note14 : シンガポール(2011.4.26)
【連載小説 14/100】
その昔、激しく荒れる海に阻まれ誰も上陸できない島を目指したスリウィジャヤという王国の王子がいた。
嵐に遭遇し航海は困難を極めたが、勇敢な王子がかぶっていた王冠を海に投げ入れたところ、海が静まり未知なる島へと上陸できた。
そこに現れたのが一頭の大きなライオン。
「この島を治めるがよい」との許しを与えて立ち去った。
島に新しい国を築くことになった王子は、そのシンボルとして海の神と陸のライオンを合体させた“マーライオン”をつくり、守り神として祀ることにした。
というのがシンガポールのシンボルとしてあまりにも有名な上半身がライオン、下半身が魚というマーライオンの誕生にまつわる物語。つまりこの国の「国生み神話」である。
世界には様々な神話が存在し、それぞれオリジナルな建国物語が残されている。
日本にはイザナギとイザナミが天の橋から海を矛でかき回し、引き上げた先から滴り落ちたものが積もって島になったという「おのころ島」伝説があるが、シンガポール誕生のストーリーもなかなかドラマチックなものである。
世には「世界三大がっかり観光名所」なるものがありコペンハーゲンの人魚姫像、ブリュッセルの小便小僧と並んでシンガポールのマーライオンが選ばれているようだが、シンガポールファンの僕としては極めて残念なことである。こういった背景の物語を知ってなお、マーライオンに「がっかり」するツーリストはいるまい。
むしろ、ヒトが治める国の起源が一頭の獅子による“許し”であったことはエコツーリズムの観点からも着目に値する。
新参者は先住者の許可を得て初めて、新たな土地で生きていくことができる。
そしてその恩に報いるために、“神”を創造し祀り続けることで自らを戒め律するのだ。
自然界へ傲慢に進出し、無秩序な開発で環境を破壊する人類の行為が許されないのは自明の理であり、僕たちはスリウィジャヤの王子に見習うべきなのだ。
そんなマーライオンの建つマーライオン公園に近いフラートン・シンガポールに滞在して1週間になるが、僕はシンガポールに来るたびにこのホテルに泊まることにしている。
シンガポールといえば、かの文豪サマセット・モームが好んで宿泊したラッフルズホテルが有名だが、僕は1928年に中央郵便局として建てられたレトロビルをホテルに改装したフラートンの方がお気に入りで、窓からシンガポールリバーを見下ろす部屋を書斎がわりに少したまった仕事をこなしている。
ここでは不思議と分筆作業がはかどるから、合間を見てシンガポールのリコメンドレポートをアップすることにしよう。
さて、一昨日が次なる目的地を決定する「DICE ROLL」デーだったので結果を報告しておく。
今後の「SUGO6」ルートは【クアラルンプール→ホーチミン→ハノイ→ルアンパバーン→プノンペン→シェムリアップ】となっていたが、出た目は「2」で以下のメッセージが届いた。
>>>>> Dice Roll ④/2011.4.24-20:00<<<<<
Singapore → Ho Chi Minh
【ホーチミン Ho Chi Minh 】次の訪問地はベトナム南部の都市ホーチミン。急成長する東南アジア新興国最大の都市に4/30から5/6まで滞在し、ASEANの可能性と未来を考える。
>>>>>SUGO6 Support Desk<<<<<
出た目の数に応じて次の目的地が決定するという「DICE ROLL」の日は、結構ドキドキするものである。
双六ゲームと逆で、大きな目が出ると飛ばしていく都市が多いから残念に思い、小さな目が出ると得をした気分になるから面白い。ASEANの旅はフィリピン、マレーシア、シンガポールを経てベトナムへと4カ国に繋がった。
ホーチミンは6年ぶりの訪問になるが、どのように変化したか楽しみである。
>> to be continued
※この作品はネット小説として2011年4月26日にアップされたものです。
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