感し、或いは寛容になることです。
他人の置かれている状況を軽いものと想像し、「自分にとっては大したことではない」とか「そんなことをするのはあり得ない」などと他人を遠ざけているうちは、他者理解をすることはできないでしょう。
②自己理解
このフレームワークは、他者理解と同様に自己理解にも応用することが可能です。応用の方法は2つ考えられます。
1つ目は、自分の過去の様々な対象・行動・結果・因果関係の組み合わせを振り返り、それらが何を目的にしていたかを考える方法です。
これを行うことで、自分が無意識に取っていた行動の目的が分かり、自分が何をしたい人間なのかが分かるようになり、自己理解が深まります。
2つ目は、自分が大切にしている目的から逆算して対象・行動・結果・因果関係を考える方法です。
例えば、仕事で成果を出したいという目的があれば、その為には売上を伸ばすという結果が必要です。その為には、人は信頼している人と商売をしたいと考える(因果関係)ので、お客さん(対象)の信頼を勝ち取る(行動)ことが必要になる、といった具合に、フレームワークを右から左に辿ることで、今の自分が何をすべきかが分かるようになります。
このように、「理解する」ということをフレームワークを用いて理解することで、日々の一般的な物事に限らず、他者や自分への理解も深めていくことができるようになります。
4.まとめ
「理解する」とは:その物事について何をどうすればどうなるか、何故そうするのか、或いは何故そうなるのかを自分一人で正しく言語化できるようになること
「理解する」のフレームワークに当てはめれば、物事が理解しやすくなる
フレームワークの構成要素である「何を(対象)」、「どうする(行動)」、「どうなる(結果)」、「何故そうなる(因果関係)」、「何のため(目的)」について箇条書きで整理していけばよい
物事を理解できているのかを確認するときには、フレームワークの構成要素を一人で正しく埋められるかを試す
物事を正しく理解するためには、物事をフレームワークの構成要素に分解して書き出す
「理解する」のフレームワークを用いれば、他者理解と自己理解もできる
他者理解をするには他者の取った行動を自分に当てはめ、期待する結果、期待する因果関係、期待する目的を想像してあげること。
他者理解をする際は、自分でも大変だと思える状況に置かれていると好意的に想像してあげることが重要
自己理解の1つ目の方法は、自分の過去の様々な対象・行動・結果・因果関係の組み合わせを振り返り、それらが何を目的にしていたかを考えることで自分を知る
自己理解の2つ目の方法は、自分が大切にしている目的から逆算して対象・行動・結果・因果関係を考えることで、自分が今何をすべきかが分かる
5.終わりに
皆さん、「理解する」を理解することはできましたでしょうか。
私は、普段から何気ないことに注目することを意識的にやるようにしているのですが、「理解する」という極めて当たり前なことについて考察し、フレームワークまで考えるという行為は初めてでしたので、記事を書きながら自分でも色々と勉強にもなりました。
「理解」という言葉は、誰かに仕事を教えたり教わったりしていれば必ず使うことになるので、もし日常で使用する機会があれば、本稿を思い出して頂いて、本当に理解ができているのかを是非確かめてみてください。
また、他者理解や自己理解についても、対人関係や自分の人生を考えていく上で重要になってくると思います。特に、自己理解については今のご時世、自分が正しい道を歩んでいるのかどうかが分かりづらいので、折に触れて自身を振り返ってみて頂ければと思います。何か新しい発見があるかもしれません。
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