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ルイ・ヴィトンx草間彌生氏のPR戦略

こんにちは! 今回は久々のマーケティング記事です。
年明け早々Louis Vuiton(ルイ・ヴィトン、以降LVに省略)が凄いので、今回の記事に取り入れることにしました。

LVの概要

手始めにそもそもLVの成り立ちから。
(かなり要約しているのでご容赦ください)
1854年(ペリーが来航した時期頃!)、創始者ルイ・ヴィトンがパリに世界初の「旅行用トランクの専門店」をオープンしたことが始まりです。当時のトランクは丸蓋のものが主流でしたが、トランクが重ねられるようにと平蓋のトランクを開発しました。さらに新素材を使用し今までにはなかった、堅牢でありながらも軽いトランクの数々が魅了ポイントでした。
その後1888年に「ダミエ」、1896年に「モノグラム」とデザインを広げていき、この時代に現在でも人気のラインが開発されます。

(左:モノグラム、右:ダミエ)

LVのブランド展開

ちなみにLVの親元はLVMHグループです。代表的なLVMHグループ傘下のブランドを並べてみましたが、実は74のブランドを所有しています。ブランドや事業は「ワイン & スピリッツ」 「ファッション & レザーグッズ」「パフューム & コスメティクス」「ウォッチ & ジュエリー」「セレクティブ・リテーリング(百貨店等)」「その他の活動(旅行業、出版業等)」の6つに分類されるようです。見ての通り、LVMHはファッション業界のM&Aを繰り返して、大きく成長させているのがポイントです。

LVMHグループのブランド(一部)

ブランド拡張はお金とリスクが付き物で、顧客や見込み客がブランドとどのような関係性を持っているかに基づいて、どの程度までエクステンションできるか指針を示した上で検討していく必要があります(ブランド拡張の検討についてはもう少し語りたいですが、話が逸れるのでまた今度・・・)。

LVのブランドコミュニケーション

2023年1月、LVは日本を代表する世界的アーティスト草間彌生氏とのグロー
バルなコラボレーションの第1弾を日本・中国発売しました。このコラボレーションイベント、ワクワクするポイントを大きく3点後紹介します。

1.LV × 草間彌生の期間限定ストア

©LOUIS VUITTON
©LOUIS VUITTON

2.ジャック広告・エリアジャック

街なかのデジタルサイネージやフラッグ・のぼりなどにまとめて広告を出稿することで街中をジャックすること

東京/TOKYO

今回のコラボレーションイベントは、ウィンドウ・ディスプレイからポップアップストア、3D動画の屋外広告に加え、AR体験、ゲームアプリ、コラボレーションをフィーチャーした広告キャンペーンなど、東京のまちのランドスケープの中で展開されます。

東京駅前 行幸通り
ⒸLOUIS VUITTON, DAICI ANO
増上寺ⒸLOUIS VUITTON, DAICI ANO
渋谷スクランブル交差点(ビジュアルマルチビジョンでの展示)
ⒸLOUIS VUITTON, DAICI ANO
プリンス芝公園 パンプキン・バルーン ⒸLOUIS VUITTON / DAICI ANO
新宿駅東口 クロス新宿ビジョンでの3D動画広告 Photo by TEAM TECTURE MAG(動画:TECTURE 公式Twitterに12月1日投稿)

街だけでは無いですね、年明け早々1月1日の日経全面もジャックしました!

NIKKEI, 2023.1.1

中国/CHINA

日本と中国が同時に先行発売されているのでターゲット層は中国も含まれていますが、特に画像検索しても流石に中国の一部都市をジャックした広告訴求はできませんでした(やはり外国企業参入が難しい国です)。

パリ/Paris

パリに本店があるLVですが、大胆に草間彌生のコラボレーションイベントをビジュアライズしています(素敵すぎる!)。

ロンドン/London

あの老舗のHarrodsまでジャックするなんて、もうさすがLVMHグループ様、、、彼らにしかできない企画で涙です。

(LV公式サイト)

そして勿論、公式ウェブサイトも特設ページを用意し、一面コラボレーションを謳っています。

LV公式ウェブサイト

街も新聞も、そうですが、ルイ・ヴィトンのロゴと草間さんの手書きサインが掲載されているだけで、商品の紹介などは一切ないところ。世界で展開するにあたり、誰もが説明なしでこれからLVが何を訴求したいのかを理解できるコミュニケーション手法になっているのが面白いです!

AR Experiance/AR体験

Instagramのフィルター設定で、撮る風景にデザインをつける加工を展開。

(Instagram filter)

Gamification/ゲーミフィケーション

ブランド商品展開に伴い、ゲームも開発してます。

(The game)

3.広告訴求と販売タイミング

このコラボ商品は2023年1月1日(日・祝)に日本と中国で発売されたあと、1月6日(金)より順次、世界展開されました。そして第2弾は、2023年3月31日(金)より、ルイ・ヴィトンの各店舗で販売開始を予定しているみたいです。面白いのは、販売タイミングは1月なのに、広告訴求は11月に渡ってこれから何が起こるかという前すじをチラつかせながら、長期間でアプローチしており、消費者の脳内にリマインドをかけているということです!

ブランドの宿命とは常に消費者の記憶に残すこと

Havas社のブランドレポート(2021)による、世界の消費者395,000人を対象にした調査では、信頼できると思われているブランドは半数以下(47%)、75%は消える可能性があり、簡単に代替されると考えている。71%は、ブランドが約束を守ってくれると信じていないとのこと。

コロナ禍で店舗の閉店が顕著だったと思いますが、どんなに成功していてもブランドが失敗して店舗が消滅すると、以前ここに何のお店があったかなんて消費者は覚えていないですよね。

(韓国・明洞の閉店の様子、2020年)

筆者の意見

LVブランドのイメージを崩さず、加えて無駄な説明をやめ、あくまでもアートの世界で消費者に訴えかける今回のコミュニケーション方法。消費者って、一人一人認識や考え方が異なるのにも関わらず、何を訴えたいのかが一目でわかるといった企画の一貫性がありますよね。

ブランドの宿命とは常に消費者の記憶に残す必要があります。ここで言いたいのは資産があればあるほど広告費用に費やせることが強さではありません。LVの真の強さとは、まさに①消費者の記憶に残すための大胆なマーケティングコミュニケーションを打ち出すことができること②世界を相手とする消費者に統一した記憶や認識の植え付けができることかな、と考えます。

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