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記憶のゆらぎのなかで…

私の高校は進学校だった。
その関係で塾に私は通っていた。

その塾でたまたま隣になったのが
彼だった。

そんな彼と仲良くなるまでに
時間はかからなかったような気がする。

お互い高校の話や、全国模試のことや…
ゲームや漫画…音楽や、
感覚、感性、辿ってきた経験もどこか似てて
とにかくめちゃくちゃ気があった。

塾でできた友達たちと
よくみんなで遊びにいった。
カラオケやボーリングや…BBQだったり。

何ヵ月か過ぎた頃に彼が、
『2人で会おうよ〜』と言ってくれた。

私は、その日初めて2人で会った。
周りの友達にバレないように、
2人で打合せをした。

気付いたら滅多に話さない自分のことを話ていた。
彼はうなづいて聞いてくれた。
どこか安心感があり、ユーモアもあり、
お互い夢中になって色んな話をした。

あっと言う間に時間は過ぎ…
帰る手段を失った私を
彼は時間をかけて家まで送ってくれた。

初めて会ったあの日、
隣で参考書を見る彼を見て思った。
なにかが起きるそんな予感がした。

そんなことを話す私に、
「実はさ、おれもその時そう思った…」と。

『こうなることは決まっていたんだ。』
なぜか?当時そんなことを思っていた。

彼の誕生日は7月10日
私の誕生日は7月11日

10日から11日にかけた夜に
いっしょに誕生日をお祝いしよう。
ワクワクしながらそんな話もしたけど、
それを叶えることは私達には出来なかった。


彼には同じ高校に彼女が…
私にも同じ高校に彼氏が…いた。


それでも塾ではなにかといっしょにいた。
ギャル男風な男に、ギャルっぽかった私。
お互いの雰囲気も側から見れば、
似合っていたのだろう。

もちろん噂にもなったりもした。
「おれ、彼女いるし。」
「私、彼氏いるじゃん。」
そんな言葉で私たちは私たちの関係を否定した。


電話をすると、
「彼女からだ。」「あ、切るね。」
そんな会話が寂しくどこか切なかった。

私も同じだった。
「彼氏が…」そう言うことも、
なんだか辛かった。


彼と会える時は、塾の帰りしかなかった。  
帰るタイミングが合えばいつも家まで送ってくれた。

そして…
友達たちの誘いを上手にお互い断りながら、
離れた場所で待ち合わせをし、
自転車で2乗りしながら遊びに行った。

お金がなかった私たちは、
どこかの公園や駐車場で
いつもマックを食べながら話した。

誰かに話すことは出来なくても、
彼と過ごす時間は、
楽しかったし、いつも2人で笑い転げていた。

「ねぇ?私を思い出す歌ってある?」
って、笑いながら聞いた私に彼は、
「オレンジレンジのラヴ・パレード」と、
即答してくれた。

塾の友達たちとカラオケに行けば、
「ラヴ・パレード」をいつも歌ってくれた。


友達のなかに居ても、私を見つけ、
目を合わせていつも笑いかけてくれた。

私はそれが照れくさくって、
目をわざと逸らしてかもしれない。
うまく笑って返すことができてたのかな。


彼女になりたい。
そう願っても叶わないのなら、
1週間でいいから、
彼の彼女のあの子になりたい。

そんなことを願ったりもした。

例え愚痴だったとしても…
みんなと話してるなかで、
彼に彼女と言わせる余裕がある、
写真でしか知らないあの子が
たまらなく羨ましかった。


車のラジオから流れてくる
「ラブ・パレード」を聴きながら思う。

もし…あの時、
「彼女と別れて。私と付き合ってよ。」って
言えたら…

もし…あの時、
「彼氏と別れて…」って
そんな選択をしていたら…


何かは違ってたのかな。
もしかして今も違ってたのかな。


彼を困らせたくなかった。
良い女だって思われたかった。
居心地が良いって思っていてほしかった。


でも、もしかしたら…
彼もそうだったのかもしれない。


私にも彼氏がいたから。


お互い踏み込めない領域があって、
気持ちのブレーキをかけながら過ごした時間は、
すこし現実離れをした夢のような感覚だったの
カモしれない。

だからこそ、
あの時に彼と過ごした時間は、
あんなにも楽しく輝いてみえていたの
カモしれない。


私のことを名前で呼んでくれる彼に、
私は彼を名前で呼ぶことはずっと出来なくて、
2人で居るときもあだ名で呼び続けた。

いつも平然を装っている私は彼から見たら、
ぜんぜん可愛い女じゃなかったのかもしれない。

でも、私は…ずっとずっとこの言葉を
心に溜め込んでいた。
その言葉を伝えることは1度も
出来なかった。

『大スキだよ』って。


パスタが上手く茹でることが出来ないと
話した私に大笑いしなが彼は言った。

「なんで?
 そんなんさぁパスタを2つに折って鍋を入れたら
 良くない??」

私はそう彼に教えてもらったあの日から
今でもパスタを2つに折り茹で続けている。




18歳になる誕生日、
彼といっしょにお互いの誕生日を祝いたい
そう強く願ってた当時の私…。

記憶の揺らぎのなかで…
今年の誕生日にそんな18歳の頃の自分を
ふっと思い出した。

『出会うのが遅すぎたね…』
歌の歌詞のような台詞吐き、
ドラマや少女漫画ような
切ないシュチュエーションに
心ときめかせていたあの頃。

もう会うことはできないけれど…
願わくば、私の記憶の笑顔のままで
彼に今を生きててほしい…



ちゅりさんにステキな歌声を
プレゼントしていただきました〜

ちゅりさんの透明感あふれる澄んだ声が
私を優しく包んでくれました。

『ゆらぎのなかに〜』
自分の奥の方にある『真実な想い』
そこに気付いた瞬間からstartする。

記憶のなかに眠っている想い。
物事のなかに隠されている想い。

きっとちゅりさんの歌声が、
優しく包んで浄化してくれるような
そんな気がする。

風の時代と共に
心軽やかに風の波に吹かれてみたい。

ちゅりさんの歌声が…
たくさんの人に届きますように。


揺らぎのベールを解放させて…                 tacco




















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