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伊坂幸太郎さんと仙台

30歳を目前にして、わたしはフリーペーパーを作成することにした。それは、「たびとほん」というタイトルで、第1号は仙台編。わたしの憧れで大好きな仙台について、溢れる想いを綴ることができて幸せだった。
遡ること10年と少し。高校生の自分の出会った1冊で、フリーペーパーを作成するまでに仙台を、仙台にはとどまらず東北をこれほどまでに大好きになるなど想像もしていなかった。
高校生の時に、伊坂幸太郎さんの『重力ピエロ』に出会った。この1冊から、伊坂幸太郎さんの作品に魅了され、私は高校の図書室にある彼の本を次々と読み進めた。作品の舞台はほとんどが仙台で、私はいつしか自分の足で、大好きな小説に出てくる場所を歩きたいと強く願うようになり、つまり仙台が憧れの地となった。大学生となった私は仙台を訪れる。青森と岩手にも足を運んだ。東北が大好きになった。
現在、関西でももっと東北が身近に感じられるようにとフリーペーパーを作成したり、イベントを企画していて、この1冊に出会えたことで今のわたしは心の底からわくわく楽しんでいる。
先日、10年と少しぶりに、『重力ピエロ』を読み返した。わたしは本を読むのが大好きだけど、決して本を読む速度は速くない。むしろびっくりするくらいゆっくりなんだと思う。いろんな本が読みたいので、同じ本を読み返すことがあまりない。さらに、記憶力もあまりないのか、読んだ本の詳細はすぐに薄れてしまう。覚えているのは、その本を読んだ時にどういう気持ちになったかというようなふわっとしたもの。だから、『重力ピエロ』を読み返してびっくりした。宝物のような言葉に溢れていたから。
哀しくて、悔しい気持ちでいっぱいになってしまう。それなのに、この物語に出てくる家族は最強だから。電車の中なのに我慢できずに思わずくすっと笑ってしまったり、最高だと声を上げてしまいたくなる。
伊坂さんの作品は、忘れたくない、心に刻んでおきたい言葉で溢れている。『重力ピエロ』ももちろん例外ではなく、気が付けばほとんどのページに付箋を貼っているのではないかと思うほどで、本が分厚くなってしまっていた。
「本当に深刻なことは、陽気に伝えるべきなんだよ」という言葉が出てくる。伊坂幸太郎さんの作品こそが、まさにこの言葉のとおりなのだ。そして、これがわたしが伊坂幸太郎さんの作品にたまらなく惹かれる理由なのだと改めて気が付いた。
ちなみに、『重力ピエロ』の中で、仙台が溢れてしまっていて最高だなと思ったのは、「仙台の名物であるカスタード入りの菓子」という表現。あぁ、あのお菓子ですよね。久しぶりにわたしも食べたくなってしまった。

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