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[桜とカリンバ]

カリンバを売りに出したんだ
君の置土産だった
壁の 飾り気のない棚が見えたんだ
少し寝ようかな

思い出の船を出したんだ
街中の欠片を集め
飾り気のない枝葉の足元に
そっと埋めてゆこう

カリンバは桜色だったかな
桜のカリンバだったかな
はぢけば遠く 君の足音が
花びら散る音が

カリンバが語り出したんだ
君の心変わり
それは 桜の色移ろいも待たなかったな
「僕の番だな」

それでもカリンバを指ではぢいたら
日記帳を楽譜に はぢいたら
空っぽの五線譜を書き足せば
花びらの音を書き足せば
君はその口を開いてしまうから

ギターだったなら君の声
泣き出しそうなのが聞こえたかな
ハーモニカなら君の声
笑い飛ばしてくれたかな

カリンバは桜色だったかな
桜のカリンバだったかな
はぢけば遠く 君の足音が
花びら散る音が

他のどの音色も出ないな
クラリネットもバイオリンでも
ただカリンバが はぢいた指が
君の足音が遠ざかるんだ
花びら散る音が

カリンバはじきに売れたんだ
僕の部屋が帰ってきたら
飾り気のない棚が呟いた
「僕は誰かな」

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