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観光にはその地域にしかない価値を見出した仕組みと世界観が大事だと思う。

先日、こんな記事を見た。

山形県尾花沢市の銀山温泉で老舗旅館「本館古勢起(こせき)屋」を営む銀山荘が、温泉街の系列飲食店での食事代を含め宿泊料金を一括で支払えるサービス「温泉街オールインクルーシブ」を始めた。宿泊客は財布を持ち歩かなくても散策を楽しめる。温泉街の魅力を高め、新型コロナウイルス禍で落ち込む観光需要の回復を目指す。

https://kahoku.news/articles/20220927khn000044.html
河北新報
 9/28

有名な温泉地の一つである銀山温泉。その中でも老舗旅館「本館古勢起屋」を営む銀山荘が世界観と仕組みが素晴らしいサービスを発表した。

QRコードの入った木札をかざすだけで、系列の飲食店などで決済ができてしまうというもの。

温泉宿の支払い一括で 木札にQRコード 山形・尾花沢「銀山荘」が新サービス

仕組みとしては、2名1室の個人客向けとした旅館ではドリンクや朝食だけを提供し、宿泊客は、銀山荘グループの飲食店2店で自由に夕食を取ってもらうというもの。

ちなみに、料金は宿泊料金(1人3万400円から)に最初から食事代が含まれており、飲食メニューの約8割は追加料金が発生しないよう価格が設定されているそうだ。

しかし、仕組みだけでなくしっかりと思い出(世界観)も盛り込まれている。

宿泊者の名前も入る木札は部屋の鍵としても使う。チェックアウト後は無効となり、記念に持ち帰ることもできる。

https://kahoku.news/articles/20220927khn000044.html

現地で部屋の鍵、決済の役目を終えた木札は、記念に持ち帰ることができるとのこと。

ただ単に、木札で決済ができるだけでなく、部屋の鍵として重要な役割があり、それを終えると思い出や記念として家に持ち帰ることができるのは素晴らしい仕組みと世界観だと思った。

何よりも、スマートフォンなどを使用したアプリで仕組みと世界観を作るわけでなく、”木札”という一見古臭いように思えるものやるからこそ、価値があると感じた。

木札というと温泉街や旅館、昭和のようなイメージがあるがこの大正ロマン溢れる雰囲気だと、味が出る。

大正ロマン様式に新装開館した銀山温泉の本館古勢起屋=尾花沢市

老舗旅館「本館古勢起(こせき)屋」銀山荘の小関健太郎社長(38)はこのように発言している。

「お客がストレスを感じずリラックスしてもらうのが観光地の役割。夕食の時間や支払いなどを気にせず、温泉街全体を楽しんでもらいたかった」

https://kahoku.news/articles/20220927khn000044.html

まだまだ、利用できる店舗は2店舗と少ないが、この木札が銀山温泉内で広がれば「旅中」の体験価値は今まで以上に向上しそうだ。

だが、これを他の地域でそのまま転用しようとすると、失敗すると思う。
なぜなら、この銀山温泉という大正ロマン漂う雰囲気で木札が合うからこそ成立する仕組みと世界観だからだ。

この木札を熱海温泉に導入したところで、銀山温泉のような雰囲気ではないため、しっくりこないだろう。そして、木札が持ち帰れてもそんな価値を感じないのではないか。

熱海温泉には熱海温泉に合った仕組みと世界観を考える必要がある。
地域によって特性はだいぶ違うのだ。熱海温泉には効率化を優先したアプリケーションのサービスがいいかもしれない。

観光地にはそれぞれ違った個性がある。
しかし、その個性がなんなのかを気づいていないことが多くて、効率化を目指したり、アプリを作ったりと、、そこにしかない雰囲気や価値を壊してしまっている場合もある。

銀山温泉の木札のように、観光地の雰囲気や価値の特性に気づき、さらには観光客のニーズに応えた銀山温泉ならではの仕組みと世界観を考えて、それを実践することが今一番、観光で求められているはず。

日本国内の観光地にはそれぞれに歴史や文化、自然や人などの個性があるからこそ、まずはその個性を引き出してあげることが大事だ。さらには、個性を生かして仕組みや世界観を構築し、それを実際に旅行者が体験することで、それぞれの観光地のファンが少しずつ増えていくと思う。

筆者が撮影した銀山温泉の様子(下手ですみません…)

もっと日本の観光地それぞれが輝く未来になればと思う。
私たちも少しでも力になれたら嬉しい。

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