「値引き=ブランド毀損」ではない。老舗のブランドを下げることなく菓子パンの返品率を15%→10%まで改善。【株式会社木村屋總本店様】
明治から続く老舗パンメーカー「木村屋總本店」では、首都圏の店舗で「TABETE」をスタートしました。出品商品「パンの詰め合わせ」順調に「レスキュー」されており、社内では導入店舗の拡充も検討中だといいます。
コロナ禍において店舗運営を試行錯誤するなかで食品ロス削減を強化した背景や、百貨店等にもお店を構える老舗ブランドでTABETEが役立っているポイントなど、詳しく伺いました。
発注数を調整してコロナ禍の需要変化に対応中
ーー「木村屋總本店」では、2ヶ月ほど前からTABETEを使っていただいています。ここ1~2年は「コロナ」の影響で変化が大きいかとは思うのですが、以前から実践しているロス対策があれば、ぜひ聞かせてください。
太田さん:「無駄が出ないよう、各店舗で気をつけよう!」という意気込みでやってきましたが… じつは、導入以前を振り返ると、具体的な対策はほぼ無かったと思います。TABETEの導入を検討するようになり、そこから食品ロス対策に詳しくなってきたという感じです。
ーーどの店舗でも、ご担当者が日々の売れ行き、ロス状況など気を配っていらっしゃるんですね。
太田さん:併せて、一年ほど前からは発注数の調整をかなり強化しています。コロナ禍でお客様の動向が読めないので、売り上げ確保のためにも調整が必要で。食品ロス、チャンスロスの両方に気をつけながら、人気の商品を中心にして品揃えを確保するようにしております。
ーーなるほど、コロナ以降に発注数を更に調整強化されたのですね。それでも、お客様の方から品揃えに関するご意見が届くことはありますか?「今日はあのパンはないのかしら」といった質問だったり…
木村さん:ありますね。各店舗で、そういった声が聞かれるようです。そういったご意見も参考にして発注数を調整するのですが、“コロナ”以前とは客足が異なるのもあり、丁度よく発注するのは大変です。
売り切りの難しかった菓子パンは、TABETEを使い始めて返品率が大幅に改善
ーー各店舗が発注数を決めるとのことですが、店舗・会社間の注文サイクルについても教えていただけますか?
木村さん:納品日の4日前に発注をかけています。納品されたら棚に並べて、当日のみ販売するのが基本です。
最近は、発注数を見極めるのもなかなか難しくて。ニュース、天気予報、客足変化の記録など、色々チェックして、それでも仮説がのとおりには行かないので、もう、修正ばっかりです。
ーー食品ロス削減、売上確保、お客様の満足度。全てをキープするのは、かなり難しい状況ですよね…
木村さん:たとえば、夕方に「食パンがほしい」と来店される方が相次いだときには、次の発注で食パンの数を増やしてみたりするんです。でも、そ れが納品された日に限って、夕方は客足が伸びなかったり。そういう「結果的にロスになるケース」を想定すると、安易に多く発注するのは考えものだなと。
太田さん:本社から見ても、本当に“読めない”ですね。なおかつ、変化の予想がついても、発注数の調整が間に合わない場合もあります。
ーーTABETEを使い始めてから、どうでしょうか。発注や管理をしていて、変化を感じることはありますか?
木村さん:原則、店舗で売れ残った分は工場に返品するのですが、TABETE導入前は15%くらいの返品率でした。今月は、11%くらいになっていますね。TABETEに出品することの多い菓子パンに限って見れば、今月の返品率は10%を切っています。お店の営業時間帯が違うので厳密には比較できないですが、導入前は、ここまで返品量を抑えるのは難しかったです。
ーー菓子パンのうち、いくつかを詰め合わせてTABETEに出品していらっしゃいます。都度、詰め合わせる中身を決めているのですか? その日に売れ残りそうなものがあったらそれを優先的にピックアップする要領でしょうか。
木村さん:そうです。どうしても、陳列していても売れにくい品というのがあって、それを中心に詰め合わせています。具体的にどの商品が該当するかは、売り場(店舗)の担当者である店長と部下が判断します。
ーー商品の特徴や当日の売れ行きを考慮して、選定・出品するのですね。
木村さん:はい。最近は、余りそうなものにあたりをつけて昼間のうちに出品することが多いです。お店の営業時間が短くなったので、出品のタイミングが遅くなりすぎないように…
今のところ、早いうちにレスキューを確定させて夕方に引き取る方も多いです。営業時間が変更になれば売れ行きも変わってくるでしょうから、本社とも相談して出品の時間帯を検討しようと思います。
いつもより若い年代がTABETEで来店。今までリーチできていなかった客層が自ら来店してくれる
ーーTABETEで引き取りにくるのは、どんな層の方々ですか?
