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旅立つ日に手渡された、お弁当

「気をつけて。また来るときは連絡してね」と言いながら、張さんは重い包みをわたしに手渡した。お弁当だった。「電車の中で食べて」。

短い台北滞在を切り上げて台中に向かう日、張さんはホテルに迎えに来て駅まで送り届けてくれた。日本と違って危ないから、身のまわりには気をつけてと何度も言われたあとに渡されたのが、そのお弁当だ。

たっぷりのごはんに豚肉の煮込み、野菜の炒めものが添えてある、手製のお弁当。それとは別に、切ったスターフルーツが添えられていた。南国の果物を知らない、わたしのための心遣いだろう。

仕事の関係でやりとりしただけの初対面の人に、こんなに親切にされて、ありがたかったし恐縮もした。わたしはこれまで、訪ねてきた人をこんな風に手厚く迎えてきただろうか?

居場所を移すことで、わたしたちは知らなかったことを知り、新しい視点でものを考える。旅立ちはいつも、新しい世界に出会う玄関口にいると思う。

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