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発刊順:38 黄色いアイリス

発刊順:38(1939年) 黄色いアイリス/中村妙子訳

いますぐ<白鳥の園>の黄色いアイリスを飾ったテーブルまで来てほしい―深夜、電話で奇妙な依頼をうけたポアロが赴いた場所は、ある富豪が4年前に死んだ妻の追憶のために催した晩餐会の席だった。会は4年前とまったく同じ状況で進行した。明かりが消え、そしてまた明るくなったとき、テーブルには富豪の義妹の死体が…4年前の奇怪な事件の真相を解き明かしたポアロの機転とは?
表題作をはじめ、ポアロもの5篇、パーカー・パインもの2篇、マープルもの1篇、幻想小説1篇を収録。

ハヤカワ・ミステリ文庫の裏表紙より

これまでの短編集は、イギリスで刊行されたものを日本語訳にしたものだが、本書は1939年にアメリカで刊行された短編集から1編を除き、「二度目のゴング」を日本で加えたもの。
収録作品は1932年から1937年の期間に書かれているものをまとめたとあります。(アガサ・クリスティー完全攻略/霜月蒼著より)
 
ポアロ、マープル、ハーリー・クィン氏と、有名どころが登場する短編集。
 
表題作の「黄色いアイリス」は、ポアロが謎の電話を受け取るところから始まり、匿名の女性からナイトクラブに呼び出され、黄色いアイリスが飾ってあるテーブルに来るようにと言われる。
なぜ黄色いアイリスなのか・・・。同じテーブルについている女性に聞いても、アイリスが好きだという人はいない。
4年前にこのクラブのこの席である事件が起こっていた。その真相をポアロが鮮やかに解き明かす。
現在のこの舞台に過去が鮮やかに浮かび上がり、傷ついた人達が解放される・・・クリスティーが大切にしているテーマ。
 
「二度目のゴング」は、発刊順33の「死人の鏡」の原型で、この短編のアイディアから中編の「死人の鏡」に練り上げたんですね。
「死人の鏡」はとても面白かったです。
 
「あなたの庭はどんな庭?」も、出だしが「もの言えぬ証人」とそっくりなプロットから始まる。
こちらの短編は、ポアロの優秀な秘書であるミス・レモンが登場し、2人の掛け合いが楽しい。まるで機械のような正確さと能率でもって仕事を成し遂げるあまり、想像力を使うことは得意ではなく、時としてヘイスティングズを懐かしく感じてしまうポアロ。

「ヘイスティングズがつくづく恋しいですよ。ヘイスティングズの想像力は大したものだった。ロマンティックな気質ですからね。もっとも彼の想像はいつも間違っていましたが―しかしそれなりに参考になりましたよ」
ミス・レモンは黙っていた。ヘイスティングズ大尉のことは前々から聞いており、関心もなかった。それで、目の前のタイプ用紙を憧れの目で見やった。

ミス・レモン、好きだな~。


HM1-56 61年5月 第13刷版
2022年10月1日読了

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