木村さん:若年の方、だいたい25歳~40歳くらいの方が多いですね。木村屋の普段の客層は50代以上の方が8割~9割を占めていますので、全体的に若い方がいらしているな、という感触です。
太田さん:地域によって若干の違いがありますが、普段の客層は木村さんの言葉の通りでして。年配の方、近隣の方が多いんです。これって、吉祥寺エリアでの一般的な客層とは違っていますよね。
太田さん:吉祥寺エリアや昨今の状況にマッチした客層だけれども、今まで来店いただけていなかった方々。そういった層が、TABETEを通じて吉祥寺店に来店されているのかなと思います。
ーーTABETEユーザーは30代~40代の女性がボリュームゾーンですので、この吉祥寺店にとっては「新しい客層」になり得ますね。
木村さん:「木村屋さんのパンを食べてみたかったのでTABETEを利用した」と嬉しそうに話してくださる方もいて。初めてTABETEを使うユーザーさんも多かったようです。
ーーその後、2回目以降の「レスキュー」をしてくれる方もいるのでしょうか?
木村さん:はい。TABETEの購入通知メールを見て「何回目のレスキューかな?」と確認しているんですが、10名以上の方がリピートしてくれていますね。毎週のように来てくださる方もいらっしゃいます。お顔を覚えているお客様には「いつもありがとうございます」と声をかけています。
なかには3つまとめてレスキューしてくださる方もいて、「家族みんなで召し上がるのかな」「職場の方にプレゼントしているのかな」と予想しているのですが。
太田さん:詰め合わせを3つとなると、まとまった個数になりますものね。
店頭値引きをしない方針と、フードロス削減施策は両立できる。老舗ブランドの社内でもTABETE活用に前向き
ーーこれまで、店頭値引きはされていなかったと聞きました。TABETEへの出品は、店頭の値引きとは別の取り組みであると捉えていらっしゃるのでしょうか。
太田さん:そうですね。夕方からのセールなどはやっていません。TABETEはフードロス対策として取り組んでいるものなので、単なる値引きとは別のこととして考えています。
ーーTABETEの理念に共感いただけているとのこと、嬉しい限りです。社内には、太田さんが中心となって働きかけてくださったんですよね。
太田さん:以前にメディアでTABETEを見たことがありましたし、すでに導入ている百貨店の知り合いから話を聞いたりして、サービスがどんなものかは分かっていました。社内を頑張って説得するというよりかは、全体的にスムーズに話が進んで…
ーー導入を決めるにあたって、御社ではどんなポイントを検討されましたか?
太田さん:もちろん「ロス削減」という大きな目的がありました。それに最近は、納品を減らしていることで欠品が発生し、夕方に来店するお客様の期待にお応えできていない部分があったので、それを是正したいという思いがありました。そして新しいお客様(新規顧客)を取り込めるのでは、と期待する部分も大きかったです。
ーーそうなんですね。歴史のあるブランド・企業である御社でTABETEのような新しいサービスが受け入れてもらえるのか、不安に思っていたのですが…
太田さん:TABETEに反対する人はいませんでした。アナログなところもある会社で、これまで、新しい取り組みはあまりできていなかったと思います。それでもコロナで状況が変わってからは動きが出てきました。改めて今のやり方を見直す雰囲気があり、新たな取り組みに目が向いていると感じます。特に「食品ロス削減」は社会貢献につながることもあってか社長も熱心でして、導入に前向きでした。
ーー社内でTABETEに関する反応はどんな感じでしょう。
太田さん:見守られている、という感じです。導入後の進捗や日々の状況について、周りからよく聞かれます。
「別の店舗でもTABETEを使えるよう、準備を進めてくださいね」という指示もあり、私としても導入済み店舗の様子を注意深く見ているところです。
ーー特によく見ているポイントはありますか?
太田さん:まずはフードロス削減の効果が一番大事だと思うんですけれど、どれくらいユーザーさんがご来店されるか? 新たなファン獲得につながっているか? という点も重視しています。お店として、会社として、今の厳しい状況を乗り越えるというのが本当に重要なので…
世の中が落ち着いてお客様が戻ってきてくだされば嬉しい限りですし、今の時期に新規のお客様をお迎えして、未来の常連様を獲得するのも大切です。
今のところ、TABETEを使っている店舗ではよい結果が出ている状況なので、徐々に拡大して、全店で活用していきたいと考えています。
未来の常連様を迎え入れるためにも、この苦境を乗り切るためにも、新たな取り組みをスタートするべき
ーー最後に、この記事を読んでいる皆さんに、メッセージをお願いします。チャンスロス・食品ロスの両方を小さくしたいと頑張っているパン屋さんや、TABETEの導入を検討している企業の方々に伝えたいことはありますか?
太田さん:TABETEは、社会貢献に関心のあるユーザーが多いというのが特長ですよね。「安くなっているからレスキューする」という方も多少はいらっしゃると思うんですけど、それ以上に、ロス削減に参加したいからTABETEを使います!という方が多いようで、食品ロス削減を重要視する今の時代に合っている取り組みだと思います。
太田さん:そしてなにより、新しいお客様を取り込むチャンスになるのが、弊社にとってはありがたい。フードロス削減効果をもっと詳しく分析していく必要があると思っていますが、まずはこの厳しい状況を乗り切るためにも、いろんなお店で取り入れるべきツールなのかなと思います。
ーー消費者・生活者の声として「食品ロスに取り組んでいるお店を選びたい」「環境に配慮したものづくりをしているお店で買物をしたい」という意見は多くなっていますから、新規顧客の増加の点で見てもTABETEはプラスの影響があると、私たちも考えています。
ーー店頭からの目線でも伺えますでしょうか。接客するなかで気がついたことなどはありましたか?
木村さん:店員としては、とにかく“新鮮”ですね。この2年間、アトレ吉祥寺店で勤務していますが、若年層の方がこんなに来店されるのは初めてなんです。「木村屋のパンを食べてみたいと思っていた」と聞いたこともあり、心に残っています。
木村さん:初めてのお店に行って、味を知らない商品を買う、というのはすごい冒険になりますけれど、いまは試食もできませんので… TABETEが木村屋の味を知っていただく機会にもなっていると思います。この状況だからこそ、ロス削減にもつながり、初めて食べる商品との出会いにもなる。いいことづくめです。
ーーTABETEで初めて木村屋のパンを食べた方が、美味しかったから今度は家族に買っていく、みたいなケースもありそうですよね。ファンづくりにもつながっているのであれば、私たちも嬉しい限りです!
最後に
今回は、歴史あるブランドを運営されている株式会社木村屋總本店様に「店頭値引きとTABETEの違いについて」どう感じたのか、TABETE導入後にどのような効果が得られたのか、じっくりお話を伺いました。
店頭販売を前提として小売店では、コロナ禍で売れ行きや客足が読みづらく、発注調整は今まで以上に困難になってきています。こうした状況にあるお店を少しでもサポートし、食品ロス削減とチャンスロス抑制のお手伝いができるよう、引き続きTABETEを成長させて参ります。
〈企画・調整=金高淳也(@JJ49546430)/取材=篠田沙織(@0815Sama)/編集=山田晴香/撮影=伊作太一(@fuzz139)〉
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今後もTABETEを導入している店舗様へのインタビューや、フードロス削減の工夫についてnoteで発信していく予定です。フードロス削減にお困りの飲食店の方は、ぜひ以下URLからご連絡ください。
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