旅で見た忘れられない景色
2023年3月。
エルサレムの城壁から眺めた景色が忘れられない。
このとき、私は3年ぶりの海外旅行として、また社会人になって初めての海外旅行として、イスラエルを1人で訪れていた。
久しぶりの海外、行き先はイスラエル、一人旅。
自ら決めたにも関わらず、成田空港から高揚感とともにいつも以上に不安でいっぱいだった。
テルアビブには夜到着し、翌日エルサレムへ向かう旅程であったが、テルアビブのホテルでは緊張と時差ボケで一睡もできず。珍しく心細さも感じた。そして、翌日はエルサレムへ向かうためにバス乗り場を目指したが、今度は重い荷物を持ってホテルから1時間半歩く羽目に。
バスに揺られながら、なんだか踏んだり蹴ったりな出だしで、仕事の合間をぬって休みをとり、往復の航空券だけで18万も使ったのに、何をやっているのかと、自問自答した。
さらに、エルサレムに到着後も、マラソン大会のせいでトラムは動いてないし、ホテルも路地の2階という立地のせいでなかなか見つけられずに彷徨う羽目になった。
そんな紆余曲折を経て、ようやくエルサレムの旧市街へと足を踏み入れた。
足を踏み入れた旧市街は本当に教科書で見たような景色で、狭い路地が入り組み、いろいろな民族の人がひしめき合っていた。現実なのに現実味がなくて、タイムスリップしたような気分に胸が高まった。
そして、ぶらぶらしている内に、ひっそりと佇んでいた城壁の案内をたまたま見つけて、どうせならと登ることにした。
城壁に向けて石造の階段を登っていくと、上には青空が広がり、眼下にはエルサレムの街並みが見渡せた。
本当にきれいだった。
正直なところ、写真を見返せば、城壁以外にも教会の塔や神殿の丘などエルサレム市街を一望できる場所は他にもたくさんある。何なら、そちらの方がきれいな景色な気もする。
しかし、なぜだか城壁からの景色が最も強烈に印象に残っているのだ。
この景色を見た瞬間、ここまでモヤモヤ考えていたことすべてが吹き飛び、これは損得なんて全く関係なく、とにかく見られてよかったと、ただそう思えた。
旅に出るというのは究極の無駄だと定期的に思う。旅に出ると、お金、時間、体力、精神力、あらゆるものが必要で、それに見合うのかと思ってしまうのだ。
しかし、私はそれでも結局また旅に出ている。
それは、やっぱりこういう旅で見た景色が忘れられないからだと思う。
これからももっとたくさん忘れられない景色を見たい